action:13日に津波被害関連訴訟の判決
1月13日には、宮城県の自動車教習所に対する津波被害損害賠償を求めた訴訟の一審判決が下される。
同種の訴訟で有名なのは、幼稚園を舞台とした事例と大川小学校を舞台とした事例がある。
幼稚園ケースでは、送迎バスで園児を送り届けようとしたところに津波が襲い、その責任が一審判決で認められたため、控訴審で和解が成立した。
→遺族と幼稚園側が和解へ 石巻、バスに津波で園児死亡
→日和幼稚園バス 津波の悲劇・石巻
また、大川小学校ケースでは、津波に備えて避難をしようと子供達がいうのを待てと教師が止めて、結果的に津波にのまれることになったとされている。こちらは国賠で、一審係属中。
→大川小遺族が「明らかに人災」と提訴
総額23億円の損害賠償請求
→大川小学校児童津波被害国賠訴訟を支援する会
このほか、第七十七銀行女川支店の津波被害に関しても、銀行の安全配慮義務違反が問われたが、こちらは一審で請求棄却判決が出されている。
→【3.11】七十七銀行女川支店の津波被害訴訟、人命よりも経済合理性が優先されるのか?
個人による訴訟では、名取市の防災無線の不備により津波にのまれた責任を問う訴訟が提起され、昨年11月時点で一審係属中である。
→名取市、棄却求める 津波被害訴訟
なお、この訴訟においては第三者検証委員会により以下のような厳しい指摘が報告書に書かれている。
防災無線のデジタル化で遅れていた名取市は、多くの関連部署による慎重な検討を欠い たまま、「良いタイミング」をとらえて防災行政無線を導入した。詳細設計を飛ばしての 設置工事の外部委託、再公告での保守体制や入札参加資格の削除、仕様協議における重要 な視点の欠如、運用者への教育や研修の不足などには、ひと言でいえば、名取市の安全や 安心を軽視しがちな 「体質」が投影されている。この体質の改善は急務であろう。
このほかにもあるかもしれないが、目に付いたのはこの程度である。
津波という天災が原因で人身被害が生じたというのが基本になるので、その責任を誰か人に対して問うのは原則として難しい。しかし、津波は地震に引き続いて襲うものであり、いわば予告ないし前兆がある。また過去の経験も様々に記録が残され、避難すべきとの経験則は確立している。従って、天災=不可抗力=責任なしということは当然にはできない。
ただし、具体的にどの程度の津波が発生するかは、ケースバイケースで予見がある程度立つ場合からこれは無理という場合まであり、津波を予見して対処すべきと言えるかどうかもケースバイケースとしか言いようがない。
さらに幼稚園と園児、小学校と児童、教習所と学生、企業と従業員、そして公共団体と住民というそれぞれの関係でも安全を配慮すべき義務のあり方が異なるので、それぞれの関係ごとに責任の有無を考えていくことになる。
そういう意味で、天災時の民事責任のあり方、ひいては天災に直面した人々の行為責任のあり方を考えるのに重要な事例が目の前で展開されつつある、貴重な機会である。
この機会を活かすことが、震災被害を無駄にしない一つの営みということもできよう。
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