フライドチキンの恐竜学

だから、先生方は、煮干しのイワシの「解剖」など、授業を工夫されているようだ。
また、本書の内容を先取りするようだが、鶏手羽先を使って骨格標本を作るなどもあるらしい。
こうした「気遣い」には賛否もあると思うけれど、本書では、沖縄の子供たちに「知ってるトリは?」と聞いたら「ハクチョウ」と答えるような自然との距離(バーチャル化)に対する問題意識があるようだ。
さて、盛口 満「フライドチキンの恐竜学」は楽しい本である。
内容は、タイトルからもちろん想像できるのだけれど、どんな風に料理するのかワクワクさせてくれる。
第1章に、こんなことが書いてある。
トリケラトプスを発掘し、自宅に展示しようとしたら、調査に1~2ヶ月半、発掘に1~2ヶ月、掘り上げてから展示できるようになるまでに1~2年、この間に必要な費用は、ざっと20~25万ドル……
(ファストフスキー他「恐竜の進化と絶滅」による)
全ページカラーで、見開き左ページはやさしい語り口の解説(というかエッセイ)、右ページは西澤真樹子氏(なにわホネホネ団)の愉快な絵―この本の成功の半分はこの絵の手柄かも)という構成で、とてもとっつきやすい。
しかし内容は高尚で、難しい骨の名前もばんばん出てくる。子供の読み物のように考えていると内容が頭に入ってこない。当然、しっかりと骨のイメージを頭に描きながら読もうとすると、普通の本よりもずっと時間もかかる。
本書末尾の参考文献に挙げられている犬塚則久「恐竜ホネホネ学」(NHKブックス)ほど手ごわいわけではないが。
なかなか骨のある本なのであった。