善福寺手帳

ぜんぷくじてちょう

「銀河鉄道の父」でチェロ

宮沢賢治と父との関係を描いた映画「銀河鉄道の父」が今年5月に公開されるそうで、この中で宮沢賢治を演じる菅田将暉さんが実際にチェロを弾いているらしいです。

この映画は、宮沢賢治と父・政次郎との関係を描いて2018年に直木賞を受賞した同名の小説(門井慶喜・著)の映画化で、 父・政次郎役で役所広司が主演。他に賢治の妹・トシ役に森七菜、祖父・喜助役に田中泯など。

この予告編が、きょう21日公開されたのですが、このことを伝える朝の情報番組では、菅田将暉さんが実際にチェロで宮沢賢治作の「星めぐりの歌」を演奏しているメイキング映像が映りました。 左手の指を開いてしっかり音が取れていたことにちょっと驚きました。 思えば菅田将暉さんはミュージシャンとしての顔もあり、ギターが得意なはずですから、チェロで音を取れるようになるのも速かったことでしょう。

菅田さんは、チェロの響きに「ヒーリング効果がある」とコメントしていて、これはまさにあの「セロ弾きのゴーシュ」に出てくる動物たちの感覚を実感したということでしょう。

以下がきょう公開された予告編。

[追記] 公開された「星めぐりの歌」のシーン。

エキストラ本番

230129.jpg 日曜日、エキストラ参加のオーケストラの演奏会本番。

ウェーバー「オベロン」序曲、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」、チャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」というプログラム。

このモーツァルトのシンプルさとチャイコフスキーの複雑さの“落差”が、練習していて大いに戸惑ったところだった。 この曲順ならいいが、日によって都合でチャイコフスキー→モーツァルトの順で練習したりすると、 音量にしろ弾きかたにしろ切り替えが難しく、なにかガサガサとした荒っぽいモーツァルトになってしまうような気がした。

チャイコフスキーの交響曲第3番は今回初めて知ったが、あのピアノ協奏曲第1番やバレエ音楽「白鳥の湖」と同時期に書いたとあって、1楽章の華やかさ、2,3楽章の美しさ、終楽章の勇壮さ...すでにチャイコフスキーの魅力が満載の曲だと感じられて楽しかった。

どの曲も最後に盛り上がる曲だったこともあってか、前回このオケでやったブラームスの3番のようにしっとりと終わる曲のときとは違って、聴衆の方たちの拍手にも熱を感じた。アンコールはチャイコフスキーの4楽章スケルツォの一部をもう一度。

本来なら本番が終わってメンバーの方たちと乾杯したかったところ、この日は夜、地元に戻って所属オケで新曲の初合わせ。 本番のあった神奈川のホールからチェロと衣装を持って移動して、練習をこなすのはちょっと大変だった。

遅くなってチェロを始めて、オーケストラの中で弾けるようになり、このような若くて上手なオーケストラにも当てにしてもらっているのは大変ありがたいし大きな充実感も感じているのだが、こんなことがあと何年できるだろう?という思いもするのだった。

「ラブカは静かに弓を持つ」PV

昨年5月に発刊され、音楽教室のチェロレッスンが題材になった小説「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著、集英社)のプロモーションビデオがYouTubeにアップされていました。 バッハの無伴奏組曲第1番プレリュードを演奏しているのは鈴木皓矢さん。 著者の安壇美緒さんのコメントも。

この小説については昨年7月に読んだときに感想を書きました。

その後の動きとしては昨年10月、JASRACとヤマハなど音楽教室側が争っていた訴訟の最高裁判決があり、教師の演奏は演奏権の対象となり、音楽教室に著作権使用料の支払い義務が生じる(生徒の演奏については生じない)という判決で決着しました[朝日22.10.24]。この小説にも描かれた「スパイ」活動が結果的に実を結んだかたちでしょうか。

いっぽうこの小説は先日、本屋大賞2023のノミネート10作品に入ったそう(発表は4月)。まだまだこの本を手にとってみる人は増えることでしょう。

マイスキーが自分のものまねをシェア

新年にあたり、74歳のチェロの巨匠ミッシャ・マイスキーが、2Cellosのステパン・ハウザーがマイスキーをはじめ有名チェリストたちのものまねをした動画を自身のフェースブックにシェアしていました。

これはステパン・ハウザーが 2 Cellosとしてデビューする3年前の2008年、YouTubeに投稿したもので[そのときの記事]、マイスキー、ロストロポーヴィチ、ヨーヨー・マ、カザルス、デュプレなど巨匠たちの演奏をものまねして、当時プロ・アマ問わずチェリストたちのあいだで大評判になりました。

ただ当時、古いレコードのように音程が揺らぐカザルスのバッハ(組曲3番サラバンド)には「失礼だ」と怒る人がいましたし、 プロのチェリストのかたに聞いた話では、よく主要コンクールで審査員をつとめていたナタリア・グートマン先生(1942-)は、 自身の演奏(ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番冒頭)のものまねに激怒し、それでステパン・ハウザーはコンクールに出にくくなった...ということもあったようです。もしかしたらそれがステパン・ハウザーに後の2Cellosというクラシック以外の道を選ばせたきっかけだったかも知れない...

マイスキーが新年の挨拶にユーモアを込めてこの動画をシェアするということは、自分のものまねを笑って受け入れているということですね。

2023年元旦

230101.jpg 新年明けましておめでとうございます。

近くの神社の参拝の列は朝のうちは短く、まだ人出が戻らないのだろうかと思っていましたが、 暖かくなるにつれて列が長くなってきました。

新年は1月にさっそくオーケストラの本番があり(チャイコフスキーの3番、モーツァルトの35番など)今年もオーケストラ活動が中心になりそうです。

皆様にとっていい年でありますように。