ドンボスコ社からクリスチャン・デュコック師の『自由人イエス』(Jésus homme libre)が届いた。
http://www.donboscosha.com/product/3157
表紙のイエス像は私の本の装画を何度かお願いした八木美穂子さんで、
『聖女の条件』(中央公論新社)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4120035859/ref=cm_rdp_product
の表紙の聖母の顔と今回のイエスの顔が瓜二つなのは、伝統通りだ。この時の聖母の顔は小さかったので分りにくいが、イコンの伝統も、能面の伝統も、正面の顔が左右不均衡というのも面白い。
人間は左右完全対称の顔を美しいと感じるらしいが、能面で右半分の悩み多い顔を見せて橋懸かりから出てきたシテが、戻っていく時には安らかな左半面を見せるように、左右の不均衡が時間性を導入するんだなあと思う。それは聖と俗とか、彼岸と此岸とか、神と人間とかいう両義性の分裂やら共存やら統合をいろんな形で象徴しているのだろう。
『自由人イエス』の後に自分で書いた解説をさっと読んで感動した。感動したというのは、へえ、この本を読んだらこんな感想が出てくるんだなあ、という感慨である。この解説には、私がここ数年取り組んでいるユニヴァーサリスムの擁護、無神論の系譜から、Kに触発されたソリプシスムまでが、この本で説かれる「自由論」に収斂していることが反映している。
この本は、キリスト教系出版社から出ているので、「キリスト教の内輪の話」のようなバイアスをかけて見られるリスクがあるから、この解説で触れた「自由他在」の思想について、別に書き進めている。
『自由他在の思想』のフランス語のタイトルは、『Solitaire et solidaire』を考えている。
ユニヴァーサリスムが全体主義に逸脱することなく真に連帯に向うためには、 絶対に必要なことだ。
2010年は、忙しくなりそうだ。
非平均律ギターによる秋の東京公演の準備、そのための本の準備、
自由他在の思想のまとめの他、『ふらんす』での新ジャンヌ・ダルクもの連載、
他にも企画がいくつか持ち込まれている。
そのすべてには、同じ「自由の希求」がある。