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2024年7月 3日 (水)

これを友として遊行す

学力と幸福

 西村、八木「学力と幸福の経済学」(日本経済新聞出版)は、生きる力をつける学校教育について学術的に考察するものです。論旨は比較的簡単で、学校教育は人生を左右するということで、数学ができる人は所得が高い、物理好きは仕事ができるとしています。当たり前のような気もします。著者は、入試制度の多様化は、優秀な労働者を生み出さなかったとして、否定的な見解を示しています。東京のMARCHや日東駒専あたりでも、一般入試組と推薦入試組には、明確な学力差があることは認識されています。これが地頭の差なのか、努力の差なのかは、見解が分かれるでしょうが、地頭が良くても努力できない人は、成績は上がらないでしょう。卒業後の平均所得でも両者に差があるとするデータが紹介されています。家庭教育に関しては、自己決定力(自立心)によって幸福度が違ってくるとしています。家庭の教育力によって、子どもの育ち方が違うのは、経験的にも当然のことだと言えますが、その結果としての子どもの精神的な幸福度の測定は、非常に難しいと思います。例えばサッカーのプロ選手になるという目標に達しなかった場合に、その人間は不幸なのか、挑戦したことで幸福なのかという問題です。終章では、大阪市における教育実践の例(規範意識の醸成、学力向上、理科教育)が紹介されています。著者は、自学自習教材による指導に、新しい学校の可能性を見出しています。それは、教師の役割の転換を意味します。著者の教育改革論のキーワードは、創造力(そのために学級規模の縮小)、分権化、統一試験(基礎学力)です。大学の学部の個性化を進めるべきで、個性化入試はすべきでないとう考えです。少数科目入試にも疑問を呈しています。大学生の学力低下を招いていると考えているからです。確かに、勉強しなければ、知識は吸収できません。しかし、学力がなくても、本人が幸福ならば、それが悪いとも言えません。学者の考える幸福が、国民にとっては、すべてではないということです。学校というものが、社会的な価値を維持できているのか、かなり疑問に感じている国民が増えつつあると思います。

 

棋聖戦第3局

 藤井7冠が、山崎8段に勝利して、最年少で永世棋聖の称号を獲得しました。藤井曲線での強い勝ち方でした。先手の山崎8段は、工夫を凝らした差し回しで、得意の力戦に持ち込む作戦でした。藤井7冠は、角交換の際に、3三桂と取ったのが、その後の展開を読み切った妙手になりました。飛車をぶつけて、交換した時点で、かなり有利になりました。山崎8段の敗着は、6六銀でした。6六歩が正着だったようです。銀は攻撃のために、手持ちにしておくべきでした。逆に、この正着に辿り着いていれば、山崎8段にもチャンスがあったようです。形勢に差がついた後、山崎8段も逆転に向けて罠を仕掛けて行きましたが、藤井7冠はそうした勝負手を巧みにかわします。7冠に後退したといっても、藤井聡太という棋士は間違いなく最強です。山崎8段には、何とか、淡路島の第4局まで進んでほしかったのですが、久しぶりにタイトル戦に挑戦者として出場したことに、感謝を込めて拍手を送りたいと思います。

 

フランス国民議会選挙

 マクロン大統領の賭けは大失敗に終わりそうです。極右政党が第一党になる模様ですから、フランスの内政に関しては、大きな変化があると思います。移民やその子孫の増加によって、伝統的なフランス社会が変質しつつあることへの、揺り戻し現象だと感じます。パリの高級住宅街とされる16区でもアフリカ系の住民が居住するようになり、旧来の住民との軋轢が起こっているとの報道を見ました。中道与党系は半分以下に議席を減らすことになり、大統領と議会が常に緊張状態になりそうです。ドイツとフランスが支えてきたEUとの関係にも影響が出て来ると思います。左翼連合も得票を伸ばしているので、中間が細って、右と左に山がある不思議な勢力図になります。フランス国民が分裂状態だとも言えます。フランスの分断は、欧州全体に悪い影響を及ぼすと思います。

 

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