小説・写楽 10 2023年12月31日 東洲斎写楽 山東京伝 蔦屋重三郎 都伝内 磯田湖龍斎 浮世絵 極め (承前) 人づてに聞いた所では、裏店にくすぶってはいるものの、気は確かで筆も棄てた訳ではないらしい。都伝内はその時、何も深く考えず適当に歌舞伎恒例の演題と、思い付く役者連中の配役を一通り書き出し、磯田湖龍斎に届け、香典ではなく画料だといって五十両を奮発した。それが、5月の曽我祭りの摺り物に使える、という事らしい。 「なるほどね… 続きを読むread more
古本を売る青果店の夢 2023年12月31日 古本 青果 夢 始めて訪れた街並みは整った色調の石壁造りの建物が並び、歴史を感じさせる雰囲気に包まれていた。同行者の一人が、 あれは、日本人が経営している店らしい と言うので、道路の向こう側にある二階建ての店舗を眺めてみると、オレンジ、バナナ、ミカン、グレープフルーツなどの果物類が階段の殆どを埋め尽くすほど飾ってあり、店の左半分は黄色、いや黄金… 続きを読むread more
小説・写楽 9 湖龍斎からの書面 2023年12月30日 東洲斎写楽 磯田湖龍斎 山東京伝 蔦屋重三郎 都伝内 八丁堀 歌舞伎 (承前) 30枚近い下絵を部屋中に広げ、膳も取り払った座敷の中央に座り込んだ山東京伝が、ため息混じりに呟いた。 「へーっ、これが湖龍斎の手とはねぇ、それに、まだお江戸にいたとは知らなかった、 もう、随分以前に上方へ帰ったもんだと思っていたよ」 「薬研堀に居たんじゃあなかったかね、あの人は」 「流石に蔦屋の旦… 続きを読むread more