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2019/01/26

arret:刑事訴訟関係文書の提出判断者

今まではっきりしなかったところを最高裁が決してくれた。

最決平成31年1月22日決定全文PDF

民訴法220条3号に基づき、元被疑者・被告人と都道府県との国家賠償請求訴訟において、都道府県(警察)が所持している逮捕状請求書その他の関連文書の提出命令を申し立てた場合に、刑事訴訟法47条が問題となる。

訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。

この公益の必要その他の相当と認められる事例があるかどうかを誰が決めるかというと、従前は、刑事訴訟記録の原本を保管する保管検察官であると言われていた。従って、この規定の解釈としても、保管検察官の合理的裁量の範囲内で提出義務を拒めるのか、それとも裁量権の範囲を逸脱しているのかが問題となってきた。

しかし、警察が捜査記録の写しを保管している場合、その保管者は都道府県(警察)なのである。検察官の判断なしに、警察が判断してしまってよいか、それともやはり検察官の判断を必要とするのか、その点がはっきりしてこなかった。
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これについて本決定は、以下のように判示した。

公判に提出されなかった,刑事事件の捜査に関して作成された書類の原本及びその写しは,いずれも刑訴法47条により原則的に公開が禁止される「訴訟に関する書類」に該当するところ,同法その他の法令において,当該原本を保管する者と異なる者が当該写しを保管する場合に,当該原本を保管する者のみが当該写しについて公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をすることができる旨の規定は存しない。そして,当該写しをその捜査を担当した都道府県警察を置く都道府県が所持する場合には,当該都道府県は,当該警察において保有する情報等を基に,前記アの諸般の事情を総合的に考慮して,同条ただし書の規定によって当該写しを公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をすることができるといえる。

このように判示した上で、その都道府県の合理的裁量の範囲内であるかどうか、裁判所が判断できるとした。

従来もなんとなく原本ではなく写しを保管する都道府県に対して、警察の違法行為を訴訟当事者であることもあって、提出命令を申し立てていた例があったが、合理的裁量の主体が保管検察官であるとされたり、はっきりしなかった。今後は、写しを保管するのが警察であれば、その保管者の裁量権の範囲が問われるということでスッキリする。

なお、この決定は引用文書と秘密保護の関係についても判断を加えている。すなわち引用文書であることを提出義務の原因とするのであれば、それについて秘密保護を理由に提出を拒むのは信義則条問題があるという考え方が比較的有力であったように思うのだが、「引用されたことにより当該文書自体が公開されないことによって保護される利益の全てが当然に放棄されたものとはいえない」として、刑事関係文書に関する裁量権とその逸脱のテストは通常と変わらないというのである。

具体的な解決の相当性として、引用文書に関しては文書所持者がどのような形で訴訟上引用したのかが問題であり、文書の存在と内容を主張しておきながらそのものの提出は拒むことで、証拠を吟味する機会を相手方に与えないまま訴訟上有利な地位を確保するというのであれば、それは信義則に反する。そうした場合に、一般公開されない利益を保護しつつ、裁判所・当事者限りでは証拠資料とするということもありうるところであろう。ただ現行法はそのための仕組みが記録の閲覧制限くらいしかないのが難点で、秘密保持命令のような制度は欠けているのである。

本決定は、そうした課題を浮き彫りにするものといえようか。

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