Bankruptcy:政党の倒産
政党も団体であり、しかも法人格まであるのだから、倒産能力はある。
その実例となりそうなのが、徳洲会病院関係の自由連合という政党だ。
このYahoo!ニュースが引用する産経新聞記事によれば、徳田虎雄元衆院議員が党首であった自由連合が平成22年に解散し、清算手続にはいったところ、「医療法人徳洲会のグループ企業から、無担保で総額約102億円を借り入れていたことが判明。約71億円が未返済で、利息を含め約77億円の債務超過であると認定された。」という。
この負債、徳田氏は自分が払うと言っていたらしいが、親族が反対したとかで、未払いのまま2年間が過ぎ、しかも以下のような奇怪な状況もある。
自連の法人登記によると、22年8月の解散時に徳田氏の辞任と清算人の就任が登記されていたが、24年11月、この辞任と就任がいずれも抹消されている。2年前にさかのぼって清算人の選任自体が取り消されるという異常な状態になっており、清算手続きは宙に浮いている。
産経新聞ということを差し引いたとしても、随分な話だ。
記事中でも引用されている政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律には、以下のような規定がある。
(清算人) 第十条の三 法人である政党等が解散したときは、代表権を有する者がその清算人となる。ただし、党則等に別段の定めがあるときは、この限りでない。(裁判所による清算人の選任)
第十条の四 前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。(清算人の解任)
第十条の五 重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。
これによれば、少なくとも清算人が欠けている状態なので、裁判所は清算人を選任すべきことになる。利害関係人が何もしないのであれば、検察官が請求すべきだし、それもしないということなら職権行使すらできる。
(清算中の法人である政党等についての破産手続の開始) 第十条の九 清算中に法人である政党等の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。2 清算人は、清算中の法人である政党等が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
3 前項に規定する場合において、清算中の法人である政党等が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。
そして、清算人が債務超過を発見した時は、「直ちに」破産手続開始の申立てをしなければならないのである。
上記記事にあるような「破産回避の目的で待つこと」などは許されないのである。
これを怠った場合は、過料の制裁がある。ただし50万円以下ということで、ほとんど圧力にならないのだが。
とはいえ、自由連合の債権者は徳洲会の関連会社であり、すなわち徳田氏ないしはその親族が実質的なオーナーなのかもしれない。だとすると、債権が時効まで棚晒しされようが、破産手続によってなくなってしまおうが、どちらでも良いことなのかもしれない。いずれにしてもつぎ込んだ政党助成金が戻ってくるわけではないし、これ以上税金をつぎ込むわけでもない。
むしろ職権で清算を進める方が、国庫にとってはマイナスなのかもしれない。
ということで、産経新聞のように問題視することはないのであろう。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント