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2015/09/30

有効な脅し - ルパン最後の恋(22)

※以下の文章は「ルパン最後の恋(22)」の内容に触れています。※


「ルパン最後の恋」は読んでいて理解に苦しむ場所もあります。しかし一方で、理解できそうな部分もでてきました。


創元推理文庫版では、コラが次のように言っています。

「(略)だいたい、わたくしがティユール館に滞在していることを知っている人は、まだほとんどいないのですから」(創元P130)

「違う」と最初に思ったのは、注目すべき点が違うということです。人数が限られているのは、コラがティユール城に滞在していることを知って居る人ではない。コラがレルヌ大公の娘ではなくハリントン卿の娘だと知っている人物では?!と思ったからです。

犯人がティユール城に滞在していることを知っていることは脅迫状で分かります。

「大尉殿
三十四番のはしけをご存知だろう。今日、昼の十二時に、そこで待っている。われわれから奪い取った金貨は、素直に返したほうが身のためだ。さもないとティユール城に滞在中の美しい令嬢が、このうえない辱めをこうむることになる。かつてインド総督まで務めたイギリス貴族の娘の名誉は、貴君に求められた代償に匹敵すると、納得していただけることと思うが……」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、以下早川と略す。P90-91)

この文面で注目するとしたら、コラがイギリス貴族の娘だと知っていることではないでしょうか。限られた人しか知らないはずの情報です(なのに、創元版は予審判事にしゃべっちゃってまってますが…)。ハリントン卿がインド総督を務めたというのは直接原作に書かれているわけではありませんが、元々ルブランはヒントをすべて書ききるようなことはしませんから。それに、名前を秘することによって脅しの効果が強まります。

「ルパン最後の恋」ではコラの出生は限られた人物しか知らないというのは前提で進んでいるとおもうのです。だからヘアフォール伯爵はティユール城を買ったのではないでしょうか。イギリス王室とは縁もゆかりもない他国の女性を英太子と結婚させるためにはそれなりのシナリオが必要です。まずヘアフォール伯爵が長く滞在したフランスに城を買う。気に入った国に別荘を持つのは自然なことです。その友人たる未来の英太子が訪ねていくのも自然なこと。そこにたまたまヘアフォールの友人の女性も滞在していて、英太子が見初めて結婚を願っても自然なこと(って文字通りに取らないでくださいね(^^;; 大衆に対する体裁がとれればいいのです)。ティユール城は仕組まれた自然を演出するための舞台だったのです。

こう考えると、ココリコ大尉が予審判事に手紙を持って行かせたわけも分かります。私も「何で自分で持って行かんのや」とは思いましたが、恋人(気取り)でない限り、見合い会場に乗り込むなんて間抜けたことはしないでしょう。


さて、ルパンはこの脅迫状を読んであわてました。

「大尉、さっき届いた手紙のことをお忘れでは? わたしとしては、大いに興味があるのだが」
「わかってます」と言うが早いか、サヴリーは手紙を取り出し封を切った。
そしてさっと目を通すと、怒ったような身ぶりで、くしゃくしゃの封筒をポケットに戻した。
「何ということだ」と彼はうめいた。(早川P90)

この前のシーンで脅迫状は何度か届いていたことがわかりますが、どうやら平気な感じだったのに、突然態度を変えています。

創元版はこれまでの脅迫状との扱いの違いが疑問だったのでしょう。

「でも、これまでにも、こういった手紙は何通も来ていたのでしょう? どうして、今日にかぎって、こんな馬鹿げた脅しを真に受けるのです?」
「これは本物の脅迫状です。これまでの手紙とは明らかにちがう。ただのこけおどしではないのです。文章から見て、おそらく書いた人もちがうでしょう。ちくしょう!いったい、どうなっているんだ? 確かに、奴らはこの数週間、ずっと私の行動を嗅ぎまわっている。(略)」(創元P124)

「書いた人も違う」そんなこと原作にありませんよ。じゃあこれまでの脅迫状を書いた人はだれだというのでしょう(というのが明示されていないので混乱するだけです)。


脅迫状に対する態度を改めたことについて、改めて原作を読むと気づいた(というか思いついた)ことがありました。

「それじゃあ、こんなこけ脅しを信じていると?」
「ええ、信じていますとも。何週間も前から、わざわざわたしの様子を探っていた連中がいるんです。昨晩盗まれた金貨をわたしが取り戻したことも、やつらはしっかり把握しています。そして自分たちのものだと思っているものを返すよう、迫っているのです。実にうまい手を考えたものだ。わたしにあきらめさせるのに、これ以上の策はないでしょうからね。(略)」(早川P91)

(ここ、創元P124と同じ個所です。)

相手がうまい手を考えてきたというわけです。今までの脅迫状と今回の脅迫状は何が違うのか。今までの脅迫状はいったいどういう内容が書かれていたのでしょうか。

彼は手紙の封を切らず、そのままポケットに入れた。
「読まないのですか?」とフルヴィエ判事がたずねる。
「ええ、中身は予想がつきますから。脅迫状ですよ」
「あなたに対しての?」
「ルパンに対してのです」(早川P85)

ああ、これか、と気づきました。つまり、いままでの脅迫状はルパンに対するものだった。しかし今回の脅迫状では、先ほど引用したとおり、ティユール城に滞在する令嬢を脅かすものだった。女性はルパンの弱点です。態度を変えるのは実に奴らしいじゃないですか。

「ほう」とホームズは驚いたように言った。「……でも、さっきは拒絶したじゃないか……自分のことでは……」
「自分のことだからですよ、ホームズさん。でも今は、ひとりの女性の運命がかかっている……愛する女性のね。ご存じのとおり、フランス人はこうしたことがらに、きわめて特殊な考え方をするんです。たとえその名がルパンだろうと、何の違いもありません。いや、むしろ、ルパンなればこそなんです」(「ルパン対ホームズ」ハヤカワ文庫P236)

相変わらずのようです(笑)


□2015/10/03 引用をハヤカワ・ポケット・ミステリに変更

※以上の文章は「ルパン最後の恋(22)」の内容に触れています。※

「リュパン、最後の恋」創元推理文庫の翻訳について 2

創元推理文庫を読み通しましたが、えんえん説明文を読まされている感じがして非常に疲れました。説明を盛って盛って盛って原作のままのページなんか一つもありません(主観的体感だけど、実際そうだと思う)。ルブランの文章の痕跡残ってないレベルです。だから読むのに非常に気が重かったです。創元版の翻訳者側の主張をそのまま受け取ることはできないので、記事に残しておきます。

なお、フランス語は読めませんので、原則早川書房版の翻訳を原作とします。(電子書籍を参照したのでページ数は表記していません)

まず、違和感を覚えた二箇所から。

1. コラの秘密

ココリコ(創元版ではコッコ大尉)が予審判事に話しているセリフです。コラの秘密を暴露しているのにはあきれてしまいました。

その人の名前はコラ・ド・レルヌ。さっきおっしゃっていたハリントン卿の実の令嬢にあたります。(創元P121)


他国の人間、一介の予審判事にまで不義の子だと知れわたっている女性がイギリス王室の王妃になれると思いますか。コラの出生はトップシークレットで知る人は殆どいないというのはこの話の前提になっているのではないでしょうか。

しかもココリコから話している。創元版がどういう考えか分かりませんが、原作ではあとで妨害工作ををしているとおり、ココリコは予審判事を完全に信用しているわけではない。忌憚なく話せる間柄ではないのです。(年齢だって見栄を張ります・笑)


2. 秘書の噂

違和感を感じた箇所の二点目。

「だったら、どうして、館を出たりしたのです? あれはただの脅しではありません。敵は本気です。ただ、誰があの脅迫状を書いたのかは、まだ、わかりませんが…」
と、その言葉に、コラが思いがけない反応を示した。
「それなら、オックスフォード公の秘書だと思いますわ。トニー・カーベットという名前です。わたくしは昨日、ティユール館で会ったばかりですが、いきなり馴れなれしい態度で接してきて、聞くに堪えないようなことをわたくしに言っていました。オックスフォード公の前では忠臣ぶっていますが、あれは偽善者です。偽善者で、裏切り者です。だいたい、わたくしがティユール館に滞在していることを知っている人は、まだほとんどいないのですから」(創元P130)

ここも「違う」と真っ先に思ったところです。「まだ」ほとんどいないということは「いずれ」知るひとがたくさんいることになるっていうことですよね。私コラはティユール館にいますよーって宣伝するつもりなんですか。そんなに長い間滞在するつもりなんですか。私の考えでは、コラ嬢がティユール館にいますよ(いたんですよ)と言いたい人はいます。館の持ち主ヘアフォール伯爵です。が、コラが他人が知るかどうかを気にするのはおかしいと思います。

それは脇においても、我慢ができないことがあります。べ、べつに恋愛対象としてみてるわけじゃないからっ、って各々思っている二人が、他の男からセクハラ受けてるの、ってただ言って、ただ聞いて、って何なんですか。嫌な思いをしたなら、さっさと家に帰ればいいじゃないですか。続けて滞在する意味は何なんですか。

原作はこうです。嫌な奴の名前を口にする必要なんてありません。

「あの脅迫状は重大です。誰が出したのか、わかっているのですか?」
「おそらく、オックスフォード公エドモンドの秘書でしょう。裏切り者で偽善舎で、信用ならない男です」(早川)

このあたりからああ、分かっていないんだと気づいたので、少しは気が楽になりました。


創元版は文章自体が読みにくいと思います。この内容はこのことを言っていて、この箇所はあの場所のことを差しているというようなことを調べた演習ノートにまとめた内容を本文に混ぜ込んだみたいな感じ。だから同じ内容が何度も繰り返されるし、場面場面で必要な情報の取捨選択ができてなくて読みにくいのです。

調査不足の箇所もあります。

セーヌ・マリティーム県のリールボンヌの古代劇場を復元したのは、この私なのです。(創元P104)

ルブランの生存中はセーヌ・アンフェリウール県で、セーヌ・マリティーム県になったのは1955年です。(原作は単にリールボンヌ) リールボンヌは「カリオストロ伯爵夫人」や「バール・イ・ヴァ荘」に出てくる地名。県名よりノルマンディー地方と書く方がルパンシリーズの読者には分かりやすいと思いますけど。


次の個所は、どうしてこうなっているのか分かりません。(原文が行方不明でして調査できてません…)

そして、七月十五日の夕方に、金貨を積んだ飛行機がイギリスの飛行場を飛びたつと、新聞社にはその状況を知らせる至急電報が続々と入ってきた。
《飛行機は金貨の入った袋をふたつ積んで出発し、昨晩、カレーの上空を通過した。いっぽうパリ郊外にあるル・ブルジェ飛行場では、警官や憲兵、そしてフランス銀行が雇った警備員たちが待機している》
《午後十時、飛行機は無事に飛行場に到着した。だが、すぐに乗務員が確かめてみると、金貨の入った袋はふたつとも消えていたという》(創元P65)

その日の朝、《飛行機から金貨の入った袋が消えていた》というニュースがまだ報道される前、コラがブローニュの森の散歩から帰ってくると、ヘアフォール伯爵が客間で待っていた。
「コラ、今日はどうしても貴女に聞いてほしいことがあるのです」
コラの顔を見ると、伯爵は真剣な面持ちで切りだした。(創元P66)

その日とは何日でしょう。飛行機が出発したのは7月15日だとして、昨晩とは7月14日ですか。

原作は次の通りです。

七月十六日、この事件について新たなニュースが続いた。
《昨夜、二つの袋を積んだ郵便輸送機がカレー市上空を通過したと連絡があった。
ブールジェの飛行場では、警官隊、憲兵隊、フランス銀行に雇われた警備員の配備が確認された。
十時、飛行機到着。飛行中は何のトラブルもなかった。ところが二つの袋は、機内から消えていた》(早川)

その日、コラがブローニュの散歩から帰ると、居間でヘアフォール伯爵が待っていた。伯爵は重々しい表情をしている。
「コラ、折り入って、お話ししなければならないことがあって」(早川)

7月16日の新聞報道で、7月15日に飛行機が出発したことが報道されたと解釈できます。たぶんコラが話を受けたその日とは7月16日なのでしょう。とくに意識する必要なく読めます。


フォローとして早川書房版の誤訳を直したとのことですが、こちらのブログで指摘されている箇所を確認しておきます。

Le dernier amour d'Arsene Lupin : ときどき日誌 sur NetVillage
http://netvillage.exblog.jp/21417470/

「失礼ながら、陛下、この事件は第二のアンギャン公事件とはならないでしょうね? その手の話に関わるのはごめんです。わたしは軍人であり、政治家ではありませんから。(略)」(ハヤカワ文庫P15)

ハヤカワ文庫版の「政治家」は誤りだということですが、創元推理文庫では正しく「警察官」と訳されています。

Je suis un soldat, pas un policier.(Balland、P27)

「私は軍人であって、警察官ではありません。(略)」(創元推理文庫P28)


とはいえ多少誤訳があるとしても、全体的に信用できるのは早川版だと思います。

監訳者のあとがきに、足りない部分を他の部分から持ってきた情報で補ってみると理解できるとあるけれど、他の部分を読めばわかるから書かないのでしょ。情報をどこでどう出すか、というのは大きなポイントではないですか。書かないというのも一つの選択で、すべて作者の勝手です。そこを考慮せずに足しこめばいいというのは原作のやんわりとした全否定です。

(ほかの翻訳を引き合いに出したくはないですが、殆どのリライト作品は、全体を見据えた上で必要と思う個所を作り直して原作を取捨選択していますが、「リュパン、最後の恋」は、原作がなにか発しようとするたび、その出口でゆがめられているような息苦しさを感じます。)

ルブランの原作は読者に親切ではないし、今の人には受けがよくないでしょうね。でも私が読みたいのはルブランの原作です。

モーリス・ルブラン「リュパン、最後の恋」創元推理文庫の翻訳について

2015/09/21

オーディオブック「怪盗ルパン対名探偵ホームズ」

スタジオ・エコー制作。
インターネットで配信されているオーディオドラマです。現在はiTunesで配信されています。

スタジオ・エコー : 怪盗ルパン対名探偵ホームズ
http://www.s-echo.co.jp/?p=860
iTunes - 怪盗ルパン対名探偵ホームズ
https://itunes.apple.com/jp/audiobook/guai-daorupan-dui-ming-tan/id365347803

□キャスト
ルパン:落合弘治
ホームズ:根本泰彦
ガニマール警部:安原義人
クロティルド:きっかわ佳代
フォランファン:川本克彦
ジェルボア氏:石井隆夫
シュザンヌ:宮山知衣
ドテナン氏:入江崇史
クロゾン伯夫人:高橋直子
下男:藤原堅一
記者:粟野志門

原作は「金髪婦人(2-1)」。5つのトラックに分かれていて、聴きやすいです。
(大まかにいうと、3つ事件が起きて、ホームズが動いて、ラストという風に分かれています)


「ガニマール警部:安原義人」を見過ごせるはずはなく、配信開始時よりお安くなっていたのでダウンロードしてみました。ガニマールはナレーションも兼ねています。でもガニちゃんだから、話が進むにつれお呼びでなくなる…(ノω`*)

プレビューを聞いた感じては、明るい感じに脚色してあるのかなと思っていたら思いのほか、原作に忠実でした(もちろんアレンジはあります)。プレビューはガニマールの台詞で、ガニマールはコメディ・リリーフですからね(笑)

このオーディオドラマのルパンはちょっと大人しいかな。フランスのラジオドラマ(ミシェル・ルー主演)でのルパンの高笑いが印象に残ってるので(笑) 聞く人が聞けば嫌味で生意気なんだろうけど、原作のルパンを知っているので、大人しくて聞きやすいと感じてしまう罠。ルパンとクロティルドとのシーンもしっとり演じられていてよかった。

10歳までに読みたい世界名作『怪盗アルセーヌ・ルパン』発売

芦辺拓/編・訳、清瀬のどか/絵。学研教育出版、2015年4月10日発売。
10歳までに読みたい世界名作『怪盗アルセーヌ・ルパン』 | 学研出版サイト
http://hon.gakken.jp/book/1020419000

□収録内容
エピソード01 「怪盗ルパン対悪魔男爵」…獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)
エピソード02 「怪盗ルパンゆうゆう脱獄」…アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)

物語ナビとプロローグが付いていて、物語ナビはアルセーヌ・ルパンについての紹介やこれから始まる物語についての導入になっている。プロローグに「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」のラストシーンが織り込まれている。


イラストがオールカラーで、内容も分かりやすくまとめられています。文章も読みやすかったです。
アレンジもありますが、検事に時計を返すシーンが挿入されたりと原作をふまえた内容になっています。


累計20万部突破!大人気児童書シリーズに「ふしぎの国のアリス」「怪盗アルセーヌ・ルパン」登場!|株式会社 学研ホールディングスのプレスリリース
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000462.000002535.html

CD「ルパン対ホームズ オリジナル・サウンドトラック」発売

1981年に放送されたアニメ「ルパン対ホームズ」のサントラCDが発売されました。2015年6月24日発売。

日本コロムビア | ルパン対ホームズ オリジナル・サウンドトラック(ダイジェスト試聴あり)
http://columbia.jp/prod-info/COCX-39135/

アニメの制作は東映動画(現・東映アニメーション)。アルセーヌ・ルパン役は広川太一郎さん。
TVM アニメ ルパン対ホームズ - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=235589
ARSENE LUPIN VS. SHERLOCK HOLMES (TOEI ANIMATION FILM LIST)(英語)
http://corp.toei-anim.co.jp/english/film/arsene_lupin_vs_sherlock_holme.php

私はアニメ未見です。広川ルパン見たい。


「ルパン対ホームズ」が初CD化、1981年にフジ系放送アニメのサントラ。 | Narinari.com
http://www.narinari.com/Nd/20150632282.html
テレビスペシャル『ルパン対ホームズ』のCD発売! その1 - アニメに感謝
http://animenikansya.blog.fc2.com/blog-entry-143.html
テレビスペシャル『ルパン対ホームズ』のCD発売! その2 - アニメに感謝
http://animenikansya.blog.fc2.com/blog-entry-144.html

コロムビア サウンド トレジャー シリーズ|Columbia Sound Treasure Series
http://columbia.jp/soundtreasure/

さいとうちほ「VSルパン」第2巻発売

雑誌「増刊フラワーズ」で連載中の漫画。小学館、2015年7月10日発売。
小学館:コミック 『VSルパン 2』
http://sol-comics.shogakukan.co.jp/solc_dtl?isbn=9784091374332

□収録内容
第4話 カリオストロ伯爵夫人1
第5話 カリオストロ伯爵夫人2
第6話 カリオストロ伯爵夫人3

原作は「カリオストロ伯爵夫人(13)」。次巻に続きます。


増刊flowers
http://flowers.shogakukan.co.jp/zoukan/

角川つばさ文庫「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」発売

モーリス・ルブラン作、高野優ほか訳。2015年07月15日発売。
角川つばさ文庫/怪盗紳士 アルセーヌ・ルパン
http://www.tsubasabunko.jp/special/sp1507-b.php
角川つばさ文庫/怪盗紳士 アルセーヌ・ルパン
http://www.tsubasabunko.jp/bookdetails/index.php?pcd=321503000164

□収録内容
1 アルセーヌ・ルパン、逮捕される…アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)
2 獄中のルパン…獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)
3 ルパンの脱獄…アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)
4 謎の乗客…謎の旅行者(1-4)
5 王妃の首飾り…王妃の首飾り(1-5)
6 ハートの7…ハートの7(1-6)
7 アンベール夫人の金庫…アンベール夫人の金庫(1-7)
8 黒真珠…黒真珠(1-8)
9 遅かりし、シャーロック・ホームズ…遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)

「王妃の首飾り」のからくりを図解した「からくりの説明」が巻末に付いています。

訳文は子供向けにアレンジされていて内容の刈り込みもあるようです。

仲村佳樹「スキップ・ビート!」第36巻、第37巻入手のこと

36巻。
表表紙が蓮。裏表紙が尚。
(カバーイラスト図書カードの抽選プレゼントがありましたが当然締切済です(^^;;)

電子書籍版も買ってみたのだけれど、見られるのは表表紙だけですね。裏表紙や表紙の折り返しのイラストも楽しもうと思うと紙版必須です。
(37巻は9月現在未配信)


37巻。
裏表紙のマスカレード蓮様。美女1万人侍らせててもおかしくないですよ?(^^;;
裏表紙折り返しはマスカレード蓮様がキョーコにキス。裏表紙とは変わって初々しいキョーコに合わせております。

カバーイラスト図書カードの抽選プレゼントがあります。表表紙と裏表紙と裏表紙の折り返しの3点。応募締め切りは2015年10月20日。


スキップ・ビート!
http://www.hanayume.com/skipbeat/

36、37巻分を補完。
仲村佳樹「スキップ・ビート!」サブタイトル(単行本収録分)


なお、今のところ単行本未収録となっている「ザ花とゆめ」に掲載された読み切りが、インターネットで公開されています。
スキップ・ビート!|花LaLa online
http://www.hanayumeonline.com/magazine/magazine26.html

雑誌「ザ花とゆめ」6/1号増刊号に「スキップ・ビート!」SP番外編が掲載

2015/09/19

雑誌「月刊ヒーローズ」2014年9月号 「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」第17回

森田崇氏による漫画。モーリス・ルブラン原作。
Chapitre17「奇巌城 episode4 対決―その1―」
カラー扉。『「奇巌城」編これまでのストーリー』と「登場人物紹介」あり。

「アルセーヌ・ルパン死す」の新聞記事に涙する私。これまでのことを振り返りながら、新聞に投稿する記事を書いていた。そこに一人の男が歩み寄る。


カラー扉の右端に縦書きで「aiguille creuse(空洞の針)」。前回でボートルレ君が解読してくれましたね。感慨深い。

ソニアにの死ついて原作はあまり語らないけれど、ルパンに非があるとまでは言えなくても、若気の至りだったり、無茶だったり、結局ルパンにつきあったから、なんだろうな…と思います。だからこそやり場のない悲嘆の持って生きようがなくて、普段人には頼らない人間が私のところに来るというのがいいんです。

最後、警戒心バリバリのボートルレ君が! まずは外出できるまで回復してよかった。


森田崇「アバンチュリエ」情報

「花とゆめ」2014年20号 スキップ・ビート!感想

著者:仲村佳樹


空港でたこ焼きを食べながら、日本に帰ってきたことを実感するキョーコ。携帯電話の電源をONにすると、すぐ着信があった。社さんが迎えにきてくれたのだ。ミッション中は社さん側から連絡することができないから状況が知りたいと、同じく状況を知りたい人がいて社さんが派遣されたのだ。社さんを派遣した人とは、待ち受けるばかでかい車で一目瞭然、ローリィのことだ。ローリィ自身は仕事で来られなかった。


車中でいろいろと業務連絡交わす二人。セツは暑さにまけてホテルにこもりきり、そのうちカインによってイギリスに返されるという設定になっているらしい。お役目終了ということで敦賀さんにもらった手書きのスタンプを見せるキョーコ。帰ってきたらちゃんとスタンプを押してくれるそうですと報告する。そのときは俺からも、と社さんが申し出る。カイン・ヒールという謎だらけの男をサポート無しじゃ厳しい事もあっただろうし、キョーコちゃんは本当によくやってくれたからと。そんな謎だらけな男をやっている蓮自自身がすでに謎だらけなんだけどと。

その言葉を聞いてキョーコは社さんに何かを尋ねようとするがやめて、「マネージャーでも担当している役者のことを全部知ってるわけじゃないんですね」と言う。社さんは「特殊な業界だからと、特殊な事情をかかえて仕事をしている人間は少なくないんじゃないかと思うよ」と答える。キョーコはいつか敦賀さんが自分からはなしてくれるまでは詮索するのはやめようと思う。社さんは社さんで、蓮の謎部分には深く足を踏みいれすぎてはいけないとマネ感(マネージャー第六感)が言っているし、気になるけど誰にも聞かないようにしようと思う。そして二人とも、待っていても蓮が自分から話すなんて瞬間は一生こないかもしれないけどとため息をつくのだった。

キョーコが日本にいない昨日、BOX"R"の初回が放送されていた。社さんが演技をほめるけれど、キョーコは初回放送の日時を気にしていなかった様子。

社さん送ってもらったテレビ局でキョーコは天宮さんと会う。天宮さんはBOX"R"の初回視聴率が最悪だったから気が沈みがち。キョーコはBOX"R"はスロースターターなドラマで、悪役が憎ければ憎いほど主人公に感情移入して、主人公が立場を逆転させるところにカタルシスを感じて視聴率が上がっていくはずだと励ます。天宮さんは視聴率が上がっていく度自分の好感度が落ちていくのだろうと落ち込む。

ドラマはこけてもいいから知名度を上げる方法ないかと吐露する天宮さんに、バラエティにでるといったけれど、やはりダメそうなんですか?と聞く。もしかして芸人さんに何か言われた?と聞こうとすると、それは天宮さんの怒りの沸点にふれたらしい。「千織ん(ちおりん、天宮さんのこと)’S 毒ノート」を渡される。毒ノートは怨キョがしっかり感じるほどの怒りの波動に満ちていた。


深夜だるまやに帰りついたキョーコに客が来ていると告げられる。キョーコが留守の間何度か来たらしい。どうしても直接会って話したいことがあるという。客が待っている居間の前で、保護者承諾の署名を母に貰ったから、まさか母ではとためらうが、意を決してドア開けると、そこにはのんびり食事していた尚がいた。

なんでアンタがここに居るの?(←意訳(^^;;)と喉から血が出るほど思い切り叫ぶキョーコ。尚はパスポートを取ったんだって? 冴菜(キョーコ母)から連絡があったと告げる。


特に好物というわけでなくても、たこやき食べて日本だ~って分かる気がする(海外行ったことないんですけどね(^^;;)
尚、筍御飯のおかわり要求するとはずうずうしい奴。


次回は22号に掲載。
「スキップ・ビート!」感想のバックナンバーはこちらから。

「花とゆめ」2014年19号 スキップ・ビート!感想

著者:仲村佳樹


キョーコが意を決して蓮の部屋のチャイムを押すと、蓮が出迎えた(衣装はB・J)。キョーコが帰国の挨拶にきたのだ。お目付け役である自分がいなくなっても食事、とくに朝食はきちんと摂ってくださいと厳命する。蓮がご飯くらい一人で食べられるし、キョーコが試験でいなかったときも人並みに生活していたと言っても、敦賀さんの人並みなんて信用皆無だとバッサリ。何か証拠を残してもらおうと思案する。

そのキョーコの姿を見て、蓮はあまりにもいつもどおだなと思う。セツカ@キョーコが愛華に対して啖呵を切ったときの違和感。セツがあんな風に他人にまで兄への独占欲をぶつける様なことはしなかった。キョーコが試験でセツを休む前までは。セツの演技が変わったのはキョーコに何か心境の変化があったとしか思えない。たとえば、俺に独占欲を伴うような感情を。

食事の証拠を携帯動画に撮ってもらおうと思いついたキョーコに対して、蓮は、じゃあ最上さんのメールアドレス教えてと言う。しかしキョーコは日本にもどって来たときに確認するからとビシリと拒否。蓮は(キョーコが自分のメールアドレスを知りたがらないから)特別な感情は幻想だったと落胆する。「証拠なんて残さなくても君が守ってくれと言うのならどんな無茶な約束だって守りと押して見せるのに」という蓮のセリフにも、キョーコは冷めた目で返す。事実上ヒール兄妹はこれで終わりなのに名残惜しいのは俺だけかと思う。

キョーコが出かける時間になり、約一か月間ありがとうございましたとお礼を言う。お礼を言うなら自分だと水性ペンを取り出して、キョーコの手のひらになにやら書き付ける。「点数がつけられない」無限大点のラブミースタンプを。(描きにくい場所に描きにくい体勢でフリーハンドで描いているのに妙にうまい(笑)) 日本へ帰ったらちゃんと本物を押させてもらうからと心から礼を言う。ソレが消えてしまう前に帰るからと。その言葉をキョーコは暖かな笑顔とはいという返事で受け入れる。

ホテルから空港へのシャトルバスの中で村雨泰来(B・Jの競演者)を見かけたという日本人観光客の会話が聞こえてきて、キョーコはふと敦賀さんの本名ってなんていうのだろうと気になり出す。しかし、ローリィの蓮の事情をはなすには蓮の許可が必要だという言葉と、蓮のつらそうな顔を思い出してしまう。

そのころモー子さんは出演しているドラマシリーズの次作品の台本を受け取っていた。次回も飛鷹君と共演できることに安心する。今回の犯人は弁護士ということで、監修がついているかもと確認する。そこでモー子さんは弁護士監修の「最上冴菜」という名前に釘付けになる。


心境の変化はあったんですよ蓮さん(笑) キョーコの感情表現が一筋縄でいかないからなかなか蓮には見破れないけれど、描かれたスタンプを手のひらに包み込んでいるキョーコの表情が物語ってます。


雑誌の表紙が「スキップ・ビート!」でした。ドレスアップしたキョーコと蓮。「花とゆめ」通巻1000号記念のパーティーかな?
(この号の表紙が単行本37巻の表紙になりました。)


次回は20号に掲載。
「スキップ・ビート!」感想のバックナンバーはこちらから。

2015/09/15

スマートフォンアプリ「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」配信中

スマートフォン向けの漫画連動型脱出ゲームです。2015年7月16日配信開始。

怪盗ルパン伝アバンチュリエ|脱出ゲーム
http://aventurier.cybird.ne.jp/
漫画×脱出 怪盗ルパン伝アバンチュリエ on the App Store on iTunes
https://itunes.apple.com/jp/app/man-hua-tuo-chu-guai-daorupan/id970969983?l=en&mt=8

【ストーリー】
「シャトー・ドゥ・トリュック」と呼ばれる古城の地下にある、「サン・ジョルジュの瞳」という巨大ルビーを狙うルパン。
地下に狙いを定めたものの、そこは無数の謎と仕掛けが散りばめられた部屋がいくつも連なって、迷路のようになっていた。
果たしてルパンはサンジョルジュの瞳を手に入れることができるのか!?


私もインストールしましたが解けません(^^;;
アンチョコが出回っているようですが見ない見ない…

脱出ゲーム | CYBIRD LABO
http://escapegame.cybird.ne.jp/
『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』 史上初!マンガ連動 謎解き脱出ゲームをiPhoneでサービス開始!
http://www.cybird.co.jp/wp-content/uploads/2015/07/20150716final_01.pdf

サイバード、『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』のiOS版を配信開始 史上初のマンガ連動謎解き脱出ゲーム 原作者監修のオリジナルストーリーを展開 | Social Game Info
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史上初のマンガ連動謎解き脱出ゲーム「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」がiOS向けに配信開始|Gamer
http://www.gamer.ne.jp/news/201507160098/

2015/09/14

森田崇「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」第4巻発売中

モーリス・ルブラン原作。雑誌「月刊ヒーローズ」連載作品。
第4巻「奇巌城(中)」が発売中です。発売日は2015年5月2日。原作は「奇岩城(4)」。

怪盗ルパン伝 アバンチュリエ 4 - 株式会社小学館クリエイティブ
http://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b196270.html

収録内容は「episode4 対決」から「episode7 エギーユ論」の途中まで。
巻末コラム「フランス革命からナポレオン、普仏戦争、そしてアルセーヌ・ルパンへ」あり。

電子書籍でも配信されています。
怪盗ルパン伝 アバンチュリエ - 電子書籍・コミックはeBookJapan
http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/174100.html?volume=4
怪盗ルパン伝 アバンチュリエ / 森田崇 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0273876
Amazon.co.jp: 怪盗ルパン伝 アバンチュリエ4(ヒーローズコミックス) 電子書籍: 森田崇: Kindleストア
http://www.amazon.co.jp/dp/B00WW2VMAQ


連載は最新の2015年10月号で、episode9まで進んでいます。毎号クライマックス!
怪盗ルパン伝 アバンチュリエ 【漫画】森田 崇 【原作】モーリス・ルブラン|月刊 ヒーローズ
http://www.heros-web.com/works/aventurier.html
怪盗ルパン伝 アバンチュリエ特集|月刊 ヒーローズ
http://www.heros-web.com/campaign/aventurier/


当ブログで紹介しそびれているの第3巻と登場編の内容を少し。
第3巻「奇巌城(上)」の収録内容は「episode1 銃声」から「episode3 死体」まで。
巻末コラムは「ルパン、奇巌城の日本漫画への影響 ~イジドール・ボートルレと少年探偵・少年ヒーロー物の系譜~」

登場編上巻「怪盗紳士」の収録内容は「アルセーヌ・ルパンの逮捕」「獄中のアルセーヌ・ルパン」「「アルセーヌ・ルパンの脱獄」「王妃の首飾り」「謎の旅行者」「ハートの7」「遅かりしHerlock Sholmes」
巻末コラムは「アルセーヌ・ルパンの時代」
アルセーヌ・ルパン先生による「怪盗紳士学校ベル・エポック科」付

登場編下巻「金髪婦人」の収録内容は「赤い絹のショール」「金髪婦人」「アンベール夫人の金庫 プロローグ 19歳のアルセーヌ・ルパン」「黒真珠」
巻末コラムは『「ハーロック・ショームズ」は「シャーロック・ホームズ」か?』「ルパン対ショームズ。勝利者は…?」
アルセーヌ・ルパン先生による「怪盗紳士学校ベル・エポック科」付

「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ 登場編」は講談社刊「アバンチュリエ ~新訳アルセーヌ・ルパン~」の再刊ですが、「黒真珠」と「怪盗紳士学校ベル・エポック科」は描きおろしです。
話の流れは「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ 登場編」上下巻→「怪盗ルパン伝 アバンチュリエ」1~4巻の順番です。


森田崇「アバンチュリエ」情報

2015/09/08

南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その2)

いくつか引用してみよう。
(漢字、仮名遣いは現代のものに改めた。)

○冒頭

【A】
関東大震災の年だから大正十二年の元日の夕方であった。山村猛氏は明治神宮参拝の帰りに原宿駅のプラットフォームで電車を待って居た。
日本人には珍しい六尺近い立派な体格。六十歳の老人とは思えない若々しい頬の色。山村氏はホームに群がる人混から離れて、太いステッキに逞しい両手をきちんと載せてどっしりと立って居た。(1月号、P237)

【B】
巨人軍対中日軍の試合がすんで、ファンが後楽園スタジアムからながれだした。
たいへんな人ごみである。水道橋駅まで黒ありのようにぞろぞろとつづいている。
桂木さんもその人ごみの中をふとい竹のステッキを左のひじにぶらさげて歩いていた。
ながい間一ども雨がふらなかったのでひどいほこりだ。もうもうと土けむりがあがって桂木さんの黒靴も灰色にかわっている。(P11)

【C】
(はしがき部分は省略)
ジャイアンツ対ホエールズの試合がすんで、ファンのむれが後楽園スタジアムからながれだした。
たいへんな人ごみだ。水道橋駅まで、黒アリの行列みたいにぞろぞろつづいている。
青年探偵佐久良竜太郎も、その人ごみの中を歩いていた。長いあいだ一ども雨がふらなかったので、ひどいほこりだ。もうもうと土けむりがあがって、佐久良探偵の赤靴も白くよごれている。(P205-206)

○敵の首領の姿(【A】は副首領)

【A】
と、奥の扉が音もなく開いて素晴らしく大きな支那人が静かに山村氏の前に歩み寄った。
「山村大人、ようこそお出で下さいました」
重々しい響きの籠もった満州語。(1月号、P242)

【B】
紳士は黒のモーニングに縞のズボンエナメルキッドの短靴に灰色のスパットというしゃれた見なりで、手には黒いシルクハットを持っている。
美しいし栗色のかみの毛をまん中からきれいにわけ、左の目に片眼鏡をはめこんでいる。非常に上品でものしずかなたいどだ。
年は四十五六歳であろう。みじかい口ひげのかげにかすかなほほえみが浮かんでいる。(略)
「桂木さん、ようこそおいでくださいましたな。」
非常に発音の美しい、なめらかなフランス語でそういった。(P16)

【C】
その紳士は黒のモーニングに縞のズボン、エナメルキッドの短靴に灰色のスパッツという、パリじこみのしゃれた身なりで、手には黒いシルクハットをもっている。
うつくしい栗色のかみの毛をまん中からきれいにわけ、左の目に片眼鏡をはめこんでいる。ひじょうにスマートで上品で、ものしずかな紳士だ。
年は四十五、六才であろう。みじかい口ひげのかげにかすかなほほえみが浮かんでいる。(略)
「ムッシュー・サクラ、ようこそお出でくださいましたな」
ひじょうに発音の美しい、パリ風のフランス語でそういった。(P226-227)

いくら表面をとりつくろっても中身は悪の馬賊(^^;;

○敵の脅し

【A】
何時の間に現われたか、薄暗い部屋の隅々には五人七人づつ怪しい支那服姿の人影が立って居たが、此時一斉に短剣を引き抜いた。
電燈が消えた。殺気のみなぎった暗闇の室内にストーブが赤々と燃え盛って居た。
『死か、青銅鈴を引き渡すか。選べ!』
兇賊の本性を現わした副首領は呻くように低く叫んだ。隅々の賊共もじりじりと山村氏の身近く迫って来た。
山村氏は唇を噛んだ。山村氏は青面鬼賊の如何に恐るべきものかをよく知って居た。其の両刃の短剣には劇毒が塗ってあるのだ。ちょっとした擦り傷からでも猛烈な毒は全身に拡がって命を失わせる。(1月号、P246)

【B】
すると、うすぐらい部屋の四方のすみに三人五人づつ怪しい男が立っていたが、このとき一どにさっと短剣をひきぬいた。
電燈がぱっときえた。すさまじい殺気のみなぎりながれたくらやみの室内にストーブの火があかあかともえ、その火が怪しい男どものものすごい顔をちらちらとてらしていた。
「桂木、黄金鈴をわたすか、それとも貴様の命をわたすか、三分間のうちに返答せいっ。」
とつぜん大怪賊の本性をあらわしたルパンが猛獣のほえるようにさけんだ。と、すみずみの賊どもが短剣をふりかぶってじりり、じりりっと桂木さんの身近にせまって来た。

   消えうせた怪賊

怪賊どもは桂木さんをとりかこんだ。
そのするどい短剣にはおそろしい猛毒がぬってあるので、ちょっとしたかすり傷からでも、全身に毒がまわって五分とは生きていられないのだ。(P19)

【C】
すると、うしろのうすぐらい部屋のすみに三人五人ずつの怪しい男が立っていたが、このとき一どにさっと短剣をひきぬいた。
電灯がぱっときえた。すさまじい殺気がひろがった。まっくらやみの室内にストーブの火だけがあかあかともえ、その火が怪漢どものものすごい顔を、てらてらと照らしだしていた。
「サクラ、黄金板をわたすか、それともきさまの生命をわたすか、三分間のうちに返答しろ」
とつぜん、大怪盗の本性をあらわしたルパンが猛獣のようにほえた。と、怪漢どもが短剣をふりかぶって、じりり、じりりと佐久良探偵の身近にせまった。

   二少年の手柄

怪漢どもは佐久良探偵をとりかこんだ。そのするどい、短剣にはおそろしい猛毒がぬってあるので、ちょっとしたかすり傷からでも全身に毒がまわって、五分とは生きていられないのだ。(P238-240)

この後、脅しに屈しない態度を我が身をやけどにさらして示す、山村氏も桂木さんもスーパー熟年である。さすがの佐久良探偵もそこまではしない、代わりに拷問をうける。山村氏も桂木さんも敵の残虐さ故の行為なんだけど、実際に描写がある分、佐久良探偵と対するルパンがいちばん残虐に思えるかも(^^;


文章は全面的に直しているが、ラストの消化不良感は変わらない。題材も持て余し気味で、宝やその鍵もだが、【B】と【C】では孤児たちは途中から空気となってしまう。【B】の桂木さんの長男(蒙古の奥地で行方不明)も伏線と思いきや空気だ(^^;; そもそも主人公が宝を追う理由、敵が子供を誘拐する理由がはっきりしているのは【A】だけなのだ。敵が改心しないうえに、満州に渡ってから超絶駆け足の佐久良探偵版が一番消化不良感増し増しという…(^^;;


余談ながら、 「冒険少年」の同じ号に江戸川乱歩の「黄金の恐怖」という作品が載っている。内容は「黄金仮面」である。改作のヒントはここにあるのかもしれない。

前→南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その1)


□参考文献・参考サイト
・『南洋一郎と挿し絵画家展』弥生美術館、2004年
・南洋一郎(みなみよういちろう):あきる野市デジタルアーカイブ
http://archives.library.akiruno.tokyo.jp/about/minami.html

南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その1)

南洋一郎のオリジナル作品のなかに「洞窟の魔人」という本がある。濃いルパンファンの中では知られた作品である。表題作の他に「佐久良探偵と怪盗ルパン」という作品が収録されているからだ。南氏は自分の創造した探偵を怪盗ルパンと対決させているのである。ちなみに「洞窟の魔人」の発行は1956年、ポプラ社の怪盗ルパン全集が刊行されるのは1958年からである。

「佐久良探偵と怪盗ルパン」に出てくるルパンは悪役であり、強きをくじき、弱きを助ける義賊のルパンではない。そのため読むと違和感を覚えずにはいられない。

弥生美術館で開催された展示会の図録『南洋一郎と挿し絵画家展』では、南が自作に怪盗ルパンを登場させた作品として「蒙古王の宝冠」の名が挙がっている。「佐久良探偵と怪盗ルパン」を読んだときに、登場人物の名前から「蒙古王の宝冠」のリライトかもしれないと思って「蒙古王の宝冠」を探して読んでみた。果たしてリライト前の作品だった。これもルパンは悪役で、後の「怪盗ルパン全集」に出てくるようなルパンではない。

さて昨今、国立国会図書館が所蔵資料のデジタル化を進めていて、その中に、南洋一郎の「蒙古王の秘宝」という作品名が目についた。読んでみると、思った通り「蒙古王の宝冠」の原型であった。しかも、出てくる悪役は馬賊。ルパンではないのである。


出版順に並べると次の通りになる。

【A】蒙古王の秘宝(1930年・昭和5年)…悪役は馬賊
「少年倶楽部」1930年1-3月号
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(1)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764756
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(2)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764757
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(3)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764758

【B】蒙古王の宝冠(1948年・昭和23年)…悪役はルパン
「冒険少年」1948年10月増刊号

【C】佐久良探偵と怪盗ルパン(1956年・昭和31年)…悪役はルパン
『洞窟の魔人』ポプラ社、1956年
国立国会図書館デジタルコレクション - 洞窟の魔人
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1638794

「蒙古王の宝冠」(以下【B】とする)や「佐久良探偵と怪盗ルパン」(以下【C】とする)でルパンが注射で仮死状態になったり、部下の団員が捕まるより死を選ぶなどは、原作のルパンとは相容れない。元々「蒙古王の秘宝」(以下【A】とする)では青面鬼賊という悪の馬賊の一団だった。ルパンが「満州蒙古はわれわれが自由にあばれまわれる大天地だ」(【C】P256)と言うのも元々馬賊の副首領ゆえのセリフなのである。


主な違いをまとめてみた。

主人公宝の元の主宝の鍵誘拐される子供
【A】山村猛青面鬼賊の副首領ジンギスカン青銅鈴(全部で六つ)李少年(主人公の恩人の馬賊・李将軍の忘れ形見)
【B】桂木赤短剣団の首領ルパン、副首領リージンギスカン七つの黄金鈴桂木陽子(主人公の娘)、八太郎(主人公が保護した孤児)
【C】佐久良竜太郎黄金短剣団の首領ルパン、副首領リージンギスカン七つの黄金板桂木陽子(主人公の姪)、八太郎(主人公が保護した戦災孤児)、三吉(主人公の助手。戦災孤児)

□あらすじ(共通)
主人公はある日怪しい外国人を目撃する。その外国人は悪事を働く秘密団体の印を身につけていた。跡をつけると、秘密団体の首領(副首領)が待ち構えていた。首領(副首領)はジンギスカンの宝を追っていて、主人公が持っている宝の鍵を渡せというのだ。主人公は脅迫を拒むが、今度は主人公の庇護する子供が誘拐されてしまう。

・前半(満州に渡る前)の【B】と【C】の内容はほぼ同じ。
・【B】と【C】では冒頭で主人公と孤児が出会うが、【A】には存在しない。
・【A】と【B】では満州に渡る前に脱獄した敵と横浜のホテルで対峙するが、【C】では省略されている。
・【A】と【B】では満州に渡ってから敵が持っていた宝の鍵が偽物だったという展開があるが、【C】では省略されている。
・【A】では横浜のホテルの事件で敵が改心し、誘拐された子供を取り戻すが、【B】と【C】では満州に渡る飛行機の事件で、敵の部下が改心する。
・【A】の敵である副首領の役割が、【B】【C】では首領のルパンとなり、改心する部分のみ部下の副首領に負わせている。


次→南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その2)

2015/09/07

ハヤカワ文庫から「ルパン対ホームズ」が発売

ハヤカワ文庫からモーリス・ルブラン「ルパン対ホームズ」が発売されました。平岡敦氏による新訳です。
ルパン対ホームズ | 種類,ハヤカワ・ミステリ文庫 | ハヤカワ・オンライン
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000012802/

ハヤカワ文庫からはこれまでにルパンシリーズが5冊出版されていますが、いずれも翻訳者は平岡敦氏で、今回はカバーデザインも復活しています。「ルパン、最後の恋」はハヤカワ・ポケット・ミステリ版を踏襲したデザインのため、実に8年ぶりの復活です。このままシリーズ再開なるか分かりませんが、再開されればうれしいです。現在品切れになっているらしい「奇岩城」と「水晶の栓」も増刷してほしいところです。
この「ルパン対ホームズ」は早川書房の創立70周年を記念した「ハヤカワ文庫補完計画」による出版です。

著訳者,ラ行,ル,ルブラン, モーリス | ハヤカワ・オンライン
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopbrand/author_RAgyo_RU_4580/
ハヤカワ・オンライン | 創立70周年文庫企画ハヤカワ文庫補完計画第二弾発表! (2015/04/09)
http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2015-04-09-174938.html


電子書籍版の配信も始まっています。
8月の電子書籍の配信がスタートしました!
http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2015-09-02-112300.html
ルパン対ホームズ / モーリス・ルブラン【著】/平岡敦【訳】 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0273508
Amazon.co.jp: ルパン対ホームズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 電子書籍: モーリス ルブラン, 平岡 敦: Kindleストア
http://www.amazon.co.jp/dp/B014F70OOU


ハヤカワ文庫:アルセーヌ・ルパンシリーズ
「アルセーヌ・ルパン」邦訳一覧

「やさしいフランス語で読む 怪盗ルパン傑作短編集」入手のこと

IBCパブリッシング、2015年。
『やさしいフランス語で読む 怪盗ルパン傑作短篇集』(やさしいフランス語で読む): IBCパブリッシング
http://www.ibcpub.co.jp/francais_facile/9784794603395.html


□内容
・ルパン逮捕される…アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)
・獄中のアルセーヌ・ルパン…獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)
・ルパンの脱獄…アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)
・女王の首飾り…王妃の首飾り(1-5)
・おそかりしシャーロック・ホームズ…遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)

原文をやさしいフランス語で書きなおしたものです。
IBCパブリッシングからは過去に対訳本の「フランス語で読む怪盗ルパン傑作短編集」が出ていますが、その簡易版といった形です。対訳本にあった日本語訳と怪盗ルパンに関する解説やコラムが省略されており、巻末に語句索引が追加されています。日本語訳に頼らずにフランス語を読みたい方には「やさしいフランス語で読む」本のほうが向いているでしょう。


「アルセーヌ・ルパンの逮捕」冒頭を見る限り、フランス語の文章は同じに見えます。

やさしいフランス語で読む/やさしいフランス語で読む 怪盗ルパン傑作短篇集 本文2:
http://www.ibcpub.co.jp/xwin/9784794603395_6.html

日仏対訳/フランス語で読む怪盗ルパン傑作短編集 本文2:
http://www.ibcpub.co.jp/xwin/9784794602404_9.html

この本でも「ルパンの脱獄」の柔術のくだりはないです。


「フランス語で読む怪盗ルパン傑作短編集」入手のこと
「フランス語で読むアルセーヌ・ルパン」入手のこと

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