だい‐せきはん【大赤斑】
大赤斑 Great Red Spot
大赤斑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/27 07:05 UTC 版)
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2014年2月) |
大赤斑(だいせきはん、英: Great Red Spot)とは、木星に存在する高気圧性の巨大な渦である。
概要
地球の地表の望遠鏡からでも観測可能であり、ジョヴァンニ・カッシーニにより1665年に発見された。
大きさは変動があり、大きいときでは 40,000 km × 14,000 km 程度と、おおよそ地球2、3個分の大きさがあったが、21世紀初頭時点では18,000 km × 12,000 km[1] となっている。雲頂高度は周囲よりも8km程度高い。赤道より22°南に位置し[2]、南極から見て反時計回り(西向き)に、周期6日程度で回転している。
大赤斑の渦が、マーブリング(下記参照)の渦が発達してできたものであるのか、台風のようなものであるのか、あるいは下層に何らかの原因が存在しているのかなど、詳しい発生原因・構造は解明されていない。2017年には、大赤斑は巨大な熱源であることが報告された[3]。
構造
木星には、地球でいうところの大循環気流が狭い間隔で吹いており、そのそれぞれにおいて地球でいうところのジェット気流が非常に速い速度と風力でほぼ平行に互い違いの方向に吹いている。これは木星の高速な自転による強力なコリオリの力が影響しているためと見られる。そのような木星大気の中で、大気を構成する物質は絶えず攪拌され、上昇と下降を繰り返している。大赤斑は大循環気流を跨ぐような形で存在しており、大循環気流の境界ではマーブリング様の複雑な模様を描いている。
他にも木星には、多くは無名の白もしくは茶色の楕円も見られ、白い渦は比較的高高度・低温度の雲からなり、茶色の渦は標準的な高度のより暖かい雲で形成される。これらの渦は数時間から数世紀の間持続することがある。
2000年ごろ、大赤斑より小規模の白い嵐が複数個合体しオーバルBAとなった。オーバルBAは2005年末ごろから大赤斑と同様の色調に変化する様子が観測されたが、これは下層の大気が上昇、混合されたためだと推測されている。この「中赤斑」ともいうべき新たな斑点は、大赤斑のやや南に2008年現在も安定して存在し続けている。
観測史
大赤斑の左側には色鮮やかな雲が複雑に絡み合い、波動現象を示している。大赤斑の下に見える白い楕円渦が地球の半径に相当するスケールである。ある程度望遠鏡の精度が向上した1665年に発見された。ただし、1664年5月にはイギリスの天文学者であるロバート・フックにより、木星の表面に渦が存在することが既に確認されている(なお、フックが観測した渦は赤道の北部に位置しており、南に位置する現在の大赤斑とは異なると考えられている)。
1665年から1713年まで、および、1831年から現在までの間は断続的に観測されている。しかし、1714年から1830年までの間は観測されていない。1665年に観測された大赤斑と1831年以降の大赤斑は同一の緯度帯に位置することから、かつては350年以上継続した同一の永続斑と考えられていたが、その後の研究により、両者は別物である可能性が高くなっている。Agustín Sánchez-Lavegaらのグループが過去の観測記録や木星大気のシミュレーションから分析を行ったところ、そのサイズや動きから、1713年以前に観測されたものとは別物である可能性が高かったという。木星の他の渦についても誕生直後は細長い楕円形であることから、19世紀に観測された横長の大赤斑は誕生直後の形状であることが示唆されている。[4]
縮小
当初は、発見以来少なくとも350年以上にわたり一定の形状を維持しつづけたと考えられたことや、あまりにも巨大な力学的エネルギーを持っているため、今後も存在しつづけるものと見られていたが、20世紀後半から21世紀初頭の観測により年々大きさが縮小していることが明らかになっており[5]、2014年5月15日、大赤斑が1930年代以降の観測史上最も縮小していることがアメリカ航空宇宙局から発表された。
19世紀後半にはその直径は約4万kmと地球が横に3つ並ぶ大きさであったが、1979年、1980年のボイジャーによる観測では約2万3300kmになり、2014年時点のハッブル宇宙望遠鏡による撮影では約1万6500kmにまで縮小していた。既に2012年初めには、アマチュア天文家の観測によって縮小ペースが約930km/年のペースまで加速しており、形状が楕円から真円に近いものに変化していることが判明していた。
NASAの天文学者は、非常に小さい渦が大赤斑に巻き込まれたことで、内部構造に変化が発生した可能性を指摘している[6][7]。2015年時点ではさらに240kmほど縮小している。縮小のペースは落ち着いてきたものの、依然として縮小傾向にあり[8]、21世紀の中頃には消滅すると考えられている[9]。
関連項目
脚注
- ^ 伊賀祐一. “天文ガイド 惑星の近況 2003年7月号 (No.40)”. 誠文堂新光社 月刊天文ガイド. 2016年5月26日閲覧。
- ^ “大辞林 第三版の解説”. コトバンク. 2018年3月11日閲覧。
- ^ 木星の「赤い目」は巨大な熱源だった 米研究 2017年8月30日閲覧
- ^ “木星の大赤斑の形成は約190年前か 17〜18世紀に観測された巨大斑点とは別物らしい”. エキサイトニュース (2024年6月20日). 2024年6月27日閲覧。
- ^ “Jupiter's Great Red Spot is Shrinking”. NASA. (15 May 2014) 2018年2月20日閲覧。.
- ^ "NASA's Hubble Shows Jupiter's Great Red Spot is Smaller than Ever Measured" (Press release). NASA. 15 May 2014. 2014年5月19日閲覧。
- ^ “木星の「大赤斑」が縮小、19世紀後半の3分の1に”. ロイター. (2014年5月16日) 2014年5月16日閲覧。
- ^ “木星の大赤斑がさらに縮小、形・色にも変化”. アストロアーツ (2015年10月20日). 2016年5月26日閲覧。
- ^ “Jupiter's Great Red Spot could soon disappear”. unexplainedmysteries. (20 February 2018) 2018年2月21日閲覧。.
大赤斑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 06:20 UTC 版)
詳細は「大赤斑」を参照 大赤斑は、南緯22°の地点にある永続性の高気圧嵐である。2012年現在で、地上での観測から、発生してから最低でも182年、恐らくは347年になる。この嵐は地球上の望遠鏡でも観測できるほど大きく、ハインリッヒ・シュワーベによって1831年に初めて記述されたが、恐らくはもっと早く、1665年から1713年の間にジョヴァンニ・カッシーニによって観測されている。1878年にCarr Walter Pritchettが開始して以来、継続的に観測、描写されている。 大赤斑は、約6地球日(14木星日)の周期で反時計回りに回転している。直径は東西方向に24-40,000km、南北方向に12-14,000kmであり、地球が2、3個入る大きさである。2004年初め、大赤斑の経度方向の幅は、1世紀前の40,000kmと比べて約半分になった。現在の減少速度からすると、2040年までには円に近くなるはずだが、近隣のジェットによる歪み効果のため、円になることはないと考えられている。大赤斑がいつまで続くかや、大赤斑の形の変化が通常の変動の結果であるのかは分かっていない。 カリフォルニア大学バークレー校で1996年から2006年まで行われた観測によると、この間に大赤斑の直径は、その長軸に沿って約15%小さくなった。研究チームの一員であったXylar Asay-Davisはこの研究を総括し、大赤斑は消失しないと述べた。 赤外線データによって、大赤斑は周りの雲よりも冷たく、高い高度にあることが示唆された。大赤斑の雲頂は、周りの雲よりも約8km上にあると考えられている。さらに、大気の追跡により、大赤斑の反時計回りの回転は1966年まで遡り、ボイジャーのフライバイの際の映像より確認された。大赤斑は、空間的には、南端を東向きの穏やかなジェット、北端を西向きの非常に強力なジェットに囲まれている。周りのジェットの速度は約432km/hにもなるものの、内部にはほとんど流れはない。大赤斑の回転周期は、恐らく大きさの減少に伴って、時間を経る毎に減少している。2010年、これまでにない解像度で遠赤外線写真が撮影され、中央の最も赤い領域は周囲よりも3から4K暖かいことが発見された。暖かい気団は、気圧200から500ミリバールの範囲の対流圏上層に位置する。この暖かい中心領域は、恐らくは空気の弱い沈降のため、ゆっくりと時計回りに回転している。 大赤斑の緯度は、観測記録が残っている期間を通じて安定しており、約1°しか変化していない。しかし、経度は常に変化している。木星は均一に自転していないため、天文学者は経度を定めるため、3つの異なる系を定義した。系IIは、緯度10°を超える部分で使われ、9h 55m 42sの大赤斑の平均回転速度を元にしたものである。これに関わらず、大赤斑は19世紀初頭から、少なくとも惑星を10周している。この速度は年によって大きく異なり、南赤道ベルトの明るさ及び南熱帯擾乱の有無と関連している。 大赤斑の赤色の起源については、正確に分かっていない。実験室内での実験によって指示される理論によると、この色は複雑な有機分子、赤リン、その他の硫黄化合物によるものであると説明される。大赤斑の色相は、れんが色から淡いサーモン色までかなり変化する。最も赤い中心領域は、周りよりも若干暖かく、これは大赤斑の色が環境因子に影響されることの初めての証拠となった。大赤斑は、可視光領域で見えなくなることもあり、南赤道ベルト(SEB)に空いた隙間、赤斑孔となる。大赤斑の可視性はSEBの色相と関連しているように見え、ベルトが明るい白色の時は大赤斑は暗くなり、ベルトが暗い時は大赤斑は明るくなる傾向がある。大赤斑の明暗が変化する周期は不規則であり、1997年までの50年間で、1961年から1966年、1968年から1975年、1989年から1990年、1992年から1993年の期間に最も暗くなった。 大赤斑と似たものに、2000年にカッシーニによって木星の北極付近に観測された大暗斑がある。また海王星の大気の中にも大暗斑と呼ばれる構造がある。後者は1989年にボイジャー2号によって撮影され、嵐というよりは大気の穴であると考えられている。1994年には存在しなくなったが、似たような小さな穴がより北側に表れた。
※この「大赤斑」の解説は、「木星の大気」の解説の一部です。
「大赤斑」を含む「木星の大気」の記事については、「木星の大気」の概要を参照ください。
大赤斑と同じ種類の言葉
- 大赤斑のページへのリンク