2018-08-25(Sat)
あえて火中の栗を拾う 玉木雄一郎の発言について
国民党の代表選をめぐって、玉木候補の発言が炎上しています。
「申し訳ないがまずは共産党は除いて」国民民主・玉木氏
2018年8月23日 朝日
国民民主党・玉木雄一郎共同代表(発言録)
国民民主党代表選が終わったら(参院選に向けた野党)総合選対を、申し訳ないがまずは共産党は除いて立ち上げて、完全な事前調整をして候補者を立てる。共産とは事後交渉の中でご理解をいただきながら、野党全体として少しでも議席を増やすよう(共産候補の擁立撤回を)判断いただくことも必要だ。
共産が唯一見ているのは立憲民主党だ。立憲との関係があれほど衆院でも密になっているにもかかわらず、これほど共産が(候補者を)立てているのは、場合によっては、昨年の衆院選から比べると共産はすでに戦略を変えてきているのではないか。立憲とも、実は協力をしないことにかじを切る可能性もある。(23日、ネット討論会で)
(引用以上)
言うまでもなく、「申し訳ないが共産党は除いて」の部分に、リベラル諸氏が猛烈に反発、批判、罵倒の限りを尽くしているようです。
私も、この見出しを見たときは、なんちゅうこと言うんや!と びっくりしました。
「自分の発言が、どう捕らえられるのか」 と反芻してから発言する習慣がないのでしょうか?
もしそうだとしたら、政治家としては困ったものです。
ただ、私は、罵詈雑言を浴びせるリベラル諸氏と同じ意味で批判しているのではありません。
神経を逆なでする文言をとりあえずスルーして、発言の中身だけを判読してみれば、間違ったことは言っていないからです。
ああ、これでまたこのブログの読者さんが減るのかあ と思いつつ あえて火中の栗を拾うつもりで 続きを書きます。
理由はみっつあります。
ひとつめは、マスメディアとリベラル諸氏は 「共産党排除!」という意味に解して批判しているのですが、肝心の共産党からはなんの反応もないということです。少なくとも、私の見る限りでは共産党の赤旗や国会議員は、まったく玉木氏のこの不届きな発言に言及はありません。
ふたつめ、事前調整だろうが事後調整だろうが、共産党以外の野党の腹の中は 「共産候補の擁立撤回を判断いただく」には違いがない、ということです。
現実的に、野党統一候補として共産党候補を立てるということは、どの党も考えていません。
おそらく、共産党自身がそれは承知しているはずですが、問題は如何にして共産党の面子を潰さずに、共産党が比例票を集めやすい形で調整を行うかということです。
共同選対を組んでおいて、「ウチの候補はゼロです」と共産党自身に言わせるのでしょうか。
全国の共産党員にむかって、党本部が「調整の結果ゼロでした」と言わせるのですか?
それが、どんなに共産党にとって酷なことで、ダメージが大きいか、想像できますか?
実際の選挙運動になれば、共産党の活動量は他を圧倒します。
にもかかわらず、候補はゼロ。
はじめからそれがわかっていて、やる気になれますか?
お互いに予定候補を立てながら、ギリギリの選択で共産が譲り、他党候補が共産候補に大いに感謝することで、共産党の太っ腹も示され、大義が立つというものでしょう。
私は、昨年総選挙の大阪9区で、まさにその光景を目撃しました。
そしてみっつめ。共産以外の党から共産党への感謝も敬意もないということです。
とくに、立憲民主党は、候補を下ろしてもらったという意味でも、選挙運動を担ってもらったという意味でも、共産党のおかげで当選できた候補がたくさんいるはずです。
本来なら、自民党が公明党に頭が上がらないのと同じような関係なのですが、およそそういう気配は感じられません。
共産党から求められている相互推薦に関しても、黙殺したままです。
私の住んでいる大阪では、参院は4人区とはいえ票数では自民と維新に野党は圧倒されていて、最近は2:2:1の票数がほとんど固定化されてしまっています。
野党の現職は共産党のたつみコータロー議員であり、この一議席を死守するのが当然かと思いきや、なんと立憲は候補を立てるのだそうです。いくら複数区とは言え、あまりに非現実的な方針です。
立憲の比例票を集めるために、共産の現職を共倒れで落とすという意味にしか私には見えません。
(一人区で共産党をおろすためのバーターなのかもしれませんが、もしそうだとしてもその程度の信頼関係しかないということです。)
共産党は立憲に支持層を切り崩されている危機感があり、立憲は相互関係ではなくオイシイとこ取りを続けたい。
そんな煮詰まった関係である以上、事前調整が難航するのは目に見えています。
このへんが、玉木発言の後半部分です。
結論は、1人区は共産党におりてもらい、なおかつ選挙協力はしてもらう、という虫のいい話なのです。
これは、どの経路をたどっても、変わりません。
玉木発言に激怒している諸姉諸兄も、最後のイメージは同じでしょう。
その意味では、関係者だけの席での発言ならば、玉木氏の発言はごく普通のことを言っているだけです。
ただ、その虫のいい話を、玉木氏が無神経にメディアに公言してしまったので、あわてて激怒しているのではないか、とも見えるのです。
■
とは言え、玉木氏の発言は、あまりに無神経で不用意であったことは確かです。
なんでこのタイミングでやらかすかなあ とイラッときたのは間違いありません。
このタイミングとは、言うまでもなく 沖縄県知事選挙が目前に迫っているということです。
沖縄県知事選 態勢構築へ動き加速 佐喜真氏 維新に推薦願い 玉城氏 小沢氏が情勢確認
2018年8月25日 琉球新報
県政与党の候補者選考を進めてきた「調整会議」から出馬要請を受けた玉城氏は、所属する自由党の小沢一郎代表が24日、情勢把握のため急きょ沖縄入りした。小沢氏は呉屋守将金秀グループ会長、調整会議の正副議長と新里米吉県議会議長、大城紀夫連合沖縄会長らと面談し、沖縄の政治情勢や選挙戦の取り組み方について意見を交わした。
小沢氏は記者団に「非常に熱心に誠意を持ってデニー君を推していることは確認できた。国政の政治上の問題が懸かった選挙であり、中央の政党にもきちんとした決定をしてもらわないといけない」と述べ、選挙支援の態勢を判断した上で玉城氏の出馬について党の結論を出すとした。
一方で翁長県政の継承を取り巻く環境について「非常に厳しい戦いになる。市町村選挙の状況もあるし、何よりも政府与党が死にものぐるいの選挙戦を繰り広げる。単にムードだけでは勝てないという認識は皆さんも持っていると思う」と引き締めを図った。
(引用以上)
まさに そういうことです。
沖縄の選挙であっても、これは安倍政権が総がかりで沖縄に侵攻するのに対して、どれだけ日本中が束になってたたかえるかと言う選挙戦です。
沖縄を孤立させてしまえば、凶暴でありかつ札束を振り回す安倍政権の猛攻に、沖縄の人たちも諦めが広がってしまうかもしれません。
本土の私たちにできるのは、「本土もまとまって真剣にオール沖縄を応援している」という姿勢を届けることです。
次の国政選挙では、これまでのように安倍の好き放題にはさせないよと、「野党が勝てるかもしれない」リアリティを見せることです。
そんなタイミングで、玉木氏が無神経な発言をし、それをマスコミが「それいけ」とばかりに取り上げて、リベラル諸氏が国民党攻撃に血道を上げる。
もう、やめてくれ!!! と叫びたい気持ちです。
冷静な相互批判ができずに、感情的にぶったたくのでは、ネトウヨと同じじゃないですか。
自分と違う意見だからこそ、あんまり感情的にならずに慎重に検討するという作法を、日本のリベラリズムの中にもぜひ取り入れてください。
衷心よりお願いする次第です。
追伸: 本記事の主旨は、共産党を含む共同選対を形成することに反対しているわけではありません。もし共産党が、共産党にとっては茨の道を選択するのであれば、その決断に敬意を表します。
追伸2:共産党に対するリスペクトが欠けているのは立憲だけではありません。そもそも、玉木氏がこんな台詞を言ってしまうのは、共産党に対する配慮がすっぽり欠落しているせいですから。
追伸3:立憲や国民は、沖縄では影響ないでしょ というご意見は間違っています。昨年総選挙での比例票、立憲9.5万、希望8.4万であり、共産7.6万、社民7.1万よりはるかに多いのです。
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「申し訳ないがまずは共産党は除いて」国民民主・玉木氏
2018年8月23日 朝日
国民民主党・玉木雄一郎共同代表(発言録)
国民民主党代表選が終わったら(参院選に向けた野党)総合選対を、申し訳ないがまずは共産党は除いて立ち上げて、完全な事前調整をして候補者を立てる。共産とは事後交渉の中でご理解をいただきながら、野党全体として少しでも議席を増やすよう(共産候補の擁立撤回を)判断いただくことも必要だ。
共産が唯一見ているのは立憲民主党だ。立憲との関係があれほど衆院でも密になっているにもかかわらず、これほど共産が(候補者を)立てているのは、場合によっては、昨年の衆院選から比べると共産はすでに戦略を変えてきているのではないか。立憲とも、実は協力をしないことにかじを切る可能性もある。(23日、ネット討論会で)
(引用以上)
言うまでもなく、「申し訳ないが共産党は除いて」の部分に、リベラル諸氏が猛烈に反発、批判、罵倒の限りを尽くしているようです。
私も、この見出しを見たときは、なんちゅうこと言うんや!と びっくりしました。
「自分の発言が、どう捕らえられるのか」 と反芻してから発言する習慣がないのでしょうか?
もしそうだとしたら、政治家としては困ったものです。
ただ、私は、罵詈雑言を浴びせるリベラル諸氏と同じ意味で批判しているのではありません。
神経を逆なでする文言をとりあえずスルーして、発言の中身だけを判読してみれば、間違ったことは言っていないからです。
ああ、これでまたこのブログの読者さんが減るのかあ と思いつつ あえて火中の栗を拾うつもりで 続きを書きます。
理由はみっつあります。
ひとつめは、マスメディアとリベラル諸氏は 「共産党排除!」という意味に解して批判しているのですが、肝心の共産党からはなんの反応もないということです。少なくとも、私の見る限りでは共産党の赤旗や国会議員は、まったく玉木氏のこの不届きな発言に言及はありません。
ふたつめ、事前調整だろうが事後調整だろうが、共産党以外の野党の腹の中は 「共産候補の擁立撤回を判断いただく」には違いがない、ということです。
現実的に、野党統一候補として共産党候補を立てるということは、どの党も考えていません。
おそらく、共産党自身がそれは承知しているはずですが、問題は如何にして共産党の面子を潰さずに、共産党が比例票を集めやすい形で調整を行うかということです。
共同選対を組んでおいて、「ウチの候補はゼロです」と共産党自身に言わせるのでしょうか。
全国の共産党員にむかって、党本部が「調整の結果ゼロでした」と言わせるのですか?
それが、どんなに共産党にとって酷なことで、ダメージが大きいか、想像できますか?
実際の選挙運動になれば、共産党の活動量は他を圧倒します。
にもかかわらず、候補はゼロ。
はじめからそれがわかっていて、やる気になれますか?
お互いに予定候補を立てながら、ギリギリの選択で共産が譲り、他党候補が共産候補に大いに感謝することで、共産党の太っ腹も示され、大義が立つというものでしょう。
私は、昨年総選挙の大阪9区で、まさにその光景を目撃しました。
そしてみっつめ。共産以外の党から共産党への感謝も敬意もないということです。
とくに、立憲民主党は、候補を下ろしてもらったという意味でも、選挙運動を担ってもらったという意味でも、共産党のおかげで当選できた候補がたくさんいるはずです。
本来なら、自民党が公明党に頭が上がらないのと同じような関係なのですが、およそそういう気配は感じられません。
共産党から求められている相互推薦に関しても、黙殺したままです。
私の住んでいる大阪では、参院は4人区とはいえ票数では自民と維新に野党は圧倒されていて、最近は2:2:1の票数がほとんど固定化されてしまっています。
野党の現職は共産党のたつみコータロー議員であり、この一議席を死守するのが当然かと思いきや、なんと立憲は候補を立てるのだそうです。いくら複数区とは言え、あまりに非現実的な方針です。
立憲の比例票を集めるために、共産の現職を共倒れで落とすという意味にしか私には見えません。
(一人区で共産党をおろすためのバーターなのかもしれませんが、もしそうだとしてもその程度の信頼関係しかないということです。)
共産党は立憲に支持層を切り崩されている危機感があり、立憲は相互関係ではなくオイシイとこ取りを続けたい。
そんな煮詰まった関係である以上、事前調整が難航するのは目に見えています。
このへんが、玉木発言の後半部分です。
結論は、1人区は共産党におりてもらい、なおかつ選挙協力はしてもらう、という虫のいい話なのです。
これは、どの経路をたどっても、変わりません。
玉木発言に激怒している諸姉諸兄も、最後のイメージは同じでしょう。
その意味では、関係者だけの席での発言ならば、玉木氏の発言はごく普通のことを言っているだけです。
ただ、その虫のいい話を、玉木氏が無神経にメディアに公言してしまったので、あわてて激怒しているのではないか、とも見えるのです。
■
とは言え、玉木氏の発言は、あまりに無神経で不用意であったことは確かです。
なんでこのタイミングでやらかすかなあ とイラッときたのは間違いありません。
このタイミングとは、言うまでもなく 沖縄県知事選挙が目前に迫っているということです。
沖縄県知事選 態勢構築へ動き加速 佐喜真氏 維新に推薦願い 玉城氏 小沢氏が情勢確認
2018年8月25日 琉球新報
県政与党の候補者選考を進めてきた「調整会議」から出馬要請を受けた玉城氏は、所属する自由党の小沢一郎代表が24日、情勢把握のため急きょ沖縄入りした。小沢氏は呉屋守将金秀グループ会長、調整会議の正副議長と新里米吉県議会議長、大城紀夫連合沖縄会長らと面談し、沖縄の政治情勢や選挙戦の取り組み方について意見を交わした。
小沢氏は記者団に「非常に熱心に誠意を持ってデニー君を推していることは確認できた。国政の政治上の問題が懸かった選挙であり、中央の政党にもきちんとした決定をしてもらわないといけない」と述べ、選挙支援の態勢を判断した上で玉城氏の出馬について党の結論を出すとした。
一方で翁長県政の継承を取り巻く環境について「非常に厳しい戦いになる。市町村選挙の状況もあるし、何よりも政府与党が死にものぐるいの選挙戦を繰り広げる。単にムードだけでは勝てないという認識は皆さんも持っていると思う」と引き締めを図った。
(引用以上)
まさに そういうことです。
沖縄の選挙であっても、これは安倍政権が総がかりで沖縄に侵攻するのに対して、どれだけ日本中が束になってたたかえるかと言う選挙戦です。
沖縄を孤立させてしまえば、凶暴でありかつ札束を振り回す安倍政権の猛攻に、沖縄の人たちも諦めが広がってしまうかもしれません。
本土の私たちにできるのは、「本土もまとまって真剣にオール沖縄を応援している」という姿勢を届けることです。
次の国政選挙では、これまでのように安倍の好き放題にはさせないよと、「野党が勝てるかもしれない」リアリティを見せることです。
そんなタイミングで、玉木氏が無神経な発言をし、それをマスコミが「それいけ」とばかりに取り上げて、リベラル諸氏が国民党攻撃に血道を上げる。
もう、やめてくれ!!! と叫びたい気持ちです。
冷静な相互批判ができずに、感情的にぶったたくのでは、ネトウヨと同じじゃないですか。
自分と違う意見だからこそ、あんまり感情的にならずに慎重に検討するという作法を、日本のリベラリズムの中にもぜひ取り入れてください。
衷心よりお願いする次第です。
追伸: 本記事の主旨は、共産党を含む共同選対を形成することに反対しているわけではありません。もし共産党が、共産党にとっては茨の道を選択するのであれば、その決断に敬意を表します。
追伸2:共産党に対するリスペクトが欠けているのは立憲だけではありません。そもそも、玉木氏がこんな台詞を言ってしまうのは、共産党に対する配慮がすっぽり欠落しているせいですから。
追伸3:立憲や国民は、沖縄では影響ないでしょ というご意見は間違っています。昨年総選挙での比例票、立憲9.5万、希望8.4万であり、共産7.6万、社民7.1万よりはるかに多いのです。
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