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2003年08月03日

悪魔のいる昼下がり

悪魔のいる昼下がり 「悪魔(ディアブロ)に乗ってみない?」
ある人からそんな誘いを受けた。子供時代にスーパーカーブームの洗礼を受けた世代にとって「ランボルギーニ」は、ちょっと特別な響きを持つ。なんと甘美な誘惑であろうか。

 しかし誘惑の甘美なることは間違いないけれど、モノはディアブロ、ランボルギーニである。せっかく運転させてくれると言われていても、自分の技量を知る僕としては無邪気に喜べないのも事実なのだった。
「じゃ、写真だけ撮らせてもらいに行きます」なんて腑抜けた返事をして、約束の今日を迎えた。

 屋外で間近に見るディアブロは、大きいような小さいような、カッコいいようなそれほどでもないような、ともかく物凄く普通じゃない存在だった。全長のおよそ半分を長大なV12エンジンが占拠するという成り立ちも、車としちゃ、おおよそ普通じゃない。
 それでもカチンコのように上下に開くドアを開けたり閉めたり、エンジンルームを覗いたり、フロントの貨物スペースを開いたり、中に乗り込んだり下りたり、写真を撮りまくったりと二十数年前にカウンタックでやりたかったことを、子供時代の仇を取るように繰り返している内に、少しずつ落ち着いてきた。
 もちろんディアブロは桁違いに凄まじい車ではあるけど、子供のころに「スーパーカー」という単語に感じたほどの異世界感…ちょうど、テレビで活躍する変身ヒーローに憧憬を投影していたのと同じような感覚…は消えうせていたのだ。
 今のエキゾチック・スポーツカーが、あのころほどスーパーなカーじゃなくなったからなのか、自分が金を稼ぐ大人になって、ディアブロのような車に対しても(金額を指標として)現実の延長線上に感じるようになったせいなのか理由は判らないけれど。

 友人の許しを得て試乗に出ようと運転席に座ると、しかしこいつはやっぱり異次元の乗り物だ。フロントピラー(こんなボディ形状でもそう言うのか判らないが)が、左側頭部に当るのである!当然左眼の視界はこのピラー(?)に若干遮られる。
やむなく上体を少し右にかしげて(左ハンドルなので)運転姿勢を作り、発進すべぇと右のミラーを見ると…ほとんど後方の状態は見えないのだった。
 何かに似てるぞ、この視界。と考えて思い当たったのが幌つきの2トントラック。そんなもんと比べちゃ友人に申し訳ないが、やたら広いボディの幅や、極めつけに悪い視界のもたらす印象は、まちがいなく幌つき2トントラックのそれだ。

 気を取り直してシフトレバーを左手前の切り欠き(1速)に送り込み、クラッチを繋ぎつつアクセルを踏み…踏み込めないぞ、おい。
ディアブロのアクセルペダルは、昨今のサーボつきフットブレーキのペダルよりも、なお重いのだった。

 動き出してからはおっかなびっくりである。何しろ、こいつは車体の幅が2メーター超、最高出力も500馬力を越す怪物だ。
低速で(このクルマにとって一般公道の制限速度など這いずるも同然だろう)流していても、幅1700ミリを切る160馬力の車で飛ばすのとは、もう全然ワケが違う。ものすごく緊張しているのが自分ではっきりわかる。車線変更しようにも、右側レーンが殆んど見えないのだからおっかない。
 ふとメーターを見ると、7000回転少々まで回るエンジンなのに、ほんの三分の一程度しか使っていない。そこで覚悟を決めて重いアクセルに乗せた右足に力を入れると…ディアブロは雄牛のように轟然と突進するのだった。それでもせいぜい4000回転まで。目一杯回すなんて恐ろしくて恐ろしくて(笑)。

 とまあ、非日常の塊のような乗り物なのだけれど、一番驚いたのは運転が難しくないことだ。性能相応の走り方をした場合はまったく別かもしれないが、街中でちょっと気分よく運転する程度なら、エンブレもフットブレーキも、実に強力に利くから普通に運転できちゃうのだ。主要マーケットがアメリカ合衆国だということも、多分この性格付けに関係があると思う。

 ディアブロを下りると、ものすごく神経が疲れていることに気付いた。ほんのちょっと走ってきただけなのに…。
緊張をほぐそうとタバコを一服しながら、友人が運転中の僕を撮った写真を眺めてみる。信号待ちで横にならんだエスティマから、50歳代の父親と20前後の息子が興味津々の顔をして僕を覗き込んでいる姿が写っていた。
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Posted at 2003/08/05 00:10:23

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この記事へのコメント

2003年8月5日 0:38
をを、それはすごい!一生のうち何度もあることじゃないですね。

ただ、時代が下るにつれて、所謂「スーパーカー」のオーラが減少しているように思えるのは確かですね。ランボだったらカウンタックを頂点に(または初代「イオタ」かも)、ディアブロ(リトラだった前期型の方がスーパーカー度高し)、ムルシエラーゴという順番でしょうか。ムルシエラーゴなんてアウディの最高級車って感じですよね。フェラーリはテスタロッサまで、ポルシェは...959までかな。やはり日常に入り込むことが絶対にない(と思えた)頃までの車になるのでしょうかね。
それはなんとなく「憧れの21世紀」が、来てしまえば(もちろん、いろんな技術は相当進歩したのですが)意外と大したことなかった、というのに何か似ているようにも感じます。
コメントへの返答
2003年8月5日 0:57
ええ、滅多にない経験ができました。
ただただ、何もかもが凄い…クルマ「の・ような」格好をした、クルマとは何か別の乗り物って感じすらしました。

その一方で、これだけ凄くても、こいつは量産品なんだよな~という感じもあったのです。僕らが子供時代に「スーパーカー」に抱いた思いって、本文にも少し書きましたが「スーパーロボット」に対して向けていた意識と通じるものがあると思うんです。
だからヒーローロボットの名前を冠していても、量産されちゃった分だけ1台あたりのオーラが少なくなるというか(笑)。
そう思うのも、大人になってスレてしまったはずの僕なのに、依然として1950年代や60年代の、一品製作やそれに近い車に対しては、やはり強いオーラを感じているからです。
2003年8月5日 9:22
いいなぁ~。

自分で運転したことのある外車といえば,ボルボのターボRだけ(それも20分程度)と,外車とはご縁のない自分にとっては,ディアブロとはまさに天空の乗り物と言ったところでしょうか。

一度は乗ってみたいですね~。

あこがれは,新型レガシィツーリングワゴン+レンジ+フェラーリ+ボクスターの4台体制のスピードマスターでした。
コメントへの返答
2003年8月5日 11:30
こういうのって、めぐり合わせですね~。
僕もやはり、ディーラーに押しかけての試乗を別にすれば輸入車にはほとんど縁はありませんし(対費用効果を考えると、それほど熱心に欲しいと思わなくなってしまうからかも)今回の「悪魔くん」も15分乗ったかどうかですが、まぁ凄い乗り物でした。

 実は数年前、職場で一緒だった派遣の男性(実は資産家なんですが)からランチァ・ストラトスの本物を破格値で買わないか、なんて持ちかけられたこともありますけど商談に入る前に、この男性の知人のアマチュア・ラリイストの下に嫁いでいきました。僕が買い取ってもちゃんとコンディションを維持できる自信はないので、たしょう残念な気もしましたが、それでよかったんだと思ってます。縁がなかったのでしょう。

夢のクルマは大概が博物館所蔵品(笑)という惰眠でした。
2003年8月5日 11:11
僕は古いアルファなんかに興味がいってしまいます(全然詳しくはないですが(苦笑))ふる~いGTAとか?フェンダーのラインとかつぶらな瞳(前照灯)が好きです。
かといってディアブロみたいなスーパーな車が嫌いでもないのですが。
まぁ~どっちも趣味性が強く、実用的には?かな。(ディアブロは値段的な問題の方が…)
コメントへの返答
2003年8月5日 11:36
僕も旧いアルファロメオは大好きです。
旧すぎて、ほとんどが博物館のコレクションと言うのが問題ですが(笑)。
一番現実的なのが1950年代の1900SSベルリネッタ(カロッツェリア・トゥーリング製)なんですからねぇ…自分で言うのもなんですが、まるきり阿呆です(笑)。

2003年8月5日 22:57
いいなぁ(ぼそっ)
私もドアがちょんがちょんって開けてみたいです(羨望)

やっぱり一人じゃ車庫入れ難しいですか?(笑)
ちびっとでも運転してみたい憧れの車です♪
コメントへの返答
2003年8月5日 23:32
カウンタックのドアノブ(っていうのかな?)は「一見さんお断り!」って感じの場所についているそうですが、ディアブロはその辺ずっと親切でした。腹筋を総動員しないと閉められない、てなこともありませんでしたし(笑)。

車庫入れは、オーナーなら別でしょうが一人じゃとてもできません。誘導員が絶対に必要です!でなけりゃ必ず何かにぶつけるに決まってます。

ちびっと運転…代理店のミツワがもうちょっと敷居が低いといいんですけどね~。でも車の値段(と性能)考えると、やっぱりおいそれと「試乗させて!」とは言えませんよね。


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「フェアレデーって本当に呼ばれてたの? http://cvw.jp/b/9433/47108671/
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