カナダで見つかった恐竜化石が、これまでで最も重いティラノサウルス・レックス(Tレックス)であることがわかった。体重は推定8.85トンで、現在のゾウより重かった。(参考記事:「類人猿ギガントピテクス、大きすぎて絶滅していた」)
3月21日付けで学術誌「Anatomical Record」に発表されたこの化石は頭と尻の完全な骨、肋骨と脚の骨、尾骨の一部を含む約65%の骨格から成る。ニックネームは「スコッティ」。推定28歳以上と、この恐竜としては高齢だ。
気楽な28年ではなかった
約6800万年前、スコッティが暮らすカナダは楽園のような亜熱帯の海岸だったが、スコッティの生涯はバカンスとは無縁だった。この恐竜の化石には、肋骨が折れて治癒した痕跡、2本の歯の間で異常に成長した骨、尾骨を骨折した痕跡が残されていた。歯の間にある骨は感染の証拠、尾骨はほかの恐竜にかまれたものとみられる。
「これらの傷跡を見る限り、たとえ肉食恐竜の王者でも、気楽な暮らしではなかったようです」と、米デトロイト・マーシー大学の古生物学者ニザール・イブラヒム氏は語る。氏は今回の研究に関わっていない。
今回の発見が示唆しているのは、大型肉食恐竜が思いのほか長生きし、体も大きくなったらしいことだ。絶滅した恐竜の中でも、Tレックスは最も標本が多い種の一つであり、20以上の化石が発見されている。
研究を率いたカナダ、アルバータ大学の博士研究員スコット・パーソンズ氏は「ほかの獣脚類でも、標本が増えれば、スコッティのように大きくて高齢な個体が見つかるでしょう」と話す。「さらに体の大きい標本が見つかっても、私は驚きません。ほかの獣脚類がTレックスと肩を並べていた可能性、Tレックスを超えていた可能性は十分あります」(参考記事:「研究室に行ってみた。アルバータ大学 恐竜と脊椎動物の起源 宮下哲人」)