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2022/01/01

2021年重要裁判例ベスト10はこれだ(年末企画の結果ご報告)

昨年末にTwitterやFBのつながりで投票していただいた、令和3(2021)年の重要裁判例の結果を報告します。

 

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全部でのべ66人の方にご回答頂きましたが、最も多数の方々から重要とご指摘のあった上位3件は以下のとおりです。2位に同数が並びました。

1位 最大決令和3年6月23日

 夫婦別姓による婚姻届の不受理に対して受理を命じるよう求めた訴訟において、多数意見は夫婦同氏の強制が合憲であるとしたが、宮崎裕子、宇賀克也、草野耕一の各反対意見が付せられた事例。

2位 札幌地判令和3年3月17日

 同性婚を認めていない民法・戸籍法の規定は憲法14条の定める法の下の平等に反すると判断し、ただし国家賠償は認めなかった事例

2位 大阪地決令和3年7月9日

 「表現の不自由展かんさい」のために利用を申し込んだエル・おおさかの利用承認が取り消された件について、取消処分の効力の停止を決定した事例。「管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由、表現の自由の不当な制限につながる」と判示し、「抗議活動には、表現の自由の一環として保障されるべきものもあるのであるから、一定の限度では受忍するしかないともいえる」とも判示している点が注目される。

以下、4位以下10位までの結果です。

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4位 最決令和3年11月30日

 性同一性障害による性別変更の要件に未成年の子がいないことを必要としている点は合憲とする決定。/この決定それ自体よりも、これに付された宇賀克也裁判官の反対意見が論理的かつ合理的であるとして評判になった。未成年の子にとって親の性別変更は福祉として好ましくないという理由は、戸籍の変更よりも外見や日常生活上の性別変更の方が大きいのであって、戸籍の変更を許さない理由としては十分な合理性を有しないとして意見だとするものであった。

5位 最大判令和3年2月24日

 市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して同施設の敷地の使用料の全額を免除した行為が憲法20条3項に違反するとされた事例

6位 最判令和3年6月15日

 拘置所に未決勾留されている者の診療録記載事項開示請求について、刑事事件等の裁判や処分、執行等に関する保有個人情報は開示対象外とする規定を根拠とした不開示決定を不服とする訴えで、宇賀克也裁判長率いる第三小法廷は旧法からの経緯も含めて検討し、医療行為に関するインフォームド・コンセントの重要性も考慮して、開示対象外とする規定の適用はないと判示し、不開示を相当とした原判決を破棄差戻した。なお、宇賀裁判長の補足意見も付されている。

7位 最判令和3年7月19日

 非公開会社の監査役で監査の範囲を会計に関するものに限定されていた者が、横領していた従業員によって偽造された残高証明書を真正なものと信じて帳簿書類と整合していることを確認の上で適正意見を付けたことが任務懈怠に当たらないとした原審について、最高裁は「会計限定監査役は、計算書類等の監査を行うに当たり、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではない」と判示して、破棄差戻した事例。

7位 東京地判令和3年9月17日

 順天堂大学に対する消費者機構日本の共通義務確認訴訟が認容された事例。共通義務は、女子および多浪生の受験生に対する不利益な取扱いを行っておきながら、その旨を予め示さなかったことが不法行為に該当するというものである。

7位 大阪高判令和3年10月28日

 大阪府立高校の生徒が繰り返し頭髪を黒く染めるよう強要され、授業等への出席を禁じられるなどしたことから不登校となったところ、名簿から削除されたり机を撤去されるなどの措置を受けたことが不適切であるとして国家賠償または債務不履行による損害賠償を請求した事例で、髪を黒く染めろと指導することは違法でも安全配慮義務違反でもないとし、名簿から削除した点などについては違法性を認めて一部認容した事例。司法がブラック校則を是認したなどとして話題となった。

10位 東京地判令和3年3月24日

 国会召集を求める憲法53条に基づく要求を黙殺した内閣の行為が違法であるとして、召集義務確認と国家賠償を求めたが、前者は法律上の争訟に当たらないとして却下され、後者は召集を受ける地位が法律上保護された利益には該当しないとして棄却された事例。

10位 高松高判令和3年9月29日

 福島第一原発事故により避難を余儀なくされた原告らが原賠法に基づき損害賠償を求めた事例で、国については監督権限不行使により本件事故が発生したことを認めて損害賠償義務を認め、東電についても共同不法行為として連帯責任を認め、ADRで認められた額よりも高額の慰謝料を認めることも相当であるとした。

10位に相当する裁判例に同数の回答が2つ並んだので、結果的にベスト11となりました。

同性婚に関する札幌地裁判決と孔子廟に関する最高裁判決とは、ご指摘により途中追加したものですから、最初からリストに入れていれば計算上はトップクラスとなったはずです。

なお、この他に裁判所サイトに載っている裁判例としてはアスベスト被害者に対する共同不法行為を認めた最判令和3年5月17日もご指摘いただきました。

ご回答いただいた皆様、あるいはご覧になった皆さんの評価はいかがだったでしょうか?

2022年もどんな裁判例が飛び出すか、宇賀克也裁判官の個別意見がいくつ出てくるかなど、楽しみです。

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