本日の作業は、p-adic弦理論における散乱振幅の構造を再確認し、通常の弦理論(Archimedeanな場合)との対比を整理すること。特に、Veneziano振幅のp-adic版がどのように形式化され、さらにAdelicな統一の枠組みの中で役割を果たすのかを見直す。
通常の弦理論における4点Veneziano振幅は次式で表される(実数体上)
A_∞(s, t) = ∫₀¹ x^(s−1) (1−x)^(t−1) dx = Γ(s) Γ(t) / Γ(s+t)
ここで s, t は Mandelstam 変数。
一方、p-adic版では積分領域・測度が p進解析に置き換えられる。
A_p(s, t) = ∫_{ℚ_p} |x|_p^(s−1) |1−x|_p^(t−1) dx
この結果として、p進弦の振幅はベータ関数のp進類似物として定義される。計算すると、次のように局所ゼータ関数的な形になる。
A_p(s, t) = (1 − p^(−1)) / ((1 − p^(−s))(1 − p^(−t))(1 − p^(−u)))
ただし
u = −s − t
重要なのは、Archimedeanおよびp-adicな振幅がAdelicな整合性を持つこと。
A_∞(s, t) × ∏_p A_p(s, t) = 1
という積公式が成立する(Freund & Witten, 1987)。
これはリーマンゼータ関数のEuler積展開と同型の構造を持ち、数論的側面と弦理論的散乱の間に直接的な接点があることを示す。
p-adic string theoryは「異常な」場として扱われるが、通常の弦理論の有効場の補完的な側面を提供している。
局所場の集合を全て集めた「Adelic統一」によって、物理的振幅が数論的整合性を持つことは、弦理論が単なる連続体モデルではなく「数論幾何的構造」に根ざしている可能性を強く示唆する。
p-adic tachyonの有効作用(非局所ラグランジアン)は、通常の弦理論の非局所場のモデルと形式的に対応しており、近年の非局所的宇宙論モデルやtachyon condensationの研究とも接続可能。
具体的に、p-adic string field theory における非局所作用
S = (1/g²) ∫ dᴰx [ −(1/2) φ · p^(−□/2) φ + (1/(p+1)) φ^(p+1) ]
の安定解を調べる。特に、tachyon vacuum の構造をArchimedeanな場合と比較する。
AdS/CFT対応のp-adic版(Bruhat–Tits木を境界とする幾何)の最新文献を精査する。
1. Bruhat–Tits木を用いたp-adic AdS/CFTの基本計算を整理。
2. tachyon有効作用の安定点を数値的に探索(簡単なPython実装でテスト)。
3. Adelicな視点から「物理的に実在するのはArchimedean世界だが、背後にp進世界が潜在している」という仮説をどう具体化できるか検討する。
p-adic string theoryは長らく「数学的 curiosum」と見なされてきたが、AdS/CFTのp-adicバージョンや非局所場理論としての応用が現代的文脈を与えている。