arrêt:民訴教材:死者間の親子関係確認の利益が相続関係から認められた事例
上告人(原告)は、戸籍上の叔父と自己の祖父母との親子関係不存在確認を求め、検察官を被告として訴えを提起した。既に叔父も祖父母も故人であり、原審は訴えの利益がないとして却下した。
さて最高裁は?
前記事実関係等によれば、上告人は、亡C及び亡Dの孫であり、亡Eの戸籍上の甥であって、亡Bの法定相続人であるところ、本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Bの相続において、亡Eの子らは法定相続人とならないことになり、本件各親子関係の存否により上告人の法定相続分に差異が生ずることになる。親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要すると解されるところ(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)、法定相続 人たる地位は身分関係に関するものであって、上告人は、その法定相続分に上記の差異が生ずることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けるという ことができる。
ということで、最高裁は親子関係不存在確認を求める訴えの利益を認めたのであった。
自己の相続分を左右するのであれば、むしろ当然というべきだが、この場合に自分の叔母に当たる亡Bの相続が問題なのであり、戸籍上の上告人の従兄弟で、同じく亡Bの甥・姪に当たる亡Eの子らとの間での相続人たる地位をめぐる争いが、この訴訟の本来の紛争なのであろう。
だとすると、亡Eの亡C・Dとの親子関係を検察官との間で否定する訴訟よりも、亡Eの子らを被告として、相続人たる地位の不存在確認を求めた方が直截であり、亡Eの子らを利害関係人としてよりも当事者として扱った方が、手続保障としても適切なのではなかろうか?
あるいは、亡Eの子らとの間に訴訟が係属中で、本件訴訟はそれに派生して提起された別訴ということなのかもしれない。親子関係存否確認はそれ自体重大な問題だから、訴訟物として判断して対世効を生じさせるべきというのはわかるし、ひょっとするとCとDの子がA、B、Eの他にもいるのであれば、やはり親子関係を判決により確定させる必要があるが、そうでなければ、相続人たる地位確認の理由中で判断しても良かったのではないかと思われる。
| 固定リンク
「裁判例」カテゴリの記事
- Arret:共通義務確認訴訟では過失相殺が問題になる事案でも支配性に欠けるものではないとされた事例(2024.03.12)
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- jugement:大川原化工機の冤罪事件に国賠請求認容判決(2023.12.27)
- arret:オノアクト贈収賄事件に高裁も有罪判決(2023.10.24)
- arret: 婚姻費用分担請求に関する最高裁の判断例(2023.08.08)
コメント