ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

粟田房雄『新版 ディズニーリゾートの経済学』

東京ディズニーランドが1983年にオープンしたのに対し、84年に発表された粟田房雄・高成田亨『ディズニーランドの経済学』(87年に文庫化)は、ディズニーの手法や日本のディズニー受容のありかたを解説・考察したものとしては、最も早い部類の本だった。
その後、第2テーマパークの東京ディズニーシー、イクスピアリ(ショッピングモール)、ディズニーリゾートライン(モノレール)が作られ、東京ディズニーリゾートが東京ディズニーリゾートへと拡張された2001年のタイミングで、『ディズニーリゾートの経済学』を粟田は単独で執筆してもいる。2012年には『増補版 ディズニーランドの経済学』も刊行された。彼はディズニー研究のパイオニアの一人であり、一連の著作は、私が『ディズニーの隣の風景: オンステージ化する日本』を書く時にも参考にさせてもらった。
増補版 ディズニーランドの経済学 (朝日文庫)
そして粟田は東京ディズニーランド開業30周年に当たる今年、大幅に加筆修正した『新版 ディズニーリゾートの経済学』をまとめた。ディズニー本体や東京ディズニーリゾートをめぐるこれまでのあれこれを知るには手頃な概説書である。
ディズニーリゾートの経済学
同書では、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、立地する千葉県浦安市JR舞浜駅周辺の地域開発に力を入れていることが記されている。

 舞浜地区の開発は、オリエンタルランド社が主導権をとっている。1つのあらわれが、街路樹の整備である。これまでは「アメリカデイゴ」が数えるほどしかなかったが、それを「ヤシの木」に替えた。その数は700本。

 街灯70個も取り替えた。暖かい地域のリゾートをイメージして、舗道の張り替えも行った。信号や交通標識も、同社が負担してブルー系のディズニー色にした。モノレールでぐるりと1周するから、舞浜地区全体としてのイメージが一致しているほうがいいという考えによる。

 オリエンタルランド社は駅舎と駅前ロータリーの整備費として約20億円を、パークのゲートウェイ建設費および来客用バスターミナルの改修整備費に約26億円を投資した。

テーマパークや商業施設だけでなく、街路樹、舗道、信号や交通標識、駅舎と駅前ロータリーといった公共に属する部分まで、ディズニー的に整備されているわけだ。東京ディズニーリゾート(TDR)は、浦安市内にありながら、一種の自治区のごとき様相を呈している。

浦安市地域防災計画

東日本大震災発生の際には、オリエンタルランドのキャスト(従業員)たちによるゲスト(客)のケアの見事さが美談として語られた。
東京ディズニーリゾートの膨大な来場客の安全をいかに確保するかは防災上の課題だが、「浦安市地域防災計画(震災編)」(2006年度改定)の第19節帰宅困難者対策には、次のような項目がある。
http://www.city.urayasu.chiba.jp/menu1172.html

2.TDR対策
 地震が発生した場合、東京ディズニーリゾートの防災対策は、(株)オリエンタルランドの防災計画により実施する。
 浦安市では、支援窓口を設置し、東京ディズニーリゾートの被害状況や帰宅困難者の発生状況を把握し、支援要請に基づいて傷病者に対する救護のため医療救護班の派遣などを行う。
 また、市外からの安否確認など災害対策本部に寄せられる問い合わせにも対応する。

対策の主体はオリエンタルランドであり、市はそれを支援する立場。この防災計画の記述を読んだ時、東京ディズニーリゾートは自治区的な場所だという印象を深めた。
「浦安市地域防災計画」には風水害等編・大規模事故編(2008年度改定)もあるが、そちらにも上と同じ記述がある。
http://www.city.urayasu.chiba.jp/menu9085.html
一方、オリエンタルランドの警護・救護・防災については、ここに書かれている。
http://www.olc.co.jp/csr/safety/others.html


東京ディズニーリゾートのテーマパークや施設は、震災の被害をほとんど受けなかった。周辺の道路、歩道は液状化したものの、それらもリゾートに近接した部分の修復は進んだ。客足は急速に回復した後、好調を維持して過去最高益を上げている。
しかし、舞浜駅のロータリーの歩道は、液状化被害で波打ちコンクリートタイルが破損したあとをアスファルトで応急的に固めただけの状態が続いており、まだ本格的な修復はされていない。地元の路線バスを使う時、乗降などで足元に気をつけなければならない。早期の改善が望まれる。