気温の上昇、北極圏の氷の融解、カナダの壊滅的な森林火災。2023年、気候変動の影響は過去に類を見ない規模となった。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が2024年1月9日付けで発表したデータによると、2023年は記録が残る1850年以来、最も暑い年だった。気温は産業革命前より平均で1.48℃高かった。科学者たちが超えてはならないと言う限界に、危険なほど近づいている。
ただし、2023年に起こった環境にまつわる重大な出来事が、すべてネガティブなものだったわけではない。さまざまな懸念材料の中には、希望の兆しもあった。
化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は、多くの人が望むほどのスピードではなかったにせよ、着実に進行している。絶滅が宣言された種もあれば、数十年ぶりに姿を現した種もあった。また、米国での絶滅危惧種法(ESA)制定から50周年となる2023年は、消滅する運命にあると思われていたいくつかの種が、相対的に言えばではあるものの、今では繁栄しているという喜ばしいニュースもあった。
良いものも悪いものも含めて、2023年に起きた環境に関する重大ニュースを6つ紹介する。
上がり続ける気温
世界気象機関(WMO)は、2023年が残りわずかとなった時点で、ほぼ間違いなく、記録上最も暖かい年になると見込んでいた。平均気温は、産業革命より前と比べて約1.4℃上昇したとしていた。
2023年の7月、8月、9月、10月、われわれはこれまでにない記録的な暑さを経験した。7月は観測史上最も暑い月、また米環境予測センターは7月4日にこれまでで最も暑い一日を記録し、この日はおそらく、過去12万5000年間で最も暑い日の一つとなったと思われる。(参考記事:「世界は観測史上最も暑い夏になる可能性、日本でも猛暑に警戒を」)
こうした気温上昇の主な原因である化石燃料からの世界炭素排出量もまた、2023年には、2022年から1.1%増加して過去最高となった。(参考記事:「世界の温室効果ガス濃度が最高を更新、「1.5度目標」達成も困難」)
この極端な暑さには、2023年の春に北半球で発生し、夏の間に急速に勢いを増したエルニーニョ現象もかかわっている。WMOによると、この気象パターンは2024年、さらに高温をもたらす可能性が高いという。
広がる火災被害
異常気象が相次いだ一年の中でもとりわけ強烈な印象を残したのは、カナダを横断し、米国の多くの地域の空に煙を撒き散らした森林災害だろう。2023年に全米で焼失した面積は約18万平方キロに達した。これはそれまでの記録のほぼ3倍、日本の面積の半分弱に相当する。
コペルニクス気候変動サービスの研究によると、カナダの森林火災によって、4億1000万トンの二酸化炭素が大気中に放出されたが、これは2021年のメキシコの排出量とほぼ同等であり、また、カナダの人々の活動により2022年に排出された5億4600万トンに迫る量だ。
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