「面白くて眠れなくなる脳科学」(その3)
毛内拡「面白くて眠れなくなる脳科学」の3回目。
今日は〝人間は意思決定をすると思う前に意思決定している〟に注目。
本書カバーには
その答えはカバー裏側に書かれていて、
このことは随分以前、何かの本で読んだ憶えがある。
知り合いにこの話をしたら、そんなことがあるはずがない、それでは考えるというのは一体何なんだ? という反応だった。
憶えているのは、そういうことが書いてあったということだけで、どんな実験をしたのかなどはその時は知らなかったのだが、本書には実験内容がかいつまんで説明されていた。
最後に多くの人を巻き込んで活発な議論が続けられているとあるが、前述の知り合いのように、とても受け入れられる結果ではないからだろう。
本書ではその議論にどんなものがあるのか書かれていないが、想像するに、意思を言葉として意識する前に準備行動が行われているのだとかいう考えがあるのではないかと思う。
それなら、数学の推論のように、言葉で進んでいく脳活動ではどういう状態になるのかなど調べていないのだろうか。
実験といえば、次の実験の紹介がある。
高校生のときに、ある政治的な話題に対して、教師と議論したときに、私の口ぶりに対して、○○先生の口ぶりにそっくりだと指摘された。内容だけでなく、言葉遣い・イントネーションまで似ていたらしい。
ものまねを嫌う年頃であったから、すごく恥ずかしい思いをしたが、○○先生の影響を受けていることは自分でもわかっていた。今思えば懐かしい話だけれど。
今日の記事の最後に、私にとって耳新しかった話を一つ付け足しておこう。
今日は〝人間は意思決定をすると思う前に意思決定している〟に注目。
本書カバーには
Q.脳は、「腕を曲げよう」と思いついて、
どのくらいで動き出す?
その答えはカバー裏側に書かれていて、
0.35秒「前」
A.脳は「こうしたい」と思う前に動き出している
はじめに | |
Part Ⅰ もっと知りたい! 脳のはなし | |
死んでいるはずの脳が生き返った? | |
人間の脳と、ほかの動物の脳はどう違う? | |
守りは堅いのに、体によくないものは大好き | |
【脳の機能① 五感+α】色や音も脳が作った幻想? | |
【脳の機能② 体の制御】脳は体の司令塔 | |
【脳の機能③ 思考する】考えるってどんなしくみ? | |
【脳の機能④ 感情】心の働きも脳が決める? | |
脳の怪我で性格までもがまったくの別人に | |
ニューロンが放出する100種類以上の化学物質 | |
脳の保護者、グリア細胞 | |
「あくびがうつる」のはなぜ? | |
記憶はどこに保存されるのか | |
ひらめきはどこからやってくる? | |
右脳と左脳のホントのところ | |
薬と毒は紙一重 | |
Part Ⅱ 脳はふしぎに満ちている | |
5000年前のパピルスに記されていた脳 | |
脳科学と心理学 | |
ないはずのものを感じる脳 | |
ここまで進歩した顕微鏡 | |
進化する実験 | |
脳波でわかること | |
生きている脳の活動を見てみたい! | |
こわい! 脳の病気 | |
ドーパミンとその異常 | |
「個性」か「障害」かの境目は難しい | |
脳科学的ストレス解消法 | |
夜コーヒーを飲むと眠れなくなるワケ | |
Part Ⅲ 脳の可能性は無限大 | |
どうして夢をみるのだろう? | |
脳を流れる水の働き | |
頭が良いってどういうこと? | |
歳をとると本当に頭が固くなる | |
大事なのは「隙間」だった | |
「ニューロン以外」の細胞が頭の良さのカギ? | |
アインシュタインと凡人の脳の違い | |
「誰でも頭が良くなる装置」は実現できる? | |
「AIのさらにその先へ」―ブレインテック市場 | |
脳は〝こうしたい〟と思う「前」に動き出す | |
なんで催眠術にかかってしまうの? | |
動物と人間の違いは何かという究極の問い | |
感性と芸術 | |
悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのか | |
脳科学で「心」を理解できるのか? | |
「自分が自分だとわかる」不思議 | |
おわりに |
知り合いにこの話をしたら、そんなことがあるはずがない、それでは考えるというのは一体何なんだ? という反応だった。
憶えているのは、そういうことが書いてあったということだけで、どんな実験をしたのかなどはその時は知らなかったのだが、本書には実験内容がかいつまんで説明されていた。
さて、「脳科学と心理学」 (88ページ)でご紹介したとおり、私たちは自分の〝気づき〟に気づくには時間を要するということがわかっています。したがって、私たちは知覚する前にすでに脳が勝手に意思決定をしている可能性も否定できません。
1983年に、ベンジャミン・リベットらは、これを見事に実証しました。 実験には、光の点が画面上を2,56秒で一周する特殊な時計が利用されました。被験者は、その光の点を見つめ、止めたいと思った時には〝いつでも〟手首を曲げても良いと指示されました。手首を曲げたいと思ったタイミングは、時計を見て被験者自身が覚えておき、手首の屈曲はセンサーで測り、被験者の脳に装着した脳波計により脳の活動を同時に測りました。
その結果、驚くべきことに、被験者がここだ!と思って手首を動かしたタイミングよりも、0.35秒ほど「前」から、すでに脳では電気信号が始まっていたのです。この電気信号は、準備電位と名前がつけられています。つまり、私たちが何かをしようと思ったと気づく0,35秒程度前にすでに脳は活動を始めているというのです。この実験は、私たちのこうしたいという自由な意志は本当にあるのかという根幹を揺るがすもので、多くの人を巻き込んでいまだに活発な議論が続けられています。
というのである。1983年に、ベンジャミン・リベットらは、これを見事に実証しました。 実験には、光の点が画面上を2,56秒で一周する特殊な時計が利用されました。被験者は、その光の点を見つめ、止めたいと思った時には〝いつでも〟手首を曲げても良いと指示されました。手首を曲げたいと思ったタイミングは、時計を見て被験者自身が覚えておき、手首の屈曲はセンサーで測り、被験者の脳に装着した脳波計により脳の活動を同時に測りました。
その結果、驚くべきことに、被験者がここだ!と思って手首を動かしたタイミングよりも、0.35秒ほど「前」から、すでに脳では電気信号が始まっていたのです。この電気信号は、準備電位と名前がつけられています。つまり、私たちが何かをしようと思ったと気づく0,35秒程度前にすでに脳は活動を始めているというのです。この実験は、私たちのこうしたいという自由な意志は本当にあるのかという根幹を揺るがすもので、多くの人を巻き込んでいまだに活発な議論が続けられています。
最後に多くの人を巻き込んで活発な議論が続けられているとあるが、前述の知り合いのように、とても受け入れられる結果ではないからだろう。
本書ではその議論にどんなものがあるのか書かれていないが、想像するに、意思を言葉として意識する前に準備行動が行われているのだとかいう考えがあるのではないかと思う。
それなら、数学の推論のように、言葉で進んでいく脳活動ではどういう状態になるのかなど調べていないのだろうか。
論理的推論は言葉がなければ成立しない。言葉として命題が記述され、推論の根拠となる公理・定理の類もまた言葉によって記述される。(身体感覚的な幾何学的命題は別かもしれない)
実験といえば、次の実験の紹介がある。
自動的にまねしてしまう
スタンリー・ミルグラムが行なった実験では、被験者は、権威者のいうことに簡単に同調し服従するということが実際に確かめられており、別の研究者によって何度も再確認されているのです。
さらに、前に述べたように、私たちは共感する心を持っており、同調している相手に対しては、好むと好まざるとにかかわらず自動的な模倣が生じてしまうのです。実際、会話がノッてくると、無意識のうちに仕草や表情が似てくるのは、この共感の働きということができます。無意識に動作をシンクロさせるのには、0.2秒しかかからないという報告もあります。逆にいうと、相手の仕草や表情を意識的にまねると、相手はあなたに好感を抱く可能性が高まります。このような心理学的な手法を、ミラーリング効果といいます。
このように、私たちは普段、すべて自分で決定していると信じていますが、案外自分で決めて行動していることというのは少ないのかもしれません。
スタンリー・ミルグラムが行なった実験では、被験者は、権威者のいうことに簡単に同調し服従するということが実際に確かめられており、別の研究者によって何度も再確認されているのです。
さらに、前に述べたように、私たちは共感する心を持っており、同調している相手に対しては、好むと好まざるとにかかわらず自動的な模倣が生じてしまうのです。実際、会話がノッてくると、無意識のうちに仕草や表情が似てくるのは、この共感の働きということができます。無意識に動作をシンクロさせるのには、0.2秒しかかからないという報告もあります。逆にいうと、相手の仕草や表情を意識的にまねると、相手はあなたに好感を抱く可能性が高まります。このような心理学的な手法を、ミラーリング効果といいます。
このように、私たちは普段、すべて自分で決定していると信じていますが、案外自分で決めて行動していることというのは少ないのかもしれません。
高校生のときに、ある政治的な話題に対して、教師と議論したときに、私の口ぶりに対して、○○先生の口ぶりにそっくりだと指摘された。内容だけでなく、言葉遣い・イントネーションまで似ていたらしい。
ものまねを嫌う年頃であったから、すごく恥ずかしい思いをしたが、○○先生の影響を受けていることは自分でもわかっていた。今思えば懐かしい話だけれど。
今日の記事の最後に、私にとって耳新しかった話を一つ付け足しておこう。
さて、他方、知能にも種類があるようで、それぞれ流動性知能と結晶性知能と呼ばれています。流動性知能は、直観や処理速度などに関与する能力で、結晶性知能は、創造力やコミュニケーション力、社会適応力など、言語に関する能力であると定義されています。流動性知能は、30歳くらいにピークを迎え、56歳頃から低下するといわれており、一方の結晶性知能は、25歳を過ぎても増加し、加齢しても低下しないとされています。この定義からすると、私が思う知性というのは、結晶性知能のほうなのかもしれません。
知能をこういうふうに分けるという考え方には初めて接した。今までよく数学をはじめ科学研究は若いうちに成果を出すが、政治家は経験を重ねた年齢層のほうが優れているという話を聞かされてきたが、それを説明する理論になるのかもしれない。
とはいえ本当に日本国の政治家が結晶性知能に優れているのか疑問もあるが。