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2023/03/24

arret:孤立出産した外国人技能実習生の死体遺棄を無罪とした最高裁判決

最判令和5年3月24日判決全文PDF

 技能実習生の被告人女性が、双子の赤ちゃんを自室で出産し、まもなく亡くなった双子をタオルでくるんでダンボール箱に入れ、棚の上に保管していたところ、その翌日に検査を受けて出産したことを話したため知られることとなったという事案において、第一審は不作為による死体遺棄、原審は外から死体があるとわからない状態にしたことで隠匿したものと評価し、死体遺棄の成立を認めた。

 これに対する上告審が、逆転無罪判決を下したのが本判決である。

Justicepolonaise_4 最高裁は、死体遺棄罪の遺棄を、「習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為」とパラフレーズし、その判断要素として「葬祭の準備又はその一過程として行われたものか否かという観点」に加えて「その態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点から検討する必要がある」とした。

本件の被告人の行為に関しては、他者が死体を発見することを困難にするものとは言えるが、その場所や態様から習俗上の埋葬等と相容れない処置とは認められないと判断し、死体遺棄罪は成立しないと判断した。

判決文の上では必ずしもはっきりしないが、事実としては書かれている被告人の赤ちゃんを悼む気持ちに加え、積極的に隠そうとしていないこと、そしてそもそも技能実習生としての待遇の中で妊娠出産した際当然に受けられるはずの保護を期待できない境遇に置かれていることから、内密出産に追い込まれ、子供が亡くなっても公にできない状況にあったことが、「習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるかどうか」という法的評価に影響したものであろう。

そうだとすると、そのような法的評価に至った最高裁は、正に正義を行ったと評価できるし、基本的人権の砦としての役割を十二分に果たしたものと評価できる。

そしてこの判決を社会がどう受け取るかといえば、技能実習生という本音と建前が乖離したままつじつま合わせで極めて不自然な制約を課すような制度を見直し、日本社会が必要としている労働力を期待して外国人に来日してもらうのだから、せめて日本人と同等の人間的な待遇を保障するべく、つじつま合わせの歪んだ制度を抜本的に見直すべきである。

そうしてこそ、子供ができたのを公にすることもできずに内密出産に追い込まれた被告人の不利益に多少なりとも償うことに繋がるのではなかろうか?

 

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