昨秋、新宿で、このゴジラの頭を乗せた宣伝カーに遭遇したのを思い出した。
IMAXなどで観たらすごい迫力なんだろうけれど、怖いのは苦手なので私には機内画面で十分だったと思う。やはり昨秋の機内で観た『大名倒産』でいい味を出していた神木隆之介が、特高の生き残り(というか敵前逃亡)というトラウマを抱えて焼け野原の東京に戻る若者を好演している。日本の男優は兵隊役を演じたら逸品だという話を昔聞いたけれど、この映画ではみな兵隊上がりということで、なるほどいい感じだ。ゴジラがアメリカの核実験で放射能を浴びてパワーアップするという設定も、味がある。
ゴジラが倒されて沈んでいく時にみなが敬礼するのは、核実験の犠牲者でもあるゴジラへの鎮魂の意味もあるかのようだ。
戦争も、怪獣も、それを迎え撃つのも、「破壊」であり、銀座でのゴジラの攻撃の後で奇跡的に生き延びたかの設定になっているヒロインも、銀座での全ての生存者も、放射能汚染を受けているのは確実なわけで、広島、長崎の生存者と同じ長い戦いを強いられる可能性がある。
つまり、日本は、アメリカの核により、3度目の被害を受けたという設定でもあり、1954年の最初のゴジラとも呼応するかのようだ。いろいろなメタファーを感じ取ってしまう。いわゆる「怪獣映画」は好みではないけれど、色々と考えさせられる映画だった。