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2010/09/06

北海道のDV対策・断想

函館と札幌を対象としたドメスティックバイオレンス対策の現状についての調査を行った。
事前に公表されている資料をあれこれ見て、あらかた分かったつもりでいたが、実際に関係者に会ってインタビューをしてみると、新しい発見や先入観の修正、はたまた先入観が余計に強化されたりと、事前調査ではなかなか実態がつかめないものである。

北海道には、女のスペースおんというNPOが札幌にあり、バイタリティ溢れる代表が活発に活動をしている。その影響からか、北海道内に8カ所の民間団体がシェルターを運営しており、函館ではウィメンズネット函館を訪問調査することが出来た。このほかに共同研究者の一人が室蘭を訪れた。

女のスペースおんの存在と活動は、それこそ全国に知れ渡っているが、函館のNPOもまた道南のDV対策の中心的役割を担っているといっても過言ではない。函館市からいただいた資料によれば、函館市内のDV相談の圧倒的多数を、ウィメンズネット函館が行っており、市の様々な活動でも、その人的資源や人的つながりが不可欠の存在となっている。

その他、今回の調査では医療関係者にもインタビューを試みたが、DVに関する貴重な研究成果を持つ研究者もいた。科研費の研究概要で以下のような研究が公開されている。
夫婦間暴力における夫との離別に関する妻の意思決定プロセスに関する質的研究
夫婦間暴力における夫と離別した女性の健康状態と暴力の長期的影響に関する研究

特に後者の研究によれば、DV被害者が加害者と実質的に別れてから1年間は、PTSDの症状がなかなか現れず、1年後からはPTSDの症状を示す割合が長期間低下しない。DVの心理的影響は長期に及ぶだけでなく、加害者から逃げ出した直後の時期に元気なように見えても実際はまともな心理状態ではなく、まともな意思決定ができる状態でもなく、その意思表示の受け取り方には特段の配慮が必要な状況であることが分かる。

こうした研究成果は、DVからシェルターに移った直後から生活再建が軌道に乗るまでの時期に行われる法的手続において、被害者の外見にとらわれずに対応方法を工夫しなければならないことを示唆している。

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コメント

恐い考えの団体ですね。妻が夫と復縁したいと言っても、意思能力がないから無視して復縁させないですか。離婚後の親権者決定に、子供の意見を聞くと子供のトラウマになるから、子供の意向は無視しろという人たちと同じ傾向ですね。

自ら決定して不幸になる方が、決定できない不幸に勝ると私は思いますが。どんなに善人の第三者が決定しようが、その第三者はその人の人生を生きる訳ではないのですから。

しかし、ネットの噂の、夫婦仲のことで相談したら、DVの被害者にされて、「本人にDVの自覚がない」「DVのマインドコントロールで分かれようという意識がない」「DVの後遺症で復縁したがる」などと言われて、本人の意思とは無関係に離婚とDV保護の法手続きは進んでいく、というのは、半信半疑でしたが、NPOの役員がそう言われるなら本当なのでしょうね。

本人の意思表示と反対のことを推し進める法手続きに法律家が加担しないことを祈るばかりです。(当然こういう意見は法律家なら考慮済みだとは思いますが。)

実務面で知りたいのは、DV防止法の保護命令が出るDVの立証の程度ですね。緩くすると無実の相手方を容易に社会的に抹殺できますし、きつくすると保護に役立たない。実務はどこら辺ですかね。これもネットでは犯罪ではありませんが「冤罪」が多く主張されています。

投稿: こんにちは | 2010/09/08 01:15

随分先走って読んで下さってますが、本人の意思を無視して手続を進めろと言っている人はいないと思いますし、このエントリもそういうことを言っているわけではありません。

素人目には気丈に見える被害者が、実はそうではないこともあり得るという認識をした上で、その真意を確かめないと対応を誤ることになりかねないと言っているわけです。

投稿: 町村 | 2010/09/08 09:47

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