夫婦別姓の選択制を求める裁判で判決
9月30日と今日、10月2日、それぞれ別々の原告による訴訟について判決がくだされ、結論的には夫婦同姓強制制度の違憲性は認められなかったという。
【速報】第二次夫婦別姓訴訟、東京地裁で原告敗訴 「違憲」認めず
夫婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、東京都世田谷区在住の大学教員の事実婚夫婦と東京都在住の事実婚夫婦の妻の3人が、国を相手に損害賠償を求めた第二次夫婦別姓訴訟で、東京地裁(大嶋洋志裁判長)は10月2日、原告の訴えを棄却する判決を言い渡した。
夫婦別姓訴訟、東京地裁でまた敗訴 「議論は高まっているが…」弁護士の訴え棄却
東京弁護士会の出口裕規弁護士とその妻。同姓規定は憲法に反する上、国連の女性差別撤廃委員会から度々、改正するよう勧告を受けているにも関わらず、国会はこれを放置しているなどとして、国を相手取り合計10円の損害賠償を求めていた。
しかし、判決では最高裁大法廷判決以後、「議論の高まりは見られることなどが認められる」としながらも、夫婦同姓の規定が憲法に違反するといえるような事情の変化は認められないと結論づけ、請求を棄却した。
いずれも大変残念で結果である。
最高裁の大法廷判決がはっきりと夫婦同姓強制は違憲ではないとしてしまった以上、なかなかこれに反する判断を下級審裁判官が出すのは難しいかもしれないが、訴訟提起それ自体が一つの問題提起であり、また市民の声でもある。無駄な訴訟とは言えない。
加えて、最高裁の夫婦同姓強制合憲との理由も、ツッコミどころはいくつもある。例えば憲法13条に民法750条が違反していないという判示では、当事者の意思によらないで氏の変更を強制されているわけではいないと言うが、当事者の意思は婚姻をする意思なのであって姓を変える意思では必ずしもない。そして婚姻をするという場合に、その当事者の意思に関係なく姓の変更を余儀なくされるのが750条であるから、まさしく当事者の意思によらないで姓を変更することを強いられているわけである。姓を変えたくなければ婚姻をしなければ良いというのが最高裁の言い分だとすれば、それはまさに憲法24条に反するものである。
憲法14条違反ではないというところも、最高裁の判決は結局姓の選択を当事者の協議に委ねているのだから、96%が夫の姓を選択するとしてもそれは民法750条の規定の結果とは言えないという。しかし、まさしく750条がいずれかの当事者の姓の変更を結婚の要件としてしまっているがゆえに、特段の事情がなければ妻が夫の姓に合わせるのが当たり前という、前時代的な社会通念が温存されているのである。この点についてもう一つの選択の余地があれば、どちらかが姓を変えなければならないという前提が崩れ、妻が夫の姓に合わせるのが当たり前という社会通念が変わる可能性がある。つまり、それが変わらないのはまさしく750条の規定のせいなのである。
このほか、有名な通称使用が幅広く認められているから苦痛は緩和されているという部分も、通称使用には様々な軋轢と手間と面倒がついてまわることを無視しており、そもそもその当時裁判所ですら通称使用を認めていなかったという点に事実の誤認がある。
一見するとパスポートには旧姓をカッコ書きで併記できているように見えるが、それでじゃあ身分証明として銀行口座を旧姓で開けるかというと、簡単ではない。またチップ内には旧姓は記載されておらず、そもそも外国ではカッコ書きが何なのか意味不明で、ビザや航空券の名義からホテルの予約に至るまで、戸籍名使用を強いられるのである。
そういうわけで、妻が夫の姓に合わせるのが当たり前という、前時代的な社会通念により姓を変えさせられている現状、旧姓使用が通称としてであれば広く認められますよという詐欺まがいというのか、少なくとも見掛け倒しであることの現実から、婚姻しても旧姓を正式名として維持したいという願いが容れられない不利益は、極めて大きく、それは憲法上の問題にもなりうる。
ということを下級審で積み上げていくしか、判例の趣旨の変更への道はないのである。
政治的に変えてしまうというのがもっとも王道ではあるが。
| 固定リンク
「裁判例」カテゴリの記事
- arret:海外の臓器あっせん業が臓器移植法違反に問われた事例(2025.01.16)
- jugement:ビットトレント利用者の発信者情報開示命令(2025.01.09)
- jugement:留置担当官が被疑者ノートを15分間持ち去った行為の違法性を認めた事例(2025.01.08)
- Arret:共通義務確認訴訟では過失相殺が問題になる事案でも支配性に欠けるものではないとされた事例(2024.03.12)
コメント