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2012/07/05

判例体系Tablet Style

第一法規が売り出しているiPad用の判例体系、デモIDをもらって使用感を書くように依頼されたので、ここに記す。(ステルスといわれないための記載)

D1-Law(この名称は第一法規のちょっと面白い横文字版だが)というデータベースは、大学が契約していることもあって、結構便利に使っている。法令、判例、文献の三分野を網羅しているが、今回試用したタブレットスタイルは判例体系のみである。つまり、第一法規の定評ある法律文献データベースである法令判例文献情報は含まれていない。

その名もタブレットスタイルというだけあって、PCではアクセスも利用も出来ない。iPad専用である。iPadのSafariで、以下のURLを開いてアクセスする。

http://tabletstyle.d1-law.com/

IDとPWを入力してログインすると、ホーム画面に至る。ここでは、最近の注目判決とか新規登載判例、お知らせ、その他マニュアル事項について選択できるようになっている。検索はどうするのだろうと、しばし画面を探して途方に暮れたが、検索には画面内リンクではなく画面下の選択ボタンから移動する。

通常の検索は、他の検索方法とあまり変わりがない。
特徴があるのは、体系目次検索で、これは私のような年代をほぼ下限とする、紙媒体判例体系を使い込んだ経験のある世代に便利な機能だ。
条文ごとに、判例が小目次に分類され、どのような内容の判決が見たいかという検索者の関心に応えてくれる。この体系目次検索に慣れると、脳内にショートカットキーみたいなのが生まれてきて、検索が非常に速くなる。

例えば、今、私が取り組んでいる民事の鑑定について調べようと思えば、民事訴訟法を選択し、条文として212条以下を表示し、鑑定義務に関しては小見出しとして鑑定に必要な学識経験という項目があるので、そのプラスマークをタップする。すると、項目選択欄にその項目が表示され、検索ボタンを押すことで関係する大審院判決が表示される。
検索対象を拡げるには、その項目が項目選択欄に残されたまま、条文の選択画面に戻って他の項目をタップすればよい。例えば212条の直前に、前注という位置づけで置かれている「鑑定の意義」という項目をタップすると、さらに小項目が現れるので、そのいずれか、例えば「鑑定と証言」のプラスマークをタップして検索対象項目を増やすことが出来る。

このように、判例体系の紙媒体を使った経験があれば、実に直感的に使えるシステムとなっている。

ただ、問題は、ある項目を選択し、別の項目を加えようと思ったら、一々民事訴訟法の2条から始まるページに戻らなければならない点だ。ブラウザのバックボタンで戻ると、項目選択する以前の状態に戻ってしまうので、項目を追加するのには使えない。民事訴訟法の2条から始まるページで212条に飛ぶには、条文が並んでいるリストをスクロールすればよいし、高速に移動できるのだが、スクロールする時に最初に触ったところが選択されそうになるのが気になる。
民訴はまだ条文数が少ないが、約1000条の会社法で800条近辺の検索をしている場合や、約2000条の民法で家族相続関係を検索している場合は、イライラすることだろう。

あと、このシステムは概ねタブレットPCで完結する事になっており、PCとの連携は付箋とメモくらいであろうか。パンフレットを見ても、タブレットで判例検索をして調査をし、仕事はPCで行うということのようだ。
今のところ、判例を使って論文を書いたりする場合、データベースから文字データをダウンロードするなりコピーするなりして、判決リストを作成したり、一部引用にペーストしたりということを行う。紙媒体の雑誌であれば、それは出来ないので、一々転記するという作業をするのだが、同じデジタル媒体のデータベースを使っていながら、デジタル情報として再利用できないのは、著しく不便に思う。
タブレットPCでのデータ検索でも、デジタルの利点を殺してしまう必要はないはずだ。

もちろん、紙媒体の、図書館でも書架をいくつも占領するデータがオンラインでiPadからアクセスできるようになるという便利さは、肝心の利用料金がどこにも書かれていないので分からないのだが、素晴らしいことはいうまでもない。

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