私がカバの歴史について興味を持ったのは、偶然長崎バイオパークのカバの動画を見たのがきっかけである。バイオパークで飼われているカバ達の血縁関係や出身などを調べるうちに、芋づる式に他の動物園のカバについても知りたいと思うようになった。しかし、日本のカバの歴史は想像以上に深い「沼」だった。ここで紹介するのは、戦後日本の動物園で活躍したカバ達の驚くべき歴史の一部である。 【序章】 戦前・戦中のカバ カバはサハラ砂漠以南のアフリカに生息するカバ科の哺乳類である。体長3.3~4.6mほどの草食動物であり、水辺で暮らしている。皮膚は乾燥に弱く、「血の汗」とも呼ばれるピンク色の体液を出して紫外線などから身を守っている。厚い皮下脂肪のおかげで得られる浮力によって、長時間水の中で生活することができる。(カバ科には、カバの他に、コビトカバという種もあるが、本記事ではカバのみを取り上げることとする。) そんなカバ