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ビーチサイドの人魚姫
俊樹

2019年9月Nikon D700で一眼レフデビュー。カメラは独学。2020年4月、Nikon D810へアップグレード。いつか写真展を開く為、日々精進。勿論、詩、小説、エッセイ、作詞は継続中。2021年夏、Nikon Z7Ⅱへと更にアップグレード。2022年10月、3回目の心臓手術に耐え抜き現在に至る。2023年8月ペースメーカー植え込み。

忘年会のある風景。

2016年12月12日
その他 18
忘年会

 今年も師走に入りいよいよ1年の締めくくりである。巷では忘年会や新年を迎える準備などで多忙を極めている人も多いだろう。来年の話をしても、もう鬼は笑わないし、2016年を振り返り、宴会で美味しいとご馳走を前にして、寒さに引つった顔も綻ぶ事と思う。
 私は「」と言う言葉に敏感である。嫌いではないが、病気のため殆ど飲めないに等しい。それでも20歳の頃などは正月になれば友人宅で一升瓶の日本酒ウイスキーのボトルを二人で空にしてしまった事もある。
 一晩で飲む量としてはかなり多い方だと思う。次の日は朝から頭がガンガンして二日酔い、そのため一日中横になっていた。急性アルコール中毒で亡くなる人もあるし、自分の身体にあった飲み方をしないと取り返しのつかない事になる。
 私の父はアルコール依存症乱だったため、私の子ども時代はこの父ととの闘いの日々と言っても過言ではない。私は一人布団に入り何時帰るか分からない父の事を気にしながら眠っていた。
 柱時計は既に午前0時を過ぎている。当然こんな時間まで起きている子どもも大人もいない。深夜の道が街灯の明かりでぼんやりと闇の中に浮かんでいる。車も人の気配もなく何処かで犬が吼えていた。
 小さな豆電球だけをつけたまま、薄い布団の中で明日の夢を見ている私の耳に聞こえて来たのは、無造作に玄関の扉を開ける音。静まり返った冬の夜空を裂くように響き渡った。そして不規則な足音と微かな呻き声。
 いつもの聞きなれた音と声ではあったが、私の身体は震えていた。これから起きる父とのやりとりを既に感じていたからだ。座敷に上がり襖を力いっぱい開けると、父は布団をめくりあげ「とし坊」と声を掛けて来た。それは地響きのように私の小さな身体を恐怖に揺らした。枕元に座り込み愚痴を話始める父。かなり酔っているので何を言っているのか聞き取れない。
 酩酊状態の父には明日の学校の事など頭の中には何もなく、自分の目の前にいる子どもが息子である事さえ忘れて、鬼になった父は吼えそして暴力が始まるのである。私は広い屋敷の中を小人のように逃げ回り、裸足のまま裏口から凍てついた庭の方へ逃げ出した。光輝く月と数々の星屑が庭の隅々まで反射している。逃げ場所はいつも決まっていてそこだけが安全な場所だった。
 数時間じっと動かず寒さに耐え、そっと家に戻って見ると父はその晩飲み食いしたと思われる物を胃袋から全て吐き出していた。元々に弱い父だったから身体が受け付けてくれなかったのだろう。畳に染み込んだ嘔吐物を始末するのは私の役目。
 父の身体に布団を掛け、自分も明日に備えて再び眠りに落ちた。私に取って酒は「きちがい水」そのものだった。いまでは差別用語になっているので耳にする事もないが、酔っ払いの姿を見るたびに父を思い出して懐かしい時代を振り返るのである。

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俊樹
この記事を書いた人: 俊樹
本名/神戸俊樹
静岡県藤枝市出身。
19歳の時に受けた心臓手術を切っ掛けに20歳から詩を書き始める。
2005年3月詩集天国の地図を文芸社より出版、全国デビューを果たす。
うつ病回復をきっかけに詩の創作を再開。
長編小説「届かなかった僕の歌」三部作(幼少編・養護学校編・青春編)父を主人公にした(番外編)を現在執筆中。
詩、小説、エッセイ、作詞など幅広く創作。
2019年9月、一眼レフデビュー。Nikon D700を使用。
2020年4月、Nikon D810にアップグレード。
2021年夏、ミラーレス一眼 Z7Ⅱへと更にアップグレード。
2022年10月3度目となる心臓手術を受け、大成功を収める。
2023年8月徐脈性心房細動で心停止(失神)したため、ペースメーカーを植え込む。

コメント18件

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koyuri

酒は飲んでも飲まれるなと言いますが

酔っぱらいの相手は大変ですね。

父は下戸なので問題ありませんでしたが、実家が旅館なので後始末の大変さなどは、身に染みて理解出来ます。

2016年12月12日 (月) 21:51

ichan

こんばんは。

自分もkoyuriさんのコメント同様の社会人教育
を受けました。
飲んでも他人に迷惑はかけていないと思います。
限界前に止めています。

酒に限らず後始末が大変なのが社会ですね。

2016年12月12日 (月) 22:07

風子

切ないですね。

『酒』にまつわる思い出……切ないですね。
悲しかったこと、
辛かったこと
恐かったこと、
歳を重ねて振り返ると、それらの全てが、
虚しいような、愛しいような、切ないような、
マーブル模様の感情ですよね。

ですが、それらの環境こそが、俊樹さんを詩人にした。
あらゆる逆境が、俊樹さんの感性に磨きをかけた。

だからこそ、人生は素晴らしいと、
私は観ています。

2016年12月13日 (火) 16:08

雪野繭

うちもそうでした。

私の父も酒乱でした。
明るい陽気なお酒ではなくて、毎日の鬱憤を晴らすためのお酒・・・。
飲むと、暴力は付きもの。
逃げるしかないです。

果たして、お酒を飲むことで、本人が幸せになれたのか、
それはわかりません。
たぶん、飲む前よりも苦しくなっているような気がします。
でも、中毒みたいになると、また飲みたくなる。
それの繰り返しで、自分を追い込んで・・・。

私は今でこそノンアルコールですが、元気な頃は酒豪でした。
父の姿を見ているので、お酒は楽しんで飲んでいました。
たった1度の人生、楽しまなくちゃ、損ですから。

2016年12月13日 (火) 17:05

sado jo

酒は元々は麻薬だったそうです。
シュメールやエジプトでは、塔やピラミッドの建設をさせた後に、重労働の疲れを取る為に労働者にビールが振舞われました。
これがインカやアステカになると、労働者にコカインやマリファナなどを振舞ったそうです。
今は片方は違法になってますが、為政者が麻薬を使って国民を操縦したと言うのは何ともな~…と思います。
とは言え、仕事の後のキューッ!と一杯を楽しみに働く労働者を見ると、やっぱり操縦されてるのかな?(笑)
元が麻薬だけに、度を越すとキチガイ水になりますよね~><

2016年12月14日 (水) 14:23

アンジュまま

お酒は決して楽しいものばかりではないのでしょうね‥
しみじみ‥
いつでも朗らかなお酒でお付き合いできればとは思います♪

2016年12月15日 (木) 18:34

かみかわ

酒乱にて

暴れ眠りし 父の世話 痛かりけれど これも思い出 酒呑めぬ 父も我をも 世は当たり 体質故に 仕様がなけれど

2016年12月15日 (木) 23:11

風香(Keyboardvocal)

私も言葉を書くことが好きで、作詞はしているのでが、神戸俊樹さんの書く詩はとても素敵だと共感を覚え、何度か訪問させていただいておりました

2度程だったでしょうか…私のブログにも訪問返してくださり有難うございます

私はヒステリーな母から言葉の虐待を受けて育ってきたので、言葉の功罪に敏感で、言葉を書く仕事をしていたこともありますが、心を病み引きこもってしまった年もありました

私も自分の気持ちを文章等にすることで救われてきました

そんな生育環境や苦しみが俊樹さんと重なるところもあると思ったので、私のブログの右バナーのリンク一覧からこちらのブログにリンクさせていただいたのですが、もしご迷惑でしたら言ってください

2016年12月16日 (金) 17:15

♪デコ♪

ちょっとトラウマ的な出来事でしたね
デコ爺もあまり酒癖はよくありませんが

飲み過ぎると口調がより荒くなる( 一一)

そんな父を見てきたからか
デコは家族で一番弱い

幼き頃の嫌な想い出はそっと心にしまっておきましょう^^
めちゃくちゃ寒いでしょう??

身体充分労わって上げて下さいね

2016年12月17日 (土) 04:23

ネリム

こんばんは
お酒もほどほどが大切だなと思いました。

2016年12月17日 (土) 20:42

saitanii

こんばんは(^^)

私も昔、お酒は飲めた方ですね。
最近はすっかり弱くなってしまって、若い頃は日本酒が好きでしたが
今は日本酒を飲むと記憶が無くなってしまうので飲まないようにしています。

お父様との想い出「父を思い出して懐かしい時代を振り返る」とあるので
きっと、お酒を飲んでいない時は優しいお父様だったのでしょうね。

2016年12月17日 (土) 20:59

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2016年12月17日 (土) 23:11

小判鮫のコバンちゃん

私の父も酒好きですが
酔うと、陽気になり
面白かったです。
でも、今はアルツハイマーで
一滴も飲まなくなりました
っていうか
飲みたいみたいだけど
飲ませないんです。
酒が飲めなくなると
人生終わりだと
聞きましたが
私の父は
まさに、その通りです。

2016年12月17日 (土) 23:50

野津征亨

こんにちは。
存じてはいましたが、お父上は相当な酒好きでいらしたのですね。
アルコールの飲めないわたしには酒の美味しさというものがよく判りませんが、それはそれで幸せなのかもしれないと、記事を拝見して思いました。

2016年12月18日 (日) 14:12

青空

こんいちは

小さな子供にとってどれ程の寂しさと辛さか何故に親として分からないのでしょ?
ヨッパライ!と一言で済ませられるものではないですよね。
心に傷を受けた者の気持ちはどうなるのでしょうか?
一生傷を背負って生きていくのです。
その相手が親であれば、誰にも言えないでしょう・・・
同じ様な子を見ているのでとてもつらいです。
世の中が明るければ明るい程・・・辛いのでしょう!

でも・・・お酒を飲んでないお父様は優しかったのでしょうか?
お父様もご病気だったのですネ。

2016年12月18日 (日) 16:24

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2016年12月18日 (日) 20:49

よしお

こんにちは

この画像はかわいらしさもあれば、おもしろさもありますよねぇ~。
ビールジョッキを両手に持ってる猫ちゃんかわいいね(笑)

2016年12月20日 (火) 16:21

がる

No title

俊樹さんのおかげで身に沁みました(^^ゞ

上のコメントにもあるように、(酒は麻薬)
酒がいつの日か違法になったりする日がくるのでしょうか。

それでも隠れてコソコソ飲みたくなるのでしょうか。

わたしもそろそろ潮時のようです。

俊樹さんに
HAPPY CHRISTMAS♪

2016年12月25日 (日) 12:00