寒い日、というより冷たい日が続いている。
11半ば、珍しく一日だけ雪が降った。
何十年も住んでいるけれどパリ地方でこんな雪を始めて見た。
台風のように名前も付けられた「暴風」が通過したのと同時で、パリは午前中から夕方までずっと風と雪だった。その雪は真冬の雪のような小さな結晶ではなくて、半分みぞれのような湿ってしかも花びらのようなものと細かい粒が混ざっている。
風にあおられたその二種類はばらばらの方向に飛ばされてまるで舞っているようだった。傘などさしていても意味がないくらいあらゆる方向から吹きつけてくる、というより飛んでくる。
外を歩く時は大変だったけれど、中から庭を見るとチームラボにいるようなデジタル仕様に見えるほどだった。はじめは桜の花びらが舞い落ちる幻想的なシーンにも見えたけれど、多くの雪片は舞い落ちないで舞い上がりくるくるまわってさえいる。
白い蝶の大群が待っているようだった。
次の日にはほぼ何も残らず、前の日の雪が嘘のようだった。
次の日にレッスンに来た生徒たちに「どうだった、きれいだったね」と聞いたら、みんな中庭で楽しんだそうだが、私が「白い蝶々」というと、「蚊の大群」に見えた、という男の子(10歳)がいた。
1日で、跡を残さず、一瞬で過ぎ去った「白い舞」、どんな風に見えて、どんな体験としてインプットされたのか、人生についてまで考えさせられてしまった。