ぴったり字幕

8月24日から始まった東京パラリンピック2020も今日で閉会。
パラリンピックの中身については措いて、今日はパラリンピックを伝えるテレビ放送のこと。

今回のパラリンピック関係放送では、初めてのことらしい“ぴったり字幕”という放送方法が使われた。
私が気付いたのは、実際に「あさイチ」という番組を見た時で、番組冒頭でアナウンサーが「本番組は“ぴったり字幕”で放送する」という説明があった。
hw414_AS20210818001740_comm.jpg 説明では、番組の動画は30秒前に収録したものが放送されていて、この30秒の間に字幕を作って差し込むという。

その効果を見るために、テレビの字幕をオンにした。
なるほど、しゃべっている言葉がいきなり字幕として出てくる。言葉では最後まで言い終わるのに時間がかかるわけだが、字幕は言葉を言い終わる前に最後の音まで文字になる。

この技術というか仕掛けについて解説している“ぴったり字幕”をどうやって出してるの?(NHK)によると、NHKの生放送の字幕は55人のスタッフが作成しているそうだ。
スタッフ一人ひとりの技量はもちろんだが、一片の字幕を一人が作るわけではなくて、初期入力、チェック、確認といった作業が組織立って行われているという。

音声認識技術を使っているのではと思ったが、今のところそうではないようだ。
もっとも55人のスタッフのうち1人をAIに変えるという時代はすぐに来そうに思う。


hw414_AS20210821001153_comm.jpg 仕掛けはともかく、視聴者として感想を述べると、違和感というのは全く感じない。前述のように、発言者が喋りだしたとたんに、その発言の数節が一気に表示されるから、字幕が追い付かないということにはならない。
“ぴったり字幕”であることをアナウンサーが説明するとか、テロップで流すとかしなければ、視聴者は気付かない。それに字幕表示は、外国映画などの放送以外では使わないのが普通だから、30秒の遅延はまったく気にならないだろう。

気付くとしたら、同じ生中継を2局で流して、一方だけが“ぴったり字幕”を使っていた時ぐらいだろう。


だからこれを生放送と言えるかどうかは、かなり理念的な問題である。思えば衛星放送の場合、地球から36,000km離れた衛星との間を放送電波が往復するから、0.2秒以上の時間がかかる。地上波放送でも、番組制作過程でも衛星通信を利用していたら同様である。(さらに衛星放送に載せたら0.5秒の遅れだろう)

これを生と言えないとしたら「月からの生中継です」なんてことは成り立たない。もっと言えば、星空の生中継とは?ということになる。
そういう電磁波の速さはともかく、ネット中継というのは数十秒の遅延は珍しくない。これも生中継だと思って視聴しているし、新型コロナ禍で出番が増えたZoomなどのテレビ会議はやはりいくらか感じられる程度の遅延がある。テレビ会議の場合は相手とのやりとりがあるから遅延が目立つ。

そんなとりとめのないことを考えていたら、ずいぶん前のことを思い出した。私的に競馬ファンを集めて、競馬放送のラジオ中継をみんなで聞いて、その場で賭けを行うという犯罪が摘発されたことがあったのだが、その主催者はラジオに細工をして、数分前の放送を録音したものがラジオから流れるようにし、自分は生放送を別途イヤホンで聞いて賭けていたのだそうだ。
この録音放送はさすがに生放送とは言えないだろうな。

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