地球と星にまつわる謎に魅了されてきた人間は、太古の昔から、探求の成果をさまざまな形で記録してきた。2世紀中頃、エジプトの学者クラウディオス・プトレマイオスが、地図上の位置を表すのに等しく分けられた経緯線を使って地理学に革命がもたらされた。16世紀には地理学者ゲラルドゥス・メルカトルが3次元の地表を2次元に表現する独自の投影法を考案。この「メルカトル図法」は、今でも多くの世界地図で用いられている。(参考記事:「16世紀の世界地図、総数60枚がデジタル地球儀に」)
中世ヨーロッパ(西暦500年頃~1500年頃)の世界地図は、航海のためと言うより、「人間の知識を視覚的にまとめたものだった」と、地図製作者のピーター・バーバー氏は言う。18世紀末までは米国のカリフォルニアが島として描かれているなど、今見ると思わず笑ってしまうような間違いはあるが、細部にいたるまで驚くほど正確に描かれている部分も多い。
2023年秋に立ち上がった「Oculi Mundi(オクリ・ムンディ、ラテン語で「世界の目」の意)」というデジタルプラットフォームのおかげで、こうした珍しい古地図をオンラインで見られるようになった。公開されているのは、13世紀から19世紀初頭にかけてヨーロッパの学者が細心の注意を払って描いた地図を集めた「サンダーランド・コレクション」で、地図製作法の進化をはじめ、過去の文明の歴史観や芸術的偉業に触れることができる。
天動説の下、てこで地球を動かす天使たち
長い間、地球は宇宙の不動の中心であり、太陽やその他の天体は地球の周りを回っているというプトレマイオスの天動説が信じられてきた。しかし1532年に神聖ローマ帝国の地図学者セバスティアン・ミュンスターが製作した地図には別の考え方が描かれている。天使たちがてこを使って地球を動かしているのだ。
Oculi Mundiを管理するヘレン・サンダーランド・コーエン氏は、ミュンスターが描いた地図は、繊細ながら画期的なものだったと指摘する。「当時としては異端と言えるほど過激な地図だったと思います」
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