イライラするAmazon musicの検索力
ターゲットにした楽曲は、C.P.E.Bach: Sonata in a minor for solo flute, Wq.132(H.562)。
この曲については、少なくとも次の5種類の演奏が配信されていることを確認した。
- Christian Norde/Sonata in A Minor for Flauto Solo Wq.132
- Dorothea Seel/Flute Sonata in A Minor, Wq.132, H.562
- François Lazarevitch/Flute Sonata in A Minor, Wq.132
- Nancy Haden/C.P.E. Bach:Sonata in A minor, H562(Wq.132)
- Juliette Hurel/Sonata for Solo Flute in A Minor, Wq.132
実はこの5つを見つけたのは、"Bach Flute sonata"で検索した結果である。もちろんこのような検索だと、バッハ一族のフルートソナタが全部出てきそうで、目的のC.P.E.Bachのa minor, unaccompaniedにたどり着くのは結構大変である。
検索力がどれだけ酷いかを示すために、とにかくこれらの演奏があることを確認し、いろいろな、本来ならより適切なキーワードで検索したときにヒットしてくるかどうかを確かめようというわけである。
まず最も素直なキーワード"C.P.E.Bach Flute sonata"で検索してみた。
3つのアルバムがヒットする(これがすべて)が、その中に目的の楽曲は存在しない!
"C.P.E.Bach"とスペースをおかないのがまずいのかもしれないと考えて、"C. P. E. Bach"とスペースをおいたが結果は同じだった。
前にもちょっと書いたが、日本語で検索したらどうなるだろう。
"C.P.E.バッハ フルートソナタ"で検索してみた。
13種類のアルバムが検索され、上の5つの演奏のうち、François Lazarevitchのもの以外はここに含まれていた。
次にもっとピンポイントで検索してみようと考えて、Wq.132で検索してみた。
するとアルバムとしては、関係ないものが2つ検索されるが、楽曲としては、有田正弘、エマニュエル・パユ、パトリック・ガロア、François Lazarevitch、Inge Kocher、ブランフォード・マルサリス、Dan Laurin、Eric Lamb、Armida Uzeda(これはギター版)、Katy Taylor、Anna Garzuly-Wahlgren、などなど、やたら多い演奏がヒットしてくる。
パユの演奏が検索されてきたのは良い。前述の5人の演奏とは明らかに違う、豊かで芯のある音が楽しめる。収録・配信されていることは良しとするが、どうして普通に検索して出てこないんだ。というか、人気順とか評価順で並べたら間違いなく上位に入るものだろう。
上述のC.P.E.Bachのソナタは、幸いパユの演奏が配信されていたわけだが、ゴールウェイの演奏はいくら探してもみつからなかった。YouTubeではGalwayの演奏が配信されている。パユに優るとも劣らぬ素晴らしい演奏である。
これに限らず、有名曲、有名演奏であっても、Amazon musicは配信していないのか、単に検索機能が悪いのかわからないのだが、目的のものが見つからず、ガッカリというかイライラさせられる。
どうして検索のしかたでこんなに違った結果になるのだろう。
不思議なのは"Wq.132"という、ピンポイントではたくさん出てくるのに、"Bach"や"C.P.E.Bach"では出てこないこと。
Wq番号なんてあまりポピュラーではないように思う。モーツァルトならケッヘル番号で検索する、つまり"ピアノ協奏曲 第20番"ではなくて、"K.466"で検索する人のほうが多いのではないかと思う。
上の例で見る限り、アルバム名や曲名にはちゃんと"C.P.E.Bach"の文字は入っているようだから、なぜそれで検索して出てこないのかが不思議である。
"C.P.E.バッハ"と日本語にしたら結果が異なるというのもおかしい。Amazon musicでは、表記のゆれや、言語の違いを考慮していないのだろうか。
また絞り込み検索もできないようだ。
検索結果が多く表示されるのはまあ良いとして、そこからの絞り込みができないと、リストをずっと見ていくことになってしまう。 ポピュラー音楽なら、演奏者と楽曲の結びつきが強いから、これでも良いのかもしれないが。
そもそも絞り込み以前に、検索キーを、作曲者名、曲名、演奏者名にわけて入れられるようにしたほうが良いのではないか。もっともAmazonのデータベースはこれらの区分をつけずにベタで入れてあったらそううまくいかないかもしれないが。
Google検索ならそういう区分をしなくても、差し支えなさそうだが、Amazon musicほど出来が悪いと、データベースの出来の悪さをある程度、検索機能で補う(ごまかす)ことも考えたらどうだろう。
あるいは、Amazon musicの収録曲は元はCDだろうから、別のサービスでCDを検索して、AmazonではCD番号を入れて検索できるようにしても良いぐらいではないか。
実際、あまりの検索力の酷さに呆れ果てて、目的の演奏や楽曲のCDをGoogleなどで検索して、その存在を確かめたうえで、アルバム名や、一緒に収録されている曲名などをキーワードにして検索するという方法を何度も試している。(うまくいくこともあるが、たいていは失敗する)
データベースの出来が悪いことは明らかだが、上に書いたように作曲者、曲名、ジャンル、演奏者といった項目を立てて構造化する方法もあれば、それが難しければ、とにかく正確な演奏情報をためこんで、AI的な検索を使う方法をやってもらいたい。YouTubeのような「何でもあり」の配信とは違って、(おそらく)CDをベースとして音楽専門配信サービスなのだろう。
ストリーミングではなく、オンラインショッピングだが、HMVの検索などは、{人名、販売元、タイトル、品番、曲名、除外ワード}を指定するようになっていて、それに加えて、ジャンル(クラシック、ジャズ、サウンドトラックなど)、フォーマット指定(CD、SACD、DVD、ブルーレイなど)、国内・輸入の別、といった項目がある。
Amazonの商品戦略の基本は、ロングテール戦略ではなかったか。それを有効たらしめるのは情報、つまりデータベースと検索機能ではないのだろうか。
Amazon music unlimited、有料契約を続けるかどうか、この検索力では、お金を払う値打ちなしという判断に傾いてしまう。