1890年の弦楽器生徒「べからず集」
- CATEGORY: チェロと音楽
イギリスの弦楽専門誌The Stradのサイトに、創刊当時の1890年に書かれた「弦楽器を習う生徒がしてはいけないこと」(What Pupils Ought Not to Do)という記事が紹介されていて、ものを習うときのあるべき姿勢というのは時を隔てても変わらないものだなあ、と味わい深かったので日本語にしてみました。
1. なまけておいて上達しないのを先生のせいにする。
2. 欠点を直されているのに先を急ぐ。
3. レッスンを休む。
4. レッスン以外の曲で時間をムダにする。
5. 先生を敬わない。
6. どの楽譜を使うか先生に指図する。
7. 楽譜を汚す。
8. 不当に安いレッスン料でいいレッスンを期待する。
9. じぶんのせいでキャンセルになったレッスンの料金を値切る。
10. うぬぼれたり他の生徒をねたんだりする。
11. 古くて価値のない教本を先生に指定する。
12. 全力を尽くさずに上達を期待する。
13. 格好つけるだけのために音楽を学ぶ。
14. 良いアドバイスを聞くことを拒む。
15. 心や体が疲れているときに練習する。
16. まだ習うことがあるのに人前で弾く。
17. 困難に当たったとき、私にはムリです、と言う。
18. できないのを楽器のせいにする。
19. 自分の好みで勝手に楽譜を書き換える。
20. 才能にすぐれた人と同じだけの上達を期待する。
21. 先生に感謝しない。
22. 和声や音楽史を勉強しない。
23. 音楽雑誌や音楽関係の本を読まない。
24. 自分の出来に満足する。
25. 中途半端なところで満足する。
26. 何も考えずに悪いクセを身につける。
27. 正しいフィンガリングやポジションに無頓着になる。
28. 何の感情も込めずに弾いたり歌ったりする。
29. 定期的な練習時間なしに上達を期待する。
30. 拍を数えずに弾こうとする。
[原文]
多少、厳格すぎる物言いが今の時代にそぐわない気がしますが、それは「べからず集」的なまとめかたのせいかと思われ、肯定的な表現に直せば、多少受け止めやすいかも知れません。
時代の違いを嗅ぎ取るとしたら、11.の「古くて価値のない教本…」というあたりで、この頃まだ弦楽器の奏法や教え方が(もしかしたら出版界も)革新の途上にあって、次々と最新のいい教本が出ていたのかも知れないとちょっと思いました。何しろ1890年というと、ブラームスもドボルザークもまだ生きているし、サン=サーンスはまだ働き盛り、チェロで言うとパブロ・カザルス少年がそろそろバルセロナの楽譜店でバッハ無伴奏チェロ組曲の楽譜を見つけたか、という頃ですからね…
逆に、ここにはない、21世紀ならではの「べからず」を1つ書き加えるとしたら
「インターネットで仕入れた中途半端な知識で知ったかぶりしない」
というあたりではないかと(自戒もこめて)思いますがどうでしょう?
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