「通貨の談合」は、資金の避難先の選択肢を狭めてしまう。
金(ゴールド)が第二の選択であるなら、「第三の選択」とは?
(※この記事はメルマガ第172号のダイジェストです。全文はメルマガでお読みください)
仲良しこよしで笑顔の通貨談合
この写真は、2014年4月11日、ワシントンで開かれた「国際通貨基金(IMF)・世界銀行2014年春の会議」で撮られたスリーショットです。
黒田日銀(JOB)総裁、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、ジャネット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長、そして、後列には麻生財務大臣。
「円」、「ユーロ、「ドル」・・・世界の三大通貨をコントロールして世界経済を動かしていると言ってもいい3人です。
この写真のように、彼ら3人は、とても仲がいいのです。
・・・しかし、欧米の金融ジャーナリストたちは、この写真を見て、「この3人が言っていることはファニーだ。彼らは、いつも連(つる)んでいる」と評しています。
あるいは、「彼らがジャクソンホール(Jackson Hole)に集まって話すときの心配事は通貨の下落に関することだ。しかし、肝心なことは、そんなことではなく、負債の拡大と準備金がいくらあるのか、そして、それによって金利が上昇することなのだ」と
・・・そして、こうした金融・財政の国際会議に西側主要国の中央銀行総裁とともに必ず出席しているのが、国際通貨基金(IMF)の専務理事、クリスティーヌ・ラガルドです。
・・・彼らの間には「競争」は起こりえず、「協調」しかありません。
だから、彼らに「協調」できない者は離脱します。
・・・通貨のコントローラーであるG7の中央銀行の間には「協調」しかないのですから、それは最終的にはケイジアン(ケインズ経済学を支持する人々)たちが言う「流動性の罠」に自ら嵌っていくのです。
「サイは投げられた・もう後戻りはできない!」
・・・「祭りは終わった?」・・・「いや、終わらせてはならないのだ!」。
「賽は投げられた」。
政府は「ここから引き返す方がリスクが高い」と自縄自縛の罠にからめとられ、悲劇の道をひた走ることに決めたのです。まさに、「心のおもむくままに」です。
・・・一足先にマイナス金利を導入した欧州中央銀行は、EU加盟国のすべての銀行に今年の1月1日からベイルイン制度が適用されたことを受けて、マイナス金利幅の拡大を示唆しています。
米国は、銀行の破綻処理を行う際、連邦預金保険会社( U.S. Federal Deposit Insurance Corporation)が保有する預金保険基金がわずか250億ドルしかないことから、預金者には預金額の1.15%だけを保証すればよい、という新法を制定しました。
ドイツ銀行の破綻かFRBによる利上げか?
・・・この方法は「銀行預金課税」というもので、その銀行が破綻したり、破綻寸前であることが確定的になった時点で、銀行が預金者から預かっている資金から一定割合を取り上げて損失の穴埋めをすることによって銀行を救済するというものです。
キプロス政府は、明らかに社会工学的な実験を行ったのです。
それは、人々が、いくらまでなら、突然、お金を奪い取られてもパニックにならないか、という実験です。
この実験結果を踏まえて制度化されたのが、EU加盟国すべての銀行に1月1日から適用されたベイルインなのです。
(※メルマガ第147号パート2「2016年から始まる米国と日本の悪夢ー見えてきた資産バブルと戦争経済」にて詳述)
・・・果たして、それはドイツ銀行の破綻をきっかけとして起こるのか、あるいは、ジャネット・イエレンによる利上げの発表と相乗するのかは、直前にならないと分かりません。FEMAはスタンバイ状態です。
アイスランドのステルス預金増税と数十年前から決まっていたブレグジット
2008年12月、人口31万人の北極圏にある小国・アイスランドが財政破綻しました。
・・・このとき、アイスランド政府は自国通貨のアイスランドクローナの価値を大きく下げて財政の立て直しを図りました。
・・・アイスランドの銀行預金者が、超インフレが実質的な「銀行預金課税」であることに気が付いたのは、ずっと後になってからのことです。
キプロスの場合はベイルイン、アイスランドの場合は通貨価値の大幅な減価と、それぞれ手法の異なった手荒い手口が使われたものの、両者とも銀行預金に税金をかけるという「銀行預金課税」によって銀行システムを救済したことには変わりがないのですが、アイスランドの場合は、ステルス増税ですから、国民の憤怒を抑えることができました。
さらに、根本的に違うことがあります。
それは、キプロスがユーロを導入していたことと、アイスランドがユーロを導入せずに自国通貨を使っていたことです。
・・・アイスランドの場合は、自国通貨を切り下げる(為替をアイスランドクローナ安に誘導)という方法で、経済の立て直しを図りつつ将来展望を示したのです。
このことによって、アイスランド政府は、人々の欲望のベクトルを「破壊」から「希望」に変えることに成功したのです。
結果、暴動らしきものは起きませんでした。これは、ステルスによって行われた巧妙な増税でした。
・・・英国王室が、なぜEUからの離脱を画策したのか、ここに答えがあるのです。
つまり、ブレグジットは、数十年前から決まっていたということです。
ドル預金による資金の避難はリスクが伴うようになった
さて、今年もワイオミング州ジャクソンホールに各国の中央銀行総裁が集まりました。
このカンザスシティ連邦準備銀行主催のシンポジウムで、日銀の黒田総裁は「日本は次なる量的金融緩和の準備ができている。マイナス金利の拡大幅は、まだ余力がある」とスピーチしました。
東京のJPモルガンのエコノミストが、「7月末には、マイナス金利をマイナス0.1%からマイナス0.3%にまで拡大することを提議するかもしれない」と予測していたように、黒田総裁は、数値こそは示さなかったものの、それを国際会議で話したのです。
連邦準備制度理事会は常に、歴史的に景気後退が続いているときに利上げを断行してきました。イエレンのポーカーフェイスに油断しないように・・・
しかし、そもそもが、日米欧の中央銀行総裁が何を言おうが根本的なことについての議論が欠けています。
それは、キプロスとアイスランドの財政破綻で指摘した「通貨の談合」です。
・・・つまり、日米欧は通貨戦争を避けて、同時に量的金融緩和政策を続けることによって、外貨への逃避の道筋をふさいでしまったということなのです。
「世界規模の経済リセットと国際通貨のリセット」は合意されている
ジャネット・イエレンの連邦準備制度理事会(FRB)が今後とることができる唯一の安全策は、“何もしない”ことです。
これは、ハイエクの考え方と同じです。
・・・先進主要国の中央銀行の、この1、2年の方針と姿勢に大きなシフトがあるのは、なぜなのか、ということです。
国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルドは、このシフトチェンジのことを「グローバルな経済リセット(Global Economic Reset)」と呼んでいます。
各国の中央銀行総裁は、この考えに同意しているのです。
たとえば、アトランタ連邦準備銀行総裁のデニス・ロックハート(Dennis Lockhart)のような一部の連邦政府官僚は、中央銀行は「素晴らしい新世界に入りつつある」と述べています。
「世界規模の経済リセットと国際通貨のリセット」は、'brave new world'とまで言っているのです。
これらは、グローバル金融システムを思い切って徹底的に見直そうという感情的な意味合いが込められたフレーズです
・・・グローバル勢の枠組みに入っていないアナリストたちは、すべての中央銀行が国際決済銀行(BIS)によって秘密裏に調整されていることをすで知っています。
「中央銀行の軽率な実験は苦い果実となる」
・・・この記事は、英国のEU離脱(ブレグジット)を決める国民投票が行われる前のことではあるものの、ジェイコブ・ロスチャイルドが、英ポンドと米ドルから金(ゴールド)にシフトしていると、囁かなシグナルを送っていたことはとても興味深いことです。
そのスプートニクの記事によれば、
「ドルの台頭の後、金へのシフトと同様、われわれが取ってきた重要な米ドルのポジションではあるが、今ではいくらか減らしている。
・・・米ドルのポジションを減らしたことは、実質利回りが下がっている中、われわれの通貨政策に関する懸念を反映している」とロスチャイルドは付け加えています。
事実、6月末までには、ジェイコブ・ロスチャイルドのRITキャピタル・パートナーは、金(ゴールド)をはじめとする貴金属資産を8%増やしています。
ポリットロシア(PolitRussia.com)は、この問題にコメントしながら、「ロスチャイルドは、世界経済が西側諸国の無責任な金融政策によって最悪の嵐に突き進んでいることを示していることは明らかである」と指摘しました。
「通貨の談合」は、結局、単一通貨の使用を強制することになる
・・・2016年4月、弁護士であり著述家、アナリストにして「ストラティジック・インテリジェンス」のエディターであるジェームズ・リカーズ(James Rickards)は「金は今年驚くべき復活を遂げた」と強調しました。
「これは、投資家が、常に金を安全な資金の避難所と考えている証拠である」と付け加えています。
「各国は、国際的な金融システムの崩壊に先立って、金(ゴールド)も確保しようと動いている」とテレグラフ紙のオンライン・メディアに掲載された記事の中で彼は書いています。
・・・「グローバル経済のリセット」、「国際通貨のリセット」・・・
ジェイコブ・ロスチャイルドの言葉を信じていいのでしょうか。
彼もまた、ナポレオン戦争のときコンソル公債を投げ売って、その後、再び買い戻して莫大な富を築き上げたネイサン・ロスチャイルドがやったように、同じことを考えているのでしょうか。
・・・ジェイコブ・ロスチャイルドの警告を、ハイエクの通貨の考え方を借りながら、このように解釈することにしましょう。
ハイエクの主張は、「通貨を国家のコントロール下に置いてはならない。通貨の発行権と流通に競争原理を導入しなければならない」です。
ハイエクは、このように言いました。
「・・・あまりにも危険であり止めなければならないのは、政府の貨幣発行権ではなく、その排他的権利であり、人々にその貨幣を使わせ、特定の価格で受領させる政府の権力である」。
(「貨幣論集 (ハイエク全集 第2期)」池田幸弘・西部忠訳 春秋社刊)
(「貨幣論集 (ハイエク全集 第2期)」池田幸弘・西部忠訳 春秋社刊)
誤解してならないことは、ハイエクは、通貨の選択権が政府の権力によって奪われてしまうことによって、インフレに対応する民間の手立てがなくなってしまうことに対して警告したのです。
通貨の発行主体が、政府であれ、ロスチャイルド・ファミリーが構築したような民間の中央銀行制度であれ、法的な強制力によって一種類の通貨だけを使えという横暴は、やがて金融制度の破壊につながる、と言っているのです。
・・・だから、ジェイコブ・ロスチャイルドは、エリザベス女王の命を受けて、EUから離脱したのでしょうか。
あまりにも巨大な資産を持ち過ぎたがために、どこにも避難場所がなくなってしまった不幸を背負いながら・・・
そして、苦肉の策としてジェイコブ・ロスチャイルドは、資産の一部を金(ゴールド)に移し換えたのです。
第三の選択
・・・ロンドン本社の日本担当に直通電話をかけて訊いてみたところ、「確かに個人の取扱高は急激に増えている」とのこと。
しかし、ジェイコブ・ロスチャイルドと彼のメディアは、肝心なことに触れたくないようです。
それは、キプロスが財政破綻したとき、キプロスの銀行に巨額の資金を預けていたロシアの富裕層が、ビットコインを大量に購入して海外に資金を避難させたことです。
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