2月16日(木)は、フランスのマクロン政権がゴリ押しで進める原発推進政策、新たな原発建設EPR2についての「公開討論」がトゥールで行われる予定でした。そもそもエネルギー政策の中で原子力をどうするか(フランスはまだ電力の7割近くを原子力に頼っている。稼働中原発のトラブルで原子炉の停止期間が増えているにもかかわらず)、原発を続行すべきなのかという根本的な議論をしないまま、「パンリー原発に新EPRを建設することについて」というEDF主導の「公開討論」が10月末から始まり、2月末まで10回超の討論が各地とオンラインで設定されました。
反原発市民の多くは、これまでの「公開討論」と同じく、政府は最初から原発政策を決めて国会や市民の意見など無視して進めるつもりである、つまり民主主義を装ったまやかしの討論にすぎないと推測し、放射性廃棄物についても抜けているし根本的な議論を避けていると批判しました。しかし、反対派の専門家や市民の意見を公式にアピールする必要もあるため、「討論会場内で批判し、会場の外で批判アクション」を続けました(11月8日のパリの討論の報告参照)。
しかし、今年に入って政府は元老院に原発建設をスピードアップするための法案を提出し、元老院では現存の長期エネルギー計画(原子力を電力の50%に抑える、最高生産量を設定)を無視した修正案が採決されました。また、2月3日にマクロン大統領は「原子力政策理事会Conseil de la politique nucléaire」なるものを招集して原発推進政策に着手する意思(議会も公開討論も無視して)を示したため、「公開討論」を企画・運営する委員会CNDPはさすがに怒り、2月16日以降の2回の討論会は中止され、オンラインでの意見聴取に変わりました。
1月のリールとリヨンの公開討論はすでに、中に入った市民たちが問題を提起して非暴力で抗議し、混乱して中止されていました。また、市民団体として参加していたグリンピースとRéseauSortir du nucléaire(全国脱原発ネットワーク)も、CNDPのコミュニケ以前に政府の公開討論を無視したやり方に抗議して、以後の討論への不参加を表明していました。
さて、11月8日のパリの公開討論に、各地からの反原発団体が集まってアクションを行った際、2月16日のトゥールの公開討論の会場前でより大規模な統一アクションをすることが決まりました。トゥールの公開討論は直前に中止になりましたが、話し合いの結果、予定通りデモとその前の総会、会場前でのアクションを行うことになりました。
総会では、今後の運動の展開、戦略などについて話し合いました(後半は幾つかのテーマごとに分かれて)。よそものは「遠くの隣人3.11」と共同で作った福島事故とその影響についてのチラシと小冊子「福島10年後」を配り、3.11のパリのフクシマ集会、汚染水海洋放棄に対する4.13の連帯アクションアピールについて話しました。よそものの国際ネットワークについても語り、ビュールと寿都町につながりができたこと、国際的な連帯の重要性も強調しました。
それから「公開討論」が予定されていた会場に向けて、町の中心部も通ってデモを行いました。反原発農民のトラクターも1台参加し、楽しくねり歩きました。
長く反原発運動を続ける壮年以上の活動家と若い世代が交わり、それぞれの思いをプラカードや垂れ幕、大型ゴミ袋や花束、仮装など様々に表現しました。
会場前の広場では、各地のグループのスピーチに加え、一人芝居やビュールのグループのコーラス(11月のパリの時と同様、墓地の花で花束を作ってきた)、踊りなど、2時間以上のパフォーマンスが繰り広げられ、道行く人々に呼びかけました。
また、トゥールのグリンピースがLIVEでいくつものグループへのインタビューを行いました。よそものは特に福島事故による環境汚染と健康被害について聞かれました。
この日は、前に会ったことがある人や新たに知り合った人々と午後から夜まで一緒に時を過ごし、有意義な交換とエンパワーメントの機会となりました。
これから3.11フクシマと4.26チェルノブイリがあります。ロワール地方では3月17日ー19日の週末に放射性物質の輸送をテーマにサイクリング、討論会、ドキュメンタリー上映、歌と踊りなどを行うVélo-Castor de Loireがあります。
そして、6月3日にビュールでは大規模なデモ・集会が予定されています。これから夏に向けて、反原発運動の広がりが期待されます。