2018-07-09(Mon)
よく国を治めるものは まず水を治める
春秋時代に斉の管仲という宰相が桓公に箴言したとか言われていることわざ。
この数日間、とくに西日本に住んでいる人たちはこれをひしひしと感じているはずです。
このたびの西日本大水害は、まだ全容がつかめていません。
NHKをはじめとしたマスコミの報道も、取材に入ることのできた場所の映像を繰り返し流し、同時多発でおきている水害の様相はまったく伝えることはできていません。
大手マスコミといえども、津々浦々にくまなく特派員を置いているわけではないので、ある程度はしかたのないことでしょう。
やはり問題なのは、規模の大小はあれど、毎年毎年くりかえし自然災害に見舞われているこの国の行政が、いつもいつも後手後手に回るということです。
現場の役場や消防や警察の職員は、もちろんギリギリの頑張りをしてくれています。
しかし、大災害になれば、そんな現場の必死の頑張りだけではどうにもならない、ということこそが、これまでの大災害の教訓ではないでしょうか。
とくに、今回のような範囲で見るならば東日本大震災を上回るような広域災害については、即座に国が乗りだして情報収集と支援のリソースを配置しなくては、助かる命も助からないということがおきてしまいます。
そもそも、防災担当大臣という名称の大臣が禄を食んでおり、国土強靱化を叫ぶ首相が政権を握っているのです。
いくら50年に一度の大雨といえども、ここまでの被害になってしまった責任ということが問われるでしょう。
50年ごとにこんな被害が起きて良い訳がありません。
■
まず、大雨が予想された時点から、実際の対策にはいるまでの問題です。
およそのことしか分かりませんが、気象庁と自治体レベルでは、それなりに早いめの対応をとっていたようです。
5日(木)午後2時の段階で「記録的な大雨になる可能性がある」という異例の会見を、気象庁は東京と大阪で同時に開催しました。
記録的大雨で気象庁が異例の会見 警戒すべき地域は
2018/07/05 MBSニュース
少なくとも、行政に関してはここが災害対策のスタートラインです。
政府関係者も、さっそく災害対策本部の準備にかかるかと思われたその夜、驚くことがおきました。
7人の死刑執行にサインしたばかりの上川法務大臣がニコニコと出席しているのもカルトなみの怖さですが、気象庁の異例の発表を知らないはずのない安倍首相や小野寺防衛大臣が、災害対策なんかどこ吹く風で総裁選対策で楽しく酒飲んで騒いでいたのです。
さらに、本当に被害が顕在化して特別警報が続々と出された6日になっても災害対策本部は作らず、もう多くの街が水没してしまった7日になってから、ようやく非常災害対策本部という首相がトップでは”ない”組織を作りました。
しかも、完全に二日酔いの状態でしたから、6日夜も首相公邸でしこたま飲んでいたようです。
挙げ句の果てに、対策会議をわずか15分やっただけで、昼前にさっさと自邸に帰ってしまったのです。
これは本当に怖いことです。
なにが怖いかと言えば、この国の指導者は 「災害を防ごう」という気持ちがない と言うことだからです。
災害対策は、災害が起きて、ひどいことになって、ニュースでさんざん騒がれてからおもむろに、エラそうに、いかにもやってやってるぞという態度でやることであって、被害が出る前から準備するようなことじゃない と心から思っているということです。
本心ではなくても、災害時には対策しているポーズをとらなくちゃいけない、と思っていれば、いくらなんでもあの気象庁の会見の後に楽しい飲み会はやらないでしょう。
彼らは、安倍さん本人を筆頭に、とんでもない被害が出るまでは、対策なんてできないよ と本気でフツーに考えているのです。
被害が確定してから激甚災害に指定してやれば、被災者には感謝されるんだから、なんか文句ある?ということです。
ちなみに、激甚災害に指定してもらって補助金を受け取るためには、地元の自治体は膨大な書類を用意する必要があります。
激甚災害指定が、本来なら地元民の支援に向けるべきマンパワーを奪うものだと言うことは意外と知られていません。
それはともかく、自然災害は人気取りのチャンス くらいにしか思っていない人たちが指導者であることは、日本に暮らす上で恐怖です。
■
さらに、あの国土強靱化はどこいっちゃったの? ということです。
2014年に大々的に始まった国土強靱化計画の大きな項目として ちゃんと「異常気象等による市街地等の浸水」 があります。
5年以上もの年月をかけ、その間には昨年の九州北部豪雨による大災害を防げなかったという負の経験もふまえつつ、いったい何をしていたのでしょうか。
たしかに、ハザードマップを作ったり、自治体が避難指示などを出すためのシステムをつくったり、ソフト面ではある程度のことはしていたようです。ただ、そのあたりの実務はすべて自治体がやっていることであって、大層に国土強靱化とぶち上げたにしてはお粗末です。
今回の大規模な水没は、河川の堤防決壊で起きています。
全国の堤防そのものを、文字通り強靱化していれば、被害程度は桁違いに小さくなっていたはずです。
そうしたカネの掛かることには手を付けてこなかったのが、国土強靱化計画だったようです。
あんなにカネを摺りまくったアベノミクスなのに、一番役に立ちそうな防災対策には、チョロッとしか使わなかったんですね。
発表されている一覧表を見ても、「成果」の欄には推進とか策定とかばっか書いてあって、国土強靱化というイメージとはずいぶん違うなあと感じるでしょう。
アメリカ様から兵器を買いまくったり、公的資金で株を買いあさったりする代わりに、本気でカネを使って国土強靱化をしていれば、雇用も生まれるうえに災害の被害は確実に減っていたはずなんです。
このことは、野党のみならず、圧倒的多数の地方自治体首長と膨大な中小ゼネコンをかかえる地方の自民党も、党中央を激しく突き上げなければならないはずです。
■
とにもかくにも、今もまだ行方不明の人が100人近くいます。
膨大な家屋が住めなくなっています。
インフラもズタズタです。
これを個人や地方自治体の自己責任にしてしまっては、自然災害の国である日本は成り立ちません。
たとえそれが安倍晋三の総裁選に向けたパフォーマンスだとしても、とにかく最善の策をとらせなくてはなりません。
私は、政治家がちょっとくらい汚職をしたくらいでは、さほど腹は立ちません。
モリカケのような極端なことをやるからトンデモナイ ということになりますが、少しばかりの身内びいきをやったくらいは、政治家失格の本筋ではないと思っています。
本当に怖いのは、政治家に「国民を守ろう」という気持ちがない ということです。
守り方が正しいか間違っているかは、この際おいといて、そもそもそういう気持ちがない。
これが、政治家として最低最悪です。
そして、そういう政治家が強力な政権を握って離さないのは、この世の地獄です。
かつて、「国体」を護るために国民を道具にした政治家がこの国を地獄にしました。
いま、自らの権力を「国体」と考える政治家が、同じことを繰り返そうとしています。
直前に十分な警告があったにもかかわらず、西日本大水害を防ぐことはできませんでした。
すくなくとも、この国の政府は、酒は飲んでも対策は何もしませんでした。
せめて、これからの救援と復旧のために、できる限りのことを、具体的に要求していかなくてはなりません。
そしてもし、それにも言を左右にして逃げ回るようならば、命を守るための最後の手段は、政権交代です。
そのためにも、野党はバラバラのテイタラクを脱して、一致して復興のための手段を提示すべきときです。
民主党政権が崩壊した原因は 公約違反の消費増税と、災害に際しての無策と隠ぺい=「ただちに影響はない」だったと私は思っています。
民主党の流れをくむ野党は、その負の経験を深く反省し、心を入れ替えて国民を守る主体となっていただきたいと願っています。
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この数日間、とくに西日本に住んでいる人たちはこれをひしひしと感じているはずです。
このたびの西日本大水害は、まだ全容がつかめていません。
NHKをはじめとしたマスコミの報道も、取材に入ることのできた場所の映像を繰り返し流し、同時多発でおきている水害の様相はまったく伝えることはできていません。
大手マスコミといえども、津々浦々にくまなく特派員を置いているわけではないので、ある程度はしかたのないことでしょう。
やはり問題なのは、規模の大小はあれど、毎年毎年くりかえし自然災害に見舞われているこの国の行政が、いつもいつも後手後手に回るということです。
現場の役場や消防や警察の職員は、もちろんギリギリの頑張りをしてくれています。
しかし、大災害になれば、そんな現場の必死の頑張りだけではどうにもならない、ということこそが、これまでの大災害の教訓ではないでしょうか。
とくに、今回のような範囲で見るならば東日本大震災を上回るような広域災害については、即座に国が乗りだして情報収集と支援のリソースを配置しなくては、助かる命も助からないということがおきてしまいます。
そもそも、防災担当大臣という名称の大臣が禄を食んでおり、国土強靱化を叫ぶ首相が政権を握っているのです。
いくら50年に一度の大雨といえども、ここまでの被害になってしまった責任ということが問われるでしょう。
50年ごとにこんな被害が起きて良い訳がありません。
■
まず、大雨が予想された時点から、実際の対策にはいるまでの問題です。
およそのことしか分かりませんが、気象庁と自治体レベルでは、それなりに早いめの対応をとっていたようです。
5日(木)午後2時の段階で「記録的な大雨になる可能性がある」という異例の会見を、気象庁は東京と大阪で同時に開催しました。
記録的大雨で気象庁が異例の会見 警戒すべき地域は
2018/07/05 MBSニュース
少なくとも、行政に関してはここが災害対策のスタートラインです。
政府関係者も、さっそく災害対策本部の準備にかかるかと思われたその夜、驚くことがおきました。
7人の死刑執行にサインしたばかりの上川法務大臣がニコニコと出席しているのもカルトなみの怖さですが、気象庁の異例の発表を知らないはずのない安倍首相や小野寺防衛大臣が、災害対策なんかどこ吹く風で総裁選対策で楽しく酒飲んで騒いでいたのです。
さらに、本当に被害が顕在化して特別警報が続々と出された6日になっても災害対策本部は作らず、もう多くの街が水没してしまった7日になってから、ようやく非常災害対策本部という首相がトップでは”ない”組織を作りました。
しかも、完全に二日酔いの状態でしたから、6日夜も首相公邸でしこたま飲んでいたようです。
挙げ句の果てに、対策会議をわずか15分やっただけで、昼前にさっさと自邸に帰ってしまったのです。
これは本当に怖いことです。
なにが怖いかと言えば、この国の指導者は 「災害を防ごう」という気持ちがない と言うことだからです。
災害対策は、災害が起きて、ひどいことになって、ニュースでさんざん騒がれてからおもむろに、エラそうに、いかにもやってやってるぞという態度でやることであって、被害が出る前から準備するようなことじゃない と心から思っているということです。
本心ではなくても、災害時には対策しているポーズをとらなくちゃいけない、と思っていれば、いくらなんでもあの気象庁の会見の後に楽しい飲み会はやらないでしょう。
彼らは、安倍さん本人を筆頭に、とんでもない被害が出るまでは、対策なんてできないよ と本気でフツーに考えているのです。
被害が確定してから激甚災害に指定してやれば、被災者には感謝されるんだから、なんか文句ある?ということです。
ちなみに、激甚災害に指定してもらって補助金を受け取るためには、地元の自治体は膨大な書類を用意する必要があります。
激甚災害指定が、本来なら地元民の支援に向けるべきマンパワーを奪うものだと言うことは意外と知られていません。
それはともかく、自然災害は人気取りのチャンス くらいにしか思っていない人たちが指導者であることは、日本に暮らす上で恐怖です。
■
さらに、あの国土強靱化はどこいっちゃったの? ということです。
2014年に大々的に始まった国土強靱化計画の大きな項目として ちゃんと「異常気象等による市街地等の浸水」 があります。
5年以上もの年月をかけ、その間には昨年の九州北部豪雨による大災害を防げなかったという負の経験もふまえつつ、いったい何をしていたのでしょうか。
たしかに、ハザードマップを作ったり、自治体が避難指示などを出すためのシステムをつくったり、ソフト面ではある程度のことはしていたようです。ただ、そのあたりの実務はすべて自治体がやっていることであって、大層に国土強靱化とぶち上げたにしてはお粗末です。
今回の大規模な水没は、河川の堤防決壊で起きています。
全国の堤防そのものを、文字通り強靱化していれば、被害程度は桁違いに小さくなっていたはずです。
そうしたカネの掛かることには手を付けてこなかったのが、国土強靱化計画だったようです。
あんなにカネを摺りまくったアベノミクスなのに、一番役に立ちそうな防災対策には、チョロッとしか使わなかったんですね。
発表されている一覧表を見ても、「成果」の欄には推進とか策定とかばっか書いてあって、国土強靱化というイメージとはずいぶん違うなあと感じるでしょう。
アメリカ様から兵器を買いまくったり、公的資金で株を買いあさったりする代わりに、本気でカネを使って国土強靱化をしていれば、雇用も生まれるうえに災害の被害は確実に減っていたはずなんです。
このことは、野党のみならず、圧倒的多数の地方自治体首長と膨大な中小ゼネコンをかかえる地方の自民党も、党中央を激しく突き上げなければならないはずです。
■
とにもかくにも、今もまだ行方不明の人が100人近くいます。
膨大な家屋が住めなくなっています。
インフラもズタズタです。
これを個人や地方自治体の自己責任にしてしまっては、自然災害の国である日本は成り立ちません。
たとえそれが安倍晋三の総裁選に向けたパフォーマンスだとしても、とにかく最善の策をとらせなくてはなりません。
私は、政治家がちょっとくらい汚職をしたくらいでは、さほど腹は立ちません。
モリカケのような極端なことをやるからトンデモナイ ということになりますが、少しばかりの身内びいきをやったくらいは、政治家失格の本筋ではないと思っています。
本当に怖いのは、政治家に「国民を守ろう」という気持ちがない ということです。
守り方が正しいか間違っているかは、この際おいといて、そもそもそういう気持ちがない。
これが、政治家として最低最悪です。
そして、そういう政治家が強力な政権を握って離さないのは、この世の地獄です。
かつて、「国体」を護るために国民を道具にした政治家がこの国を地獄にしました。
いま、自らの権力を「国体」と考える政治家が、同じことを繰り返そうとしています。
直前に十分な警告があったにもかかわらず、西日本大水害を防ぐことはできませんでした。
すくなくとも、この国の政府は、酒は飲んでも対策は何もしませんでした。
せめて、これからの救援と復旧のために、できる限りのことを、具体的に要求していかなくてはなりません。
そしてもし、それにも言を左右にして逃げ回るようならば、命を守るための最後の手段は、政権交代です。
そのためにも、野党はバラバラのテイタラクを脱して、一致して復興のための手段を提示すべきときです。
民主党政権が崩壊した原因は 公約違反の消費増税と、災害に際しての無策と隠ぺい=「ただちに影響はない」だったと私は思っています。
民主党の流れをくむ野党は、その負の経験を深く反省し、心を入れ替えて国民を守る主体となっていただきたいと願っています。
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