FRANCE:個人倒産処理手続は憲法違反か?
フランスの個人倒産処理手続について、これは違憲ではないかという申立てがあり、これに対して破毀院が違憲ではないとの判断を下した。
現在のフランス法では、事後的な違憲立法審査を憲法院が行えるようになっているが、憲法院に事件を送るかどうかの段階で、通常裁判所が違憲審査の必要があるかどうかを判断する。
破毀院の上記判決は、憲法院に事件を送る必要はないという判断である。
問題となった条項は消費法典L. 331-3-2条で、これが1789年フランス人権宣言2条、4条、17条の定める自由権を侵害するかどうかが問われている。
具体的に違憲を主張している申立人は、債務者の状況から必要な場合には家屋からの立退きの執行を停止できるという裁判官の権限について、過重債務処理の目的の名の下に、財産権と個人の自由権を侵害していると主張した。
これに対して破毀院は2点の理由から、憲法院に送付しないとした。
第一に、この問題は憲法解釈に関する論点を含んでおらず、新しいものでもないということである。
第二に、過重債務処理の必要から債務者の家屋からの立退き執行を一時的に停止するのは、不動産所有者から所有権を奪うようなものでもなく、過重債務処理の必要との関係で相当な範囲内であるとのことである。
かくして、憲法院への移送は不要ということだ。
この判断、もちろんフランス法を前提としたものであって日本法の状況とは同列に論じられないが、参考までに日本法においても、個人破産の免責制度が憲法違反に当たらないとの判断がされている。その理由は、「免責の規定は、公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的な財産権の制限である」というに尽きる。
最大決昭和36年12月13日(決定全文PDF)
フランス法自体としては、フランスの憲法院ではなく破毀院が上記のように述べた点が憲法解釈における裁判例として先例価値を持ちうるのかどうかも、気になるところではある。
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コメント
会社更生法が違憲でないという判例もあります。
最大決昭和45年12月16日民集24巻13号2099頁
投稿: バカラ | 2012/08/25 12:31