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L'art de croire             竹下節子ブログ

ボリス・ジョンソンのインタビュー記事を読んであらためて思った英米とヨーロッパの関係

11月半ば、フランスに戻ってから初めて買った紙の雑誌。
ボリス・ジョンソンのインタビュー記事を読んであらためて思った英米とヨーロッパの関係_c0175451_21070535.jpg
雑誌はどちらかというとリベラル側のエクスプレス誌。
「トランプはあなた方が思っているよりうまくやるだろう」というのがテーマだけれど、差のことよりも、Brexitやコロナ禍を振り返った話が印象的だった。

フランス人に話すと「本当かどうか分からない」などと言われるのだが、イギリスが参加していた頃、独仏の二国から実は「差別的」扱いを受けていた、というのはなんだかよく分かる。
当時、ウクライナにまつわる外交交渉で独仏の代表と同行していた時、まるでジョンソンが存在しないかのようにあからさまに無視されていたというのだ。ウクライナは独仏の「庭」であるかのような態度だったという。

細かいことはスルーするけれど、第二次世界大戦の経緯と終わり方、その後を見ていると、その辺の感情が分かる。

今のイメージでは、「英米仏」などは連合国として「独伊日」の同盟国に勝利した側、にもかかわらず独仏は早くからヨーロッパを二度と戦場にしないように石炭鉄鋼同盟などで連携した。

当時の「英米」的には、ドイツに占領されていたフランスは「敗戦国」側で、実際、ドイツ軍よりも英米軍、特に米軍がドイツだけでなくフランスも徹底的に爆撃した。フランスの一般市民の犠牲者の多くは米軍による空襲の犠牲だった。

米軍はフランスを占領しよう、保護領にしようとしていた。通貨も用意していた。
フランスが「連合国」の戦勝国に席を連ねたのはドゴール将軍の「自由フランス」の離れ業だったと言っていい。

実際、ある意味で、対戦が終った時点で、ドイツもフランスも、連合国軍による被害でぼろぼろだったのだ。

歴史的には、フランスとドイツは対等な形で敵対していない。ドイツは領邦国家だったし、ルーツは同じフランク王国だ。宗教戦争の時代も、ハプスブルグ家と戦うためにはカトリック国のフランスはドイツのプロテスタント国と同盟を結んだ。国境を接しているので、アルザスなどの争いはいつもあったけれど、普仏戦争いぜんはドイツ対フランスという敵対構造はなかった。

一方で、イギリス王室はフランスの絶対王権をモデルにしようとしたし、フランスに勢力を伸ばしてフランス王になろうとした。でも英仏海峡があるし、ジャンヌ・ダルクがはじめて「イギリス軍をフランスから追いやる」という形のナショナリズムをスタートさせた。

第二次世界大戦をもろに生きた世代のフランス人から以前、「本当の敵はイギリス、ドイツとはそもそも敵ではなかった」と言われたこともある。

戦後フランスが早くにドイツと手を結んだのは、英米主導になるよりも、ヨーロッパ大陸内で復興体制を固めようという思惑で、もともと勤勉で復興や成長も早いと思われるドイツと手を組んだ方が有利だったからだろう。「敗戦国」だから政治的には御しやすいから都合がいい。核兵器などもフランスには規制がないから開発できて、ドイツをけん制できる。

第二次世界大戦におけるフランスとドイツの微妙な関係が戦後のEUをけん引した。
そこにイギリスが入ってきたのは「政治」とはまた別の「経済」の思惑があった。
ドゴールはNATO軍からも撤退していたから分かりやすい。
アメリカのイギリスからの「独立戦争」を助けたのはフランスだというレトリックもいつも使われる。

私が若い頃には日本人がドイツに行くと「次は勝とうな」と声をかけられるというエピソードだかジョークだかがあった。日本のゼロ戦が米軍の戦艦に突っ込んで爆発する記録映画を観て喝采するフランス人もいた。

今はなんとなく、「西洋」とはアメリカと英語の世界というイメージが定着している。

でも、ボリス・ジョンソンの語るEUの記事を読んでいると、ランスに戻ってから初めて買った紙の雑誌。

雑誌はどちらかというとリベラル側のエクスプレス誌。
「トランプはあなた方が思っているよりうまくやるだろう」というのがテーマだけれど、差のことよりも、Brexitやコロナ禍を振り返った話が印象的だった。

フランス人に話すと「本当かどうか分からない」などと言われるのだが、そして確かにジョンソンはもともとEU懐疑派なのだけれど、イギリスが参加していた頃、独仏の二国から実は「差別的」扱いを受けていた、というのはなんだか実感があってよく分かる。
当時、ウクライナにまつわる外交交渉で独仏の代表と同行していた時、まるでジョンソンが存在しないかのようにあからさまに無視されていたというのだ。ウクライナは独仏の「庭」であるかのような態度だったという。

細かいことはスルーするけれど、第二次世界大戦の経緯と終わり方、その後を見ていると、その辺の感情が分かる。

今のイメージでは、「英米仏」などは連合国として「独伊日」の同盟国に勝利した側、にもかかわらず独仏は早くからヨーロッパを二度と戦場にしないように石炭鉄鋼同盟などで連携した。

当時の「英米」的には、ドイツに占領されていたフランスは「敗戦国」側で、実際、ドイツ軍よりも英米軍、特に米軍がドイツだけでなくフランスも徹底的に爆撃した。フランスの一般市民の犠牲者の多くは米軍による空襲の犠牲だった。

米軍はフランスを占領しよう、保護領にしようとしていた。通貨も用意していた。
フランスが「連合国」の戦勝国に席を連ねたのはドゴール将軍の「自由フランス」の離れ業だったと言っていい。

実際、ある意味で、対戦が終った時点で、ドイツもフランスも、連合国軍による被害でぼろぼろだったのだ。

歴史的には、フランスとドイツは対等な形で敵対していない。ドイツは領邦国家だったし、ルーツは同じフランク王国だ。宗教戦争の時代も、ハプスブルグ家と戦うためにはカトリック国のフランスはドイツのプロテスタント国と同盟を結んだ。国境を接しているので、アルザスなどの争いはいつもあったけれど、普仏戦争いぜんはドイツ対フランスという敵対構造はなかった。

一方で、イギリス王室はフランスの絶対王権をモデルにしようとしたし、フランスに勢力を伸ばしてフランス王になろうとした。でも英仏海峡があるし、ジャンヌ・ダルクがはじめて「イギリス軍をフランスから追いやる」という形のナショナリズムをスタートさせた。

第二次世界大戦をもろに生きた世代のフランス人から以前、「本当の敵はイギリス、ドイツとはそもそも敵ではなかった」と言われたこともある。

戦後フランスが早くにドイツと手を結んだのは、英米主導になるよりも、ヨーロッパ大陸内で復興体制を固めようという思惑で、もともと勤勉で復興や成長も早いと思われるドイツと手を組んだ方が有利だったからだろう。「敗戦国」だから政治的には御しやすいから都合がいい。核兵器などもフランスには規制がないから開発できて、ドイツをけん制できる。

第二次世界大戦におけるフランスとドイツの微妙な関係が戦後のEUをけん引した。
そこにイギリスが入ってきたのは「政治」とはまた別の「経済」の思惑があった。
ドゴールはNATO軍からも撤退していたから分かりやすい。
アメリカのイギリスからの「独立戦争」を助けたのはフランスだというレトリックもいつも使われる。

私が若い頃には日本人がドイツに行くと「次は勝とうな」と声をかけられるというエピソードだかジョークだかがあった。日本のゼロ戦が米軍の戦艦に突っ込んで爆発する記録映画を観て喝采するフランス人もいた。

今ではなんとなく、「西洋」とは「アメリカと英語の世界」というイメージが定着している。
ヨーロッパも王室や貴族の部分では姻戚関係が混み入っている。
ボリス・ジョンソンの語るEUやアメリカのこれからについての記事を読んでいると、すべてが絡み合っているようで通底しているなにかがあるようにも見える。

フランスでは僅か29歳のバルデラが「回顧録」を出すと同時にマリーヌ・ル・ペンがEU議会での予算不正疑惑で被選挙権を5年間停止されるかもしれないというニュースが重なって、騒ぎになっている。

ウクライナ、ガザ、「機を見る」ことにたけている国々がどう出るかの情勢を追っていきたい。



by mariastella | 2024-12-04 00:05 | 歴史
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