宇野は音圧戦争の帰結や現状まではわかってると思うよ。彼が根本的におかしいのはそこじゃない。
それを技術で解決したのがYoutubeとかSpotifyとかですね。彼らは音圧が高い曲の音量を下げて、他の曲との音量差を少なくしました。揚げ物使った弁当は弁当箱のサイズを強制的に2/3にするイメージですね。そうして消費者は錯覚に騙されず本当に美味しい弁当を選ぶことができるようになりました。めでたしめでたし。
ここはめでたしめでたしの終点じゃなくて、今も音圧戦争は形を変えて続いている。音圧が高い曲の音量を下げるのを「ラウドネス・ノーマライゼーション」という。配信系プラットフォームはそれぞれノーマライゼーションのアルゴリズム(主にはLUFS、聴感上の音圧を数値化するパラメータ)を定めている。そして音楽エンジニアリング業界は、この制約上限に抵触せずにどうやって聴感上「圧のある」音を出せるか、という一種のハックに向かっている。「測定結果が-14.0LUFSを超える楽曲は強制的に-14.0LUFSまで下げる」ということがわかっているなら、そのアルゴリズムを狙って作ればいい。
君は音圧戦争を生き抜けるか? 音楽ストリーミング時代のラウドネス・ウォー対策 (1/3)
配信時代の音楽制作〜ミックス、マスタリングの傾向と対策 – 今知るべき配信テクニック
音圧戦争から遠く離れてーラウドネスノーマライゼーションの誤解と意義
配信最適化はエンジニアリングやマスタリングだけでなく、基本的なビートの作り方にまで影響しつつあって、これなんかはテクノロジーが音楽を変えるという最新の事例といえるんだけど、それはともかくとして、この話は結局のところ「いまの聴取環境に合わせた、いまの流行り」でしかない。リスナーに目立つように、印象に残るように聴かせる最新のテクニックではあっても、音楽自体の構造が優れているか劣っているかという話とはほとんど関係ない。
ましてポップス=popular musicの一番の評価指標は「どれだけ売れているか」なのだ。現にバンバン売れている楽曲を捕まえてきて、その音圧が今時っぽいかどうかにケチをつける行為には生産性がない。よく繁盛してる飯屋で「店が汚い、食器が野暮だ、なぜこんなに客が入っているのか」と言ってるのに近い。クレーマーがどう言おうが、料理が美味いと思った客が多ければ店は流行る。音楽評論家を名乗るなら、今の技術的トレンドに沿っていない楽曲がなんでこんなに売れているか、という分析に傾注すべきだと思う。
なるほど、勉強になった。有難う。 ちなみにそのラウドネスノーマライゼーション的に鑑みて、YOASOBIの音ってどう?