ロスチャイルド家現当主のジャイコブ・ロスチャイルド卿が、クライアントに向けた定例書簡で述べたこと。
(※この記事は、メルマガ第170号の一部です。全文はメルマガでお読みください)
演習? ドイツ政府が国家的緊急事態に備えるよう呼びかけ
2014年10月に、「日本とドイツの金融崩壊が先で、その次にアメリカ・ヨーロッパという見立て」という短い記事を書きました。それは、メルマガ79号パート2として配信されています。
この時点までは、ドイツ経済はヨーロッパ経済の「崩壊しない固い岩盤」と見られていました。
しかし、ドイツの工業生産指数その他のいつくかの経済指標に不穏な兆候が出てきたので、2014年以前に、ドイツ経済には、すでにヒビが入り始めていることを知ったのです。
・・・ドイツ銀行の意味のないポートフォリオによれば、デリバティブ取引における保有残高は、2016年初頭の時点でドイツのGDPの25倍にまで膨らんでいたのです。それはとっくに、利払いができるかどうかの瀬戸際まで悪化しています。
・・・24日のブルームバーグによれば、「英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)はグローバル・トランザクション・サービス(GTS)業務の約3000顧客に、取引銀行の変更を急ぐように促した」とのこと。
・・・つい数日前、英BBCは、「ドイツ政府、国民に水・食料の備蓄呼びかけ」という、ゾッとする見出しの記事をアップしました。
・・・独紙フランクフルター・アルゲマイネに よると、ドイツ内務省が発表した69ページにわたる民間防衛計画書では、「通常の国防が必要となるドイツ領への攻撃は、あまりあり得ないものの、国家安全 保障への将来的な脅威の可能性を排除すべきではなく、そのため民間防衛の施策が必要であると考えたため」としています。
・・・ドイツ政府は、全国民に、いったい何を示唆しているのでしょう?
ドイツ銀行CEOの警告はEU全体に向けてのもの
ゼロヘッジは、8月25日、「ドイツ銀行CEOが預金者のために『致命的な結果』を警告した」ことを取り上げています。
ドイツ銀行の破綻が本当に近づいてきたのか、英BBCまでもが「もっとも危険な銀行」と表現するようになりました。
そのドイツの銀行のCEOが、8月24日、とうとうドイツ国民に向けて重大な警告を発したのです。
・・・ドイツ銀行のジョン・クライアン(John Cryan)最高経営責任者(CEO)は、8月31日から9月1日の二日間、フランクフルトで開催されたドイツの日刊商業経済紙ハンデルスブラット主催の 『激動の中の銀行』というイベントにゲストコメンテーターとして招かれたとき、
「現在のECBの通貨政策は、経済を強化してヨーロッパの銀行システムをより安全にする目的に反している」と強い不満をもらしました。
・・・「もしドイツ銀行が破綻するなら、ドイツ銀行とともに、すべてを引きずり込んでしまう可能性がある」ということを彼は暗に示唆したのです。彼は、ドイツ銀行の破綻が、それだけ巨大な災害をもたらすことを承知しているのです。
中央銀行の通貨政策のパラドックスが「致命的な結果」をもたらす
企業が内部留保に励んで設備投資に消極的になっているのは、日本だけでなく米国・欧州の企業も同じです。
そうした企業は、自社株買いによって株価を吊り上げ、その株の一部を売って得た新たな資金で企業買収に乗り出しているのです。
企業は、まるで神経戦のような競争に晒される新規事業を展開するより、TOBによってM&Aを成功させた方が「手っ取り早く欲しいものが手に入る」とばかり、本来のリスクを取らなくなっているのです。
企業が本来の自由競争を放棄して、企業活動そのものをマネーゲーム化しているために・・・さらに、中央銀行の迷い箸のような通貨政策のせいで、「将来に対する不確実性が進行」し、貸出需要そのものが細っているところに企業が投資を手控えているので、ひいては、銀行預金者と年金制度にとっては「致命的な結果」をもたらすことになるのです。
日刊商業経済紙ハンデルスブラットの記事では、ドイツ銀行のクライアンCEOのコメントが紹介されています。
「ECBの政策が、もがき苦しんでいるヨーロッパの銀行の余力を圧迫し続け、保険会社が有益な投資先を見出すことを困難にしているだけでなく、金融市場の価値を危険なほどゆがめている。
不確実性が継続している現状では、もはや企業は投資をためらい、どんな信用貸しも求めなくなっている」と彼は警告しています。
・・・クライアンと同じように、「期待されていたような汎ヨーロッパでの投資の後押しは起こらなかったし、EU加盟国における構造改革にも効果がなかった」と述べているのは、ドイツ貯蓄銀行協会の理事、ゲオルク・ファーレンショーン(Georg Fahrenschon)です。
マイナス金利が貯蓄率に強く影響するようになる
・・・ロックフェラー系列の巨大ヘッジファンド、ブラックロックのストラティジストで世界最大のアセット・マネージャーであるマーティン・ラック(Martin Lück)は、「ドイツ銀行のクライアンCEOとECBのアクションが、派手な量的金融緩和を挟んで逆の影響を成している懸念がある」と指摘しています。
・・・ドイツ10年国債を含むその他多くのソブリン債において、否定的な金利領域に入っていくことによって、収益のビジネスモデルが崩壊してしまうのです。
なぜなら、これらの証券は、保険会社の投資の屋台骨だからです。
・・・「将来の不確実性」が高まることによって、ドイツ連銀の推算どおり家計貯蓄率が高くなっていけば、一般に需要不足を引き起こします。
それは、クライアンCEOが諦観した警告を現実のものとするでしょう。
で、結局、最後は彼の言った「致命的な結果」について警告を発する銀行のCEOは誰一人としていなくなるのです。
・・・特に、クライアンCEOが言っていた文脈が、誰の目にも明らかになった段階からは。
先進国の国々は『いつか爆発する超新星』の脅威に晒されている
・・・このRTの記事では、RITキャピタル・パートナーズの会長、ジェイコブ・ロスチャイルド (第4代ロスチャイルド卿)がこう述べていると伝えています。
「低金利と政府の国債の逆利回り、そして量的金融緩和は、世界史で最も大きい財政的な実験の一部である。そして、結果はどうなるかまだ分からない」。
RITキャピタル・パートナーズは、半期ごとにレポートをまとめた上で、それを公開していますが、今回の報告書では、ほとんどコメントしないことで知られているジェイコブ・ロスチャイルド自らが口を開いた、ということから世界中の投資家が注目しているのです。
・・・6月に出されたバンクオブアメリカ・メリルリンチの報告書によれば、先進国の金利は米国の0.5%に代表されるように、過去もっとも低い水準にあるとのことです。
スウェーデン、スイス、日本のような国々の中央銀行は、こぞって「デフレとの闘い」を掲げて、とうとう貸出し金利をマイナスにしさえしているのです。結果、上述してきたように、ドイツ銀行のクライアンCEOが再三警告しているように「致命的な結果」を招こうとしています。
・・・主導的なポートフォリオ・マネージャー、ビル・グロス(Bill Gross)は、それを「いつか爆発する超新星」と呼んでいます。
日本のメガバンクに、どんな役割を負わせようとしているのか
…ジェイコブ・ロスチャイルドは、世界中の平凡なアナリストたちに「予測不可能である」という免罪符を提供したのです。
今後、そうしたアナリストが出す相場の予想は、ますます信憑性を失い、中央銀行の総裁は無能のそしりを免れず、投資家たちは方向感を完全に見失うでしょう。
それこそが、彼らグローバル・エリートたちが待ち望んでいる「カオスの生成」に大いに役立つのです。
彼こそが、各国の中央銀行にレシピを提供している“中央銀行の中の中央銀行”である国際決済銀行(BIS)と欧州中央銀行(ECB)、そして、“通貨の番人”として設立された国際通貨基金(IMF)の采配を取っている人間であることは、投資の世界の裏事情に通じている人間でなくとも、とっくに知れ渡ってい る事実です。
・・・日本のメガバンクは日本国債に別れを告げ、クリプトカレンシーによって新生しようとしています。
彼らは、第二のドイツ銀行になることを必死に回避しようとしています。
・・・なぜなら、ロスチャイルドとて、さらに上位の強大な人々の“御託宣”によって動かされているからです。
それが誰なのか、ここで貴重な文字数を費やしてしまうのは得策ではないので、次号のメルマガで詳述することにします。
オクトーバー・サプライズは起こるのか
オクトーバー・サプライズ・・・
確かに、それは起きます。
オーストリアとハンガリーは、10月の同じ日に画期的なEU離脱を決める国民投票を開くかもしれません!
・・・米国の保守系・オンライン・ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」(7月5日付)によると、
「ハンガリーの大統領、アーデル・ヤーノシュ(Janos Ader)は、欧州連合(EU)の移民政策に関して是非を問う国民投票を10月2日に行う」と発表したとのこと。
アーデルの大統領執務室は、この国民投票では、
「EUがハンガリー議会の同意を得ることなく、非ハンガリー市民の移民に関する問題の解決策を勝手に決めることを容認するのかどうかがハンガリー国民に問われることになる」と述べています。
・・・一方、オーストリアでは、10月2日に、大統領選の決選投票のやり直しを行うことを発表したばかりです。
・・・オーストリア大統領選の投票は、今年の5月に実施されましたが、投票のカウントにおいて不正行為が発覚したことから告発を受け、ハンガリー最高裁判所による徹底的な調査につながっていきました。特に、不正は郵便投票の分類に関して見られました。
・・・10月2日の大統領選のやり直しは、同時に、オーストリアのEU離脱を決める選挙になりそうですが・・・
ナショナリズムの台頭を装ってブレグジットを成功させた英国王室
・・・英国のブレグジットは、そもそもが「大英国時代の復活」を密かに温めてきた英国王室が、ナショナリズムの台頭を装って仕掛けたものですから、ハンガリー、ポーランド、オーストリアの場合とは少し事情が異なります。
しかし、英国のブレグジットも、その発端においては、東欧からの移民問題の解決策としてEU離脱という選択肢が国民に与えられることによって大きく燃え上がったのです。
特に、英国のボストンは、ブレグジットの「モデル地区」として使われました。
・・・英国議会は、国民投票のやり直しを行わないことを決め、新しく首相になったテリーザ・メイも、EU離脱については「成功裏に進めていきたい」と、ぶれない姿勢をアピールしています。
ドイツ連銀破綻の暗示は、UE加盟国のEU離脱ドミノの阻止に使われている
・・・8月15日のロイター、同じく8月15日のブルームバーグともに、英ポンドが離脱決定後の安値に迫っており、「ヘッジファンドもポンドに対してこれまでで最も弱気なポジションをとっている」と報じたことから、その翌日に、メディアは一転して「欧州連合(EU)からの離脱論が下火」と報じ、オーストリアの大統領選を控えた自由党のノルベルト・ホッファー候補者が「EUからの離脱」を否定する展開になっています。
しかし、8月15日のロイターは、8月15日に発表された月報で、「ドイツ経済への目先の影響は限定的」とのドイツ連銀の認識を示したことから、ますます混迷の度を増す結果となっています。
そこに飛び込んできたのが、記事の冒頭で取り上げた英BBCによる「ドイツ政府、国民に水・食料の備蓄呼びかけ」報道でした。8月22日の報道です。
この英BBCの報道が事実だとすれば、EUの東欧加盟国の脱EU熱は一気にクールダウンするでしょう。
英BBCの報道のソースは、明らかにドイツの有力な日刊商業経済紙「ハンデルスブラット」であり、ドイツ政府も今のところ、否定していないようです。
最大規模のオクトーバー・サプライズが起こった場合は・・・
オクトーバー・サプライズが最小規模となった場合は、ハンガリーのEU離脱投票の実施。
最大規模となった場合は、オーストリア、ポーランド以外で、イタリア、フランスでも国民投票の実施を宣言する声が上がり、さらには、ドイツ銀行の破綻が、より具体的、現実的に迫って来るという事態が展開されることになります。
そして、さらに悪ければ、英BBCが報じたとおり、ドイツ国内で(おそらく)銀行システムの混乱に乗じて、インターネットや水道といったインフラを破壊するテロが勃発し、一部の地域で物流が停滞する、という緊急事態が生じる最悪の事態さえ想定しなければならなくなる、ということです。
それは、EUに大混乱を引き起こし、米国の大統領選の実施さえ危ぶまれる事態を引き起こすかもしれません。
このことは、メルマガ第169号のパート1とパート2で書いた「プランC」と密接につながってきます。(ダイジェストはコチラ)
まったく想像したくない近未来ですが、米国の大統領選混迷の様相を見るにつけ・・・
一方、日本への影響は、どんなことが考えられるでしょう。
・・・もし、円高になっても、思ったより日経平均が下がらなければ、それは官製相場の最後の深呼吸であって、その後、呼吸停止してしまうかも知れません。
・・・ですから、今後、オクトーバー・サプライズの規模がどの程度になるのか、よく目を凝らして、為替、とくに対ユーロに敏感になることが必要です。
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