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2014/01/04

nuk:原発事故ADRの現状

原子力損害賠償紛争解決センター(いわゆる原発ADR)については、東電と混同されてか悪評が立っているような印象を受ける。

毎日:<福島原発事故>東電のADR和解案拒否 制度の意義揺らぐ

ここでは、東電が和解案を拒んだことについて批判されているが、こうした批判は記事の中でも言及されているように、既出のものである。

東電の姿勢は、以前から問題視されていた。原発ADRは12年7月、東電による遅延行為や、同様の和解例を無視した主張を行うなど「問題がある事例」をホームページで公表した。

原発ADRのウェブページには、「東京電力株式会社の対応に問題のある事例の公表について」と題して、東電による引きのばしや不当な和解案拒否の事例が5件公表されている。

そのページの冒頭には、平成24年7月5日 東京電力の対応に問題のある事例の公表にあたっての総括委員会所見と題するpdf資料が掲載されている。

それによれば、ADRを円滑に進めるため和解当事者間には「問題解決型の協力的志向」が必要であるところ、「論点整理を志向しないようなあるいは仲介委員による提案を避けることを目的とするような手続遂行は、和解仲介による迅速・適正な賠償実現を目的とする本センターの仲介手続においては本来的になじまない」と批判している。
そして公表された事例は東電が「和解仲介手続の志向に沿わず、被災者に対する適切な賠償実現を遅延させる結果をもたらす」手続遂行態度に出たものである。
当初、和解手続を訴訟手続のように勘違いした態度で臨む例が多かったが、その態度は現在(所見当時)も改められておらず、こうした誤解を正すために公表事例の掲載に踏み切ったのだとしている。

さて、和解の内容はひとまず度外視して、和解の成立の統計的な事実のみをみるならば、昨年末現在(平成25年12月26日現在)では状況がかなり改善しているのではないかと思われる。

(1)申立件数:9,114件
(2)既済件数:6,528件
(うち全部和解成立:5,131件、取下げ:697件、打切り:699件、却下:1件)
(3)現在進行中の件数 〔(1)-(2)〕:2,586件
(うち現在提示中の全部和解案:448件)
(4)和解成立件数:6,099件
(うち全部和解成立:5,131件、一部和解成立:859件、仮払和解成立:103件)

これに対して平成24年4月時点での申立て件数急増を受けた状況認識と取扱い方針文書pdfでは、累計1590件の申立てに対して既済件数は86件にすぎず、当時の毎月数百件の申立てにパンク状態であった。

こうした当初の状況からすれば、2/3を超える既済件数で、そのうち和解率が8割弱というのはかなりの好成績と評価できる。(中村先生のご指摘により修正)
もっとも上記の「全部和解」という言葉の意味が通常の民事訴訟統計における全部認容とは異なり、一部判決に対する言葉である全部判決と同様の使い方で、申立ての項目の全部について和解が成立したという意味なのかもしれず、必ずしも被害者の要求が全部満足されたという意味ではなさそうではある。

ということで被害者側の立場に立つ代理人が同様の評価をしてくれるかどうかは分からないが、ともあれ冒頭の記事から受ける印象とは裏腹に、原発ADR結構頑張っていると思うのである。

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