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中性子星より重くブラックホールより軽い謎の天体を発見

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image credit:LIGO-India/Soheb Mandhai

 ノースウェスタン大学の天体物理学者を含む国際共同研究チームが、中性子星より重いが、ブラックホールよりは軽い、謎の天体を発見したという。

 米国のLIGO、イタリアのVIRGO、日本のKAGRAの世界3か所の重力波検出器が協力して研究を行い、ついにとらえたのは、地球から6億5000万光年先で起きた2つの天体の合体によって生じた重力波だ。

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 その分析からは片方は中性子星であることが判明したが、もう片方の質量は中性子星とブラックホールの中間の質量がある。この謎の天体は、質量の小さな「低質量ブラックホール」である可能性があるという。

 仮にそうだとすると、これまで中性子星とブラックホールとの間にあるとされてきた「質量のギャップ」は、じつはそれほど”空っぽ”ではない可能性が浮上してきた。

中性子星とブラックホールの間の質量の空白

 中性子星とブラックホールの間には質量の空白領域がある。

 中性子星もブラックホール(ここでは恒星質量ブラックホールを指す)も、寿命を終えた大きな星が自らの重力で崩壊することで誕生する。

 だがその元になる恒星の大きさが違うため、生まれてくる両者の質量には違いがある。中性子星なら質量は太陽の質量0.1~2.5個分くらい。ブラックホールなら太陽5~数十個分。

 そして中性子星であれ、ブラックホールであれ、太陽の3~5倍のものはほとんどないだろうと理論上予測されている。これが「質量ギャップ」と呼ばれるものだ。

 実際、今回の重力波検出器トリオによる観測でも、たった1つの例外を除き、質量ギャップの範囲内にあるものは発見されていない。

 そこで世界3か所の重力波検出器で共同研究が行われた。

 米国の「LIGO(レーザー干渉計重力波天文台)、ヨーロッパ諸国による科学コラボレーションであるイタリアの「VIRGO」、岐阜県飛騨市の地下にある日本の「KAGRA(大型低温重力波望遠鏡)」、これら重力波検出器はお互いに協力しながら、これまで200回もコンパクト天体の質量を計測してきた。

 それでも質量ギャップの範囲内にある(しかもギリギリ)可能性があるのは、唯一「GW 190814」という重力波を引き起こしたブラックホールだけだ。

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中性子星とブラックホールには質量のギャップがある / image credit:xIGO-Virgo-KAGRA / Aaron Geller / Northwestern

中性子星より重くブラックホールより軽い謎の天体を発見

 ところが2021年、今度こそは間違いなく質量ギャップの範囲内にある天体を検出したのだ。

 それは昨年春に始まった4度目の観測で「GW 230529」で、LIGOが重力波を検出したという。KAGRAは残念ながら感度が弱く、稼働出来ずに共同研究を果たせなかったという。

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従来の説では、太陽の3~5倍の質量のブラックホールと中性子星はほとんど存在しないとされてきた。これが「質量ギャップ」と呼ばれるものだ。今回検出された重力波「GW 230529」を引き起こした天体は、はっきりとこの範囲に収まっている/Shanika Galaudage / Observatoire de la Cote d’Azur/

 この重力波は大きな天体の合体によって生じたものだが、そのうち1つの質量は太陽の1.2~2倍ほどで、おそらく中性子星だろうと考えられている。

 そして、もう一方の質量は太陽の2.5~4.5倍で、明らかに質量ギャップの範囲にある。

 地球から約6億5000万光年離れた天体の合体は、電磁波のバーストを伴っておらず、質量ギャップ内にある天体の正体ははっきりとはわからない。

 だが研究チームは、おそらく「低質量ブラックホール」であろうと推測する。

低質量ブラックホール(グレー)と中性子星(オレンジ)融合をシミュレーションした映像。放出される重力波は紺色から青色で示されている / image credit:Max Planck Institute for Gravitational Physics

中間質量を持つ天体は想像以上に多い可能性

 仮にそうだとすれば、この発見は、そうした中間の大きさにある天体が案外たくさんあるかもしれないことを示唆している。

 今のように重力波での観測が可能になる前、ブラックホールや中性子星のようなコンパクトな天体の性質は、天の川銀河の電磁気を観測することで間接的に推測するしかなかった。

 米国アドラー・プラネタリウムのマイケル・ゼビン氏は、「中性子星とブラックホールの質量にはギャップがあるという説は、このような電磁気的観測によって四半世紀も前に提唱されました」と、プレスリリースで語る。

 だがGW230529の発見によって、これまでほとんど存在しないとされてきた中間の大きさの天体も、想像以上に多い可能性が浮上してきた。質量ギャップはこれまで考えられていたほど、”空っぽ”ではないのかもしれない。

 この発見は金曜日(4月5日)のアメリカ物理学会で発表され、査読を待っている。

追記(2024/07/21)本文を一部修正して再送します。

References:Gravitational waves reveal “mystery object” merging with a neutron star | Ars Technica / First gravitational-wave detection of a mass-gap object merging with a neutron star – Northwestern Now / Gravitational waves reveal 1st-of-its-kind merger between neutron star and mystery object / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント、7件

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  1. つまり観測方法が増えて今迄見えてなかった中間部が見える様になったよと言う話だよね

  2. ざっと調べてみたけど質量ギャップって計算から導き出された不思議な予測というよりは観測できていない事に起因する謎だったんだね
    宇宙はやっぱ広いぜ

  3. 可視光線<電波・X線<重力波 と、
    重力波が観測可能になって、もっとすごい事がこれからも発見される事に期待

  4. LIGOとJWSTが運用された後の発展はものすごい物があるな
    週間新発見て感じだ

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