jugement:仲裁合意の効力が仲裁付託条項のある契約当事者以外の者にも及ぶとされた事例
建設工事紛争審査会への仲裁付託の合意が入っている建築請負契約において、直接の契約当事者である被告B社と、B社とはグループ企業の間柄で先に原告との契約交渉を行い、グループ内の業務分担の結果として契約当事者とはならなかった被告C社、そしてC社の下で契約交渉を担い、B社による契約の締結と履行に際してもB社に転籍して担当者となっていたAに対して原告が請負契約不履行を理由とする損害賠償を求める訴えを提起した。
被告らが本案前の抗弁として仲裁合意の存在を挙げたが、原告は仲裁合意が錯誤または通謀虚偽表示で無効であること、有効だとしても契約したB社以外のC社とAとには及ばないと主張して争った。
なお、本訴とは別に被告側から原告に対する仲裁裁定の申立てがなされており、仲裁廷の方でもその管轄が争われているが、裁判所の判断を待つということで仲裁手続は中止されている。
裁判所は、仲裁合意の有効性は認めた上で、それがBのみならずC社とAにも及ぶかどうかについては以下のように判示した。
仲裁合意の効力は,原則として合意をした当事者のみに及ぶと解されるが,例外的に,仲裁合意の当事者以外の者であっても,その者の地位,当事者との関係,当事者間の紛争に対する関与の程度等の個別事情を考慮した上で,当該仲裁合意をした当事者において,当該当事者以外の者との間の紛争も仲裁によって解決する合理的意思があると解される場合には,当該当事者以外の者が示す仲裁合意の効力の享受に関する態度いかんも踏まえて,当事者以外の者に対しても仲裁合意の効力が及ぶ場合があると解される。
そして、本件では上記の関係がA、B社、C社の間にあり、別々の解決がなされるべき立場になく、事実関係も共通していて一体として判断されることが望ましく、訴訟でC社とAが被告となればB社に訴訟告知がされて補助参加することも考えられるが、仲裁手続と補助参加による本訴手続とが並行することは許容ないし想定されていないとの理由で、本件条項の意思解釈としてたまたま契約当事者となったB社だけでなくC社やAとの関係もひっくるめて仲裁により判断することを想定した条項だと解した。
つまり、結論として、全員について訴えは不適法で却下という結論である。
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