じゅうしょう‐きんむりょくしょう〔ヂユウシヤウキンムリヨクシヤウ〕【重症筋無力症】
重症筋無力症
重症筋無力症
運動負荷により、容易に筋疲労をきたし、筋力低下をみる病気です。筋力低下は起床時よりも、疲労が蓄積する午後に増悪するなど、日内変動をみるのが特徴的です。
a.病因、病態
末梢神経と筋線維の接合部(神経筋接合部:neuromuscular junction)の異常です。神経からの伝達を、筋肉に伝え場所が神経筋接合部です。筋肉が収縮するときには神経から、筋肉が収縮するように命令する物質が出ます。神経側から出る物質がアセチールコリンという伝達物質で、筋側のアセチールコリン受容体(acetylcholine receptor: AChR)で受け取られます。患者では高率に血清アセチールコリン受容体に対する抗体の上昇があります(自己免疫異常です)。その異常に高くなった抗体はアセチールコリン受容体を抗原と認識し、そこで抗原・抗体反応が起こります。この反応の結果、筋側のアセチールコリン受容体は変性し、数を減らします。すると神経側からきたアセチールコリンに対し、筋側が十分に対応できなくなり、筋力低下となるのです。
本症患者の約50−70%には胸腺腫ないし胸腺過形成がみられます。胸腺摘出により症状が改善することから、胸腺の関与が示唆されています。発育期には胸腺で胸腺由来T細胞が形成され、成熟するとそれは末梢リンパ組織に移行します。しかし本症では胸腺リンパ濾胞形成が著明で、そこでT細胞は末梢リンパ球のB細胞と協力して抗体を産生すると考えられています。
本症には胸腺異常だけでなく、他の自己免疫疾患の合併、血清補体価の低値、抗γグロブリン血症を認めます。治療に免疫抑制剤が有効であることから、自己免疫機構が働いていることには疑いはありません。
b.臨床症状
本症はいくつかの臨床病型に分けられていて、Ossermanの分類が広く使われてきました。現在でも臨床の場ではよく使われています。有病率は10万人あたり約5人とされているので、筋疾患のなかでは比較的頻度が高いといえます。
発症は20−40歳に最も多く、女性:男性は6:4で、女性の方が発症も約10歳ほど早いといわれています。眼症状(眼瞼下垂、複視など)が初発症状として最も多く、半数を占めます。また全身症状が改善しても、眼症状が最後まで残ることが多いのです。全経過をみると眼筋は90%以上の患者で侵されます。眼症状のみの眼筋型(小児に多く、成人では15ー20%)もありますが、経過とともに全身型に移行することもあるので、注意が必要です。
顔面筋が侵されると表情が乏しくなり、頸筋が侵されると首垂れ状となります。全身型では四肢筋の筋力低下で歩行困難、呼吸筋の筋力低下もみるようになります。また球症状(燕下、言語、呼吸障害)を合併したり、これが先行することもあります。これらの症状は安静で改善し、運動、精神的ストレス、感染などで増悪します。
c.診断
日内変動を伴う筋力低下、眼瞼下垂をみたらまず本症を疑います。この病気を疑ったら、まずテンシロンテストを行います。塩化エドロホニウム(アンチレクス)10mgを注射器に入れ、まず2mgを静注し、異常がなければ残りを追加静注します。筋力が数分以内に回復すれば、本症の診断根拠となります。もし2mg静注後コリン作動性反応(副交感神経刺激症状、筋痙攣、脱力)があれば、試験を中止し、症状が強ければ硫酸アトロピン 筋電図では連続電気刺激で、神経筋単位(neuromuscular unit)の振幅漸減(waning現象)をみます。
患者血清中の抗アセチールコリンレセプター抗体陽性率は眼筋型を除き80−90%と高値を示します。抗筋抗体、抗核抗体など免疫不全を示唆する多くの自己免疫抗体が証明されることもまれではありません。胸腺腫、肥大の判定には胸部CT検査が有用です。
d.治療
抗コリンエステラーゼ剤としては効果の長い臭化ピリドスチグミン(メスチノン)がよく使用されます。60mg/日から始めて、300mg/日まで増量可能です。ステロイド治療としてはプレドニゾロン10−20mg/日(成人)隔日投与から開始して、1−2週ごとに5−20mgずつ経過をみながら増量し、最大量60−80mg/日、隔日投与とします。増量中に緩解をみれば、その量を最大量として1−3か月用い、次第に斬減します。
外科的胸腺摘出は以下の状態の時に行われるのが一般的です。
(1)薬物効果が不十分
(2)発症から5年以内で薬物療法に強く抵抗する
(3)胸腺腫がある場合
胸腺腫がなくても、全身型では早期からのステロイド剤投与、胸腺摘出を行い、よい結果が得られています。全ての治療に抵抗する重症例では血漿交換、ステロイドのパルス療法が行われています。
重症筋無力症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 13:38 UTC 版)
重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう、英語: Myasthenia Gravis、略称:MG)とは、アセチルコリンなどの抗体により神経・筋伝達が阻害されるために筋肉の易疲労性や脱力が起こる自己免疫疾患である。
- ^ Eur Neurol. 2013;69(6):344-5. PMID 23549260
- ^ Sieb JP. Myasthenia gravis: an update for the clinician. Clin Exp Immunol 2014;175:408-18.
重症筋無力症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/03 06:56 UTC 版)
詳細は「重症筋無力症」を参照 エクリズマブは重症難治性全身性筋無力症の治療薬として臨床的に意味のある利益をもたらす。重症筋無力症は稀な神経系疾患であり、自己抗体により補体が活性化して神経筋接合部が攻撃される疾患である。第II相臨床試験では14名の患者が登録され、エクリズマブが重症度スコアを偽薬よりも有意に改善し、より速やかに改善することが示された。
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「重症筋無力症」の例文・使い方・用例・文例
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固有名詞の分類
病気の別名 | osteogenesis imperfecta 多発性硬化症 重症筋無力症 necrotizing enterocolitis psychosomatic disease |
脳神経疾患 | レビー小体型認知症 多発性硬化症 重症筋無力症 ベル麻痺 パーキンソン症候群 |
特定疾患 | びまん性汎細気管支炎 多発性硬化症 重症筋無力症 成人スティル病 パーキンソン症候群 |
免疫病 | 血清反応陰性関節炎 多発性硬化症 重症筋無力症 関節リウマチ 成人スティル病 |
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