2018-05-19(Sat)
天皇の沖縄メッセージと安倍独裁
昭和天皇の戦争責任を問う人も今上天皇は好きだという声も聞くことが多い。
なるほど、今上天皇は今年3月にも、安倍内閣の冷酷な沖縄に対する仕打ちにあたかも抗議するかのように沖縄を訪問した。
真意は分からないが、安倍晋三はさぞや苦々しく思ったであろう。
しかし、だからといって、昭和天皇が残したあの「メッセージ」を忘れることができない。
そして、あの「メッセージ」こそが、戦後日本の「象徴」なのである。
宮内庁御用掛(通訳)の寺崎英成がGHQ顧問のシーボルトを訪れて語った内容を、シーボルトが記録したものだ。
米国の公文書として残っていたものが公開され、現在は沖縄県公文書館に保管されている。
公式の日本語訳はない。
が、「風のまにまに」というブログがかなり原文に忠実に翻訳してくれている。
→ 昭和天皇の沖縄メッセージ (風のまにまに 2006.12.31)
寺崎を通じて米国に伝えたこの天皇のメッセージのなかで、私がとくに注目したのはここだ
The Emperor further feels that United States military occupation of Okinawa (and such other islands as may be required) should be based upon the fiction of a long-term lease -- 25 to 50 years or more -- with sovereignty retained in Japan.
中でも注目すべきは
occupation of Okinawa should be based upon the fiction of a long-term lease with sovereignty retained in Japan
直訳すれば
沖縄の占領は 日本に主権がある長期の賃貸 という虚構に基づく
ということになる。
沖縄のみならず、戦後の日本をこれほど的確に言い表した言葉はない。
上記のブログでも fiction を擬制と訳しているが、これでは意味が分からない。
ふつうの日本語にすれば「虚構」だ。
「日本に主権があると言う虚構」 に基づいて米国は日本を占領し続ける
これが、戦後日本の根幹である。
では、どうやってこの虚構を日本人に信じさせたのか。
それはまさに憲法であり天皇制であった。
憲法の根幹は、1章:象徴天皇 2章:戦争放棄 3章以降:国民主権 であると言ってさしつかえなかろう。
このすべてが実は「虚構」を信じさせるための仕込みだったということだ。
なかでも、非常にわかりにくい「象徴天皇」の役割は、むき出しの支配者=米国の姿を覆い隠すための「象徴」だったのであり、昭和天皇自らがその役割を自覚していたということだ。
70年前の日本人は、その意味をわかってかわからずか、この「虚構」を受け入れた。
政治家の世界も、従米右翼と従米左翼が、「虚構」の上にバランスを保ちながら55年体制を築いてきた。
■
しかし、徐々に「虚構」を虚構であると知って、自らに権力を握ろうとするものが現れ始める。
田中角栄や小沢一郎など、国民の支持に依拠しようとしたものたちは、強烈な弾圧が襲いかかった。
弾圧のみならず、ともに国民の生活をまもるべき左翼からも集中砲火を浴びることになった。
細々と生きていた戦前回帰の反米極右に依拠しようとした(第1次)安倍政権もまた、突然の政権放棄を余儀なくされた。
ただし、安倍晋三は、この時の経験を無駄にしなかった。
従米の「虚構」を自覚しつつ、しかし時が来るまでは虚構のなかでおとなしく米国のATMを続けることを誓い、再び政権の座につくことができた。
そこから4年目に、トランプという願ってもないご主人様が登場した。
なんと米国から「もうそろそろ虚構はやめたいなあ」というシグナルを発信しているのだ。
「金さえ出せば もう好きなようにやってくれ」 このトランプ主義に安倍晋三は飛びついた。
残念ながら、日本の政治勢力で、このトランプ主義を「好機」としてとらえたのは安倍晋三だけだった。
真の独立にむけて一歩前進できるかもしれない という期待感を抱く「左翼」は皆無だった。
トランプが良いとか悪いとか評論する前に、自ら責任のある日本にとって、日本の政治にとって、日本の主権にとってどうなのか、という発想をした政治家が、もうどうしようもなく最悪の安倍晋三だけだったのだ。
独立国という虚構に隠された植民地である日本。
その自覚を持ち、ほんの少しずつでも独立に向けて進んでいこうという強固な意志がなければ、今の日本では政治家とは言えない。
その意味では 安倍晋三は悪い政治家だが、野党の諸氏は政治家ですらない。
誤解のないように追記しておくと、安倍晋三は極右思想のために政治をやっているのではない。内実は単なる薄汚い利権屋にすぎない。
ただ、それを覆い隠すためには権力が絶対的に必要だと言うことをよく理解しているし、権力を維持するためには情勢をただしく観察し、極右を利用し、非常にうまく立ち回っている ということだ。
今まで、極右が政治の主流に出てこれなかったのは、左翼が強かったからではなく、宗主国の米国が許さなかったからだ。
しかし、米国人の生活が第一であるトランプにとっては、政治的軍事的経済的に米国の脅威にならなければ、極右だろうが金王朝だろうが習近平皇帝だろうが、どうでもいいのだ。
トランプが今の路線で成功をおさめていく限り、日本の極右は野放しになり、植民地であるという自覚すら持てない戦後ボケの左翼は完全に駆逐されてしまうだろう。
極右を非難するのはもちろんだが、まずは、対抗すべき勢力が、なによりも「自分たちのことは自分たちで決める」という当たり前のことを腹をくくらない限り、勝つことはできない。
「なによりも」 というのは これまで絶対視されてきた 護憲 とか 平和 とか 人権 とかよりも 「自分たちで決める」ことを優先すべきだ、という意味だ。
どんなに大事なことでも、「自分たちで決める」ことができなければ、いとも簡単に奪われてしまうからだ。
少しくらい間違っても「自分たちで決める」ことができれば、徐々にいい社会を作っていけるからだ。
これを ひとことで言い表したのが「自立と共生」であり、逆に、自分たちで決めることを蔑ろにしつつ、憲法と平和と人権を守れると信じてきたのが戦後民主主義であり、まさに「虚構」の上に築いた砂楼である。
■
野党が、バラバラにされている現状に甘んじ、安倍独裁を支えているのは、ここに原因がある。
日本の独立が「虚構」であり、自らのことを自ら決めることができない社会を変えなくてはならない という強烈な自覚をもっているかどうか。
安倍晋三は極右と利権の腐臭の中でそれを自覚しているが、キレイゴトの野党はまったく自覚がない。
自覚がある方は、少々のことには目をつぶって政権を握って離さない。
自覚が無い方は、あれが違うこれが違うと言って、政権が取れなくても平然としている。
中には、自覚があるからこそ宗主国に忠誠を誓う野党勢力もあるようだ。
菅直人から野田佳彦の民主党政権は、安倍晋三よりもずっとストレートな従米政権だった。
すくなくとも、トランプ以前の覇権を維持しようとする米国に対してはそうだった。
あの「無所属の会」とか言う「無責任の会」こそは、「野党を従米に統一させる」という使命をおびて立ち回っているのではないかと私は見ている。
トランプとは対立している、従来のジャパンハンドラーズ勢力が、決して独立なんて考えませんと誓約した無責任の会を使って野党をまとめ上げ、従米政権を成立させる というシナリオも考えられる。
いくら政権交代でも、国民生活にとっては安倍政権より何かがよくなる気がしない・・・
二大政党に期待なんてしちゃダメと言っている私でも、これはいくら何でも・・・・
今すぐに日本の独立は実現できはしない。
明日から「自分たちのことは自分たちで決める」なんてできない。
それでも、「虚構」に気が付き、いつか独立 という意思をもった集団が増えていけば、いつまでもずっと暗闇の中ということはない。
安倍独裁と野党の惨状。
しばらくは右往左往しなければならないだろう。
強い意志を持って、進んでいこう。
■ お知らせ
そのためにも、今私たちはどうやって支配されているのか。
真の敵は、どこでなにをしているのか。
しっかりと認識することが必要です。
ぜひ、この学習会に参加してください。
参加者には講師の菊池先生から著書「新自由主義の自滅」をプレゼント!
早めのお申込を。
「さよなら新自由主義」 菊池英博氏講演会
2018年6月2日(土) 14:00 - 16:30
エル・おおさか南館101
小泉・竹中時代からアベノミクスへと続く新自由主義は、私たちの暮らしを壊し苦しめ続けています。しかし「新自由主義って何なのか」その正体を私たちはちゃんととらえているでしょうか。敵を知らずんば百戦して百戦危うしです。腰を据えて学んでみませんか。
主催 生活フォーラム関西
資料代 1000円
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なるほど、今上天皇は今年3月にも、安倍内閣の冷酷な沖縄に対する仕打ちにあたかも抗議するかのように沖縄を訪問した。
真意は分からないが、安倍晋三はさぞや苦々しく思ったであろう。
しかし、だからといって、昭和天皇が残したあの「メッセージ」を忘れることができない。
そして、あの「メッセージ」こそが、戦後日本の「象徴」なのである。
宮内庁御用掛(通訳)の寺崎英成がGHQ顧問のシーボルトを訪れて語った内容を、シーボルトが記録したものだ。
米国の公文書として残っていたものが公開され、現在は沖縄県公文書館に保管されている。
公式の日本語訳はない。
が、「風のまにまに」というブログがかなり原文に忠実に翻訳してくれている。
→ 昭和天皇の沖縄メッセージ (風のまにまに 2006.12.31)
寺崎を通じて米国に伝えたこの天皇のメッセージのなかで、私がとくに注目したのはここだ
The Emperor further feels that United States military occupation of Okinawa (and such other islands as may be required) should be based upon the fiction of a long-term lease -- 25 to 50 years or more -- with sovereignty retained in Japan.
中でも注目すべきは
occupation of Okinawa should be based upon the fiction of a long-term lease with sovereignty retained in Japan
直訳すれば
沖縄の占領は 日本に主権がある長期の賃貸 という虚構に基づく
ということになる。
沖縄のみならず、戦後の日本をこれほど的確に言い表した言葉はない。
上記のブログでも fiction を擬制と訳しているが、これでは意味が分からない。
ふつうの日本語にすれば「虚構」だ。
「日本に主権があると言う虚構」 に基づいて米国は日本を占領し続ける
これが、戦後日本の根幹である。
では、どうやってこの虚構を日本人に信じさせたのか。
それはまさに憲法であり天皇制であった。
憲法の根幹は、1章:象徴天皇 2章:戦争放棄 3章以降:国民主権 であると言ってさしつかえなかろう。
このすべてが実は「虚構」を信じさせるための仕込みだったということだ。
なかでも、非常にわかりにくい「象徴天皇」の役割は、むき出しの支配者=米国の姿を覆い隠すための「象徴」だったのであり、昭和天皇自らがその役割を自覚していたということだ。
70年前の日本人は、その意味をわかってかわからずか、この「虚構」を受け入れた。
政治家の世界も、従米右翼と従米左翼が、「虚構」の上にバランスを保ちながら55年体制を築いてきた。
■
しかし、徐々に「虚構」を虚構であると知って、自らに権力を握ろうとするものが現れ始める。
田中角栄や小沢一郎など、国民の支持に依拠しようとしたものたちは、強烈な弾圧が襲いかかった。
弾圧のみならず、ともに国民の生活をまもるべき左翼からも集中砲火を浴びることになった。
細々と生きていた戦前回帰の反米極右に依拠しようとした(第1次)安倍政権もまた、突然の政権放棄を余儀なくされた。
ただし、安倍晋三は、この時の経験を無駄にしなかった。
従米の「虚構」を自覚しつつ、しかし時が来るまでは虚構のなかでおとなしく米国のATMを続けることを誓い、再び政権の座につくことができた。
そこから4年目に、トランプという願ってもないご主人様が登場した。
なんと米国から「もうそろそろ虚構はやめたいなあ」というシグナルを発信しているのだ。
「金さえ出せば もう好きなようにやってくれ」 このトランプ主義に安倍晋三は飛びついた。
残念ながら、日本の政治勢力で、このトランプ主義を「好機」としてとらえたのは安倍晋三だけだった。
真の独立にむけて一歩前進できるかもしれない という期待感を抱く「左翼」は皆無だった。
トランプが良いとか悪いとか評論する前に、自ら責任のある日本にとって、日本の政治にとって、日本の主権にとってどうなのか、という発想をした政治家が、もうどうしようもなく最悪の安倍晋三だけだったのだ。
独立国という虚構に隠された植民地である日本。
その自覚を持ち、ほんの少しずつでも独立に向けて進んでいこうという強固な意志がなければ、今の日本では政治家とは言えない。
その意味では 安倍晋三は悪い政治家だが、野党の諸氏は政治家ですらない。
誤解のないように追記しておくと、安倍晋三は極右思想のために政治をやっているのではない。内実は単なる薄汚い利権屋にすぎない。
ただ、それを覆い隠すためには権力が絶対的に必要だと言うことをよく理解しているし、権力を維持するためには情勢をただしく観察し、極右を利用し、非常にうまく立ち回っている ということだ。
今まで、極右が政治の主流に出てこれなかったのは、左翼が強かったからではなく、宗主国の米国が許さなかったからだ。
しかし、米国人の生活が第一であるトランプにとっては、政治的軍事的経済的に米国の脅威にならなければ、極右だろうが金王朝だろうが習近平皇帝だろうが、どうでもいいのだ。
トランプが今の路線で成功をおさめていく限り、日本の極右は野放しになり、植民地であるという自覚すら持てない戦後ボケの左翼は完全に駆逐されてしまうだろう。
極右を非難するのはもちろんだが、まずは、対抗すべき勢力が、なによりも「自分たちのことは自分たちで決める」という当たり前のことを腹をくくらない限り、勝つことはできない。
「なによりも」 というのは これまで絶対視されてきた 護憲 とか 平和 とか 人権 とかよりも 「自分たちで決める」ことを優先すべきだ、という意味だ。
どんなに大事なことでも、「自分たちで決める」ことができなければ、いとも簡単に奪われてしまうからだ。
少しくらい間違っても「自分たちで決める」ことができれば、徐々にいい社会を作っていけるからだ。
これを ひとことで言い表したのが「自立と共生」であり、逆に、自分たちで決めることを蔑ろにしつつ、憲法と平和と人権を守れると信じてきたのが戦後民主主義であり、まさに「虚構」の上に築いた砂楼である。
■
野党が、バラバラにされている現状に甘んじ、安倍独裁を支えているのは、ここに原因がある。
日本の独立が「虚構」であり、自らのことを自ら決めることができない社会を変えなくてはならない という強烈な自覚をもっているかどうか。
安倍晋三は極右と利権の腐臭の中でそれを自覚しているが、キレイゴトの野党はまったく自覚がない。
自覚がある方は、少々のことには目をつぶって政権を握って離さない。
自覚が無い方は、あれが違うこれが違うと言って、政権が取れなくても平然としている。
中には、自覚があるからこそ宗主国に忠誠を誓う野党勢力もあるようだ。
菅直人から野田佳彦の民主党政権は、安倍晋三よりもずっとストレートな従米政権だった。
すくなくとも、トランプ以前の覇権を維持しようとする米国に対してはそうだった。
あの「無所属の会」とか言う「無責任の会」こそは、「野党を従米に統一させる」という使命をおびて立ち回っているのではないかと私は見ている。
トランプとは対立している、従来のジャパンハンドラーズ勢力が、決して独立なんて考えませんと誓約した無責任の会を使って野党をまとめ上げ、従米政権を成立させる というシナリオも考えられる。
いくら政権交代でも、国民生活にとっては安倍政権より何かがよくなる気がしない・・・
二大政党に期待なんてしちゃダメと言っている私でも、これはいくら何でも・・・・
今すぐに日本の独立は実現できはしない。
明日から「自分たちのことは自分たちで決める」なんてできない。
それでも、「虚構」に気が付き、いつか独立 という意思をもった集団が増えていけば、いつまでもずっと暗闇の中ということはない。
安倍独裁と野党の惨状。
しばらくは右往左往しなければならないだろう。
強い意志を持って、進んでいこう。
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そのためにも、今私たちはどうやって支配されているのか。
真の敵は、どこでなにをしているのか。
しっかりと認識することが必要です。
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早めのお申込を。
「さよなら新自由主義」 菊池英博氏講演会
2018年6月2日(土) 14:00 - 16:30
エル・おおさか南館101
小泉・竹中時代からアベノミクスへと続く新自由主義は、私たちの暮らしを壊し苦しめ続けています。しかし「新自由主義って何なのか」その正体を私たちはちゃんととらえているでしょうか。敵を知らずんば百戦して百戦危うしです。腰を据えて学んでみませんか。
主催 生活フォーラム関西
資料代 1000円
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