YDC1000について
法情報の電子化、電子書籍化は各方面で進んでいるが、色々と難点が多い。
有斐閣のYDC1000というサービスは、オンラインで有斐閣の古典的な法学文献1000冊読み放題という会員制サービスであり、マックでも読めるというので契約した。実はお試しで契約したものの、マックでは読めませんということだったので、そのまま放置していたのだが、ある日、電話があってマックでも読めるという説明を聞いたのだった。
年額12000円と、少々ためらうようなお値段ではあるが、ともかく振り込んで、埋もれていたID/PWを復活し、アクセスしてみた。
読める書籍のラインナップは、総合判例研究叢書とか、外国法典叢書とか、旧民訴法や旧民法が載っている『旧法令集』とか、各種の記念論文集とか、有名ドコロのモノグラフィーや全集など、研究上で参照の必要が出てくるタイトルがズラリと並んでいる。
これは素晴らしい。
惜しいことに、注釈民法も注釈民訴法も入っていないが、これは別途の提供契約に縛られているのかもしれない。
検索機能は、単に書名や著者名を検索するだけでなく、本の中の目次や索引で事項検索をすることができる。
「文書提出命令」で検索してみると、新堂先生の本が二冊、春日先生の本が一冊、目次でヒットした。
同様に現在の私の懸案事項である「鑑定」は新堂先生と林屋先生の本がヒットした。
各種データベースの検索キーワードでも似たようなことはできるが、このYDC1000のサービスでの検索は、目的の文献データにそのままアクセスできるところが凄い。
もっとも、いくつか残念なところがないわけではない。
マックでも読めるという話であったが、オンラインで読めるというためのビューワーソフトは、ウィンドウズにしか対応していない LeafThroughというものであり、オンラインで読めるわけではなかった。
またPDFで閲覧することは確かにできるのだが、上記のようにキーワード検索でヒットした文献は300ページ以上もある書籍で、鑑定のところだけを見たいと思っても、300ページを全部ダウンロードしなくてはならない。
そしてダウンロードしてみたところ、紙を画像として取り込んだデータなのか、あるいは特殊な文字コードを使用しているのか、検索もできず、コピーももちろんできず、アクセシビリティのための抽出は許可されているにもかかわらず、テキストファイルは閲読不可能であった。
著作権保護のためにやむを得ない保護ということであろうが、データとしては残念な存在である。
iPadでも読むことができるというのでやってみたが、白紙のPDFデータで途方に暮れた。しかしサポートにメールを送ったところ、紆余曲折を経て、専用ビューワをダウンロードし、無事読むことができた。
しかし、右から左へ書かれている縦書きの書籍なのに、通常のPDFのページ送りと同様に右から左に流すというのは、違和感を禁じ得ない。縦書き文書のコピーなのに左肩でホチキス止めしたような違和感だ。
このHGViewというビューワーソフトはすぐにバージョンアップされる予定とのことなので、いずれは、上記の違和感も解消してくれるような発展を期待したい。
それにしても、有斐閣のユーザーサポートは偉い。メールでもストレスなく、なんとか使えるようになるまで面倒を見てもらえた。著者としてはおそらく不良グループの一員にランクされているであろう私にも、懇切丁寧に教えてくれた。
さあ後は、これを活用して、有斐閣様からの宿題もやらねばならない。
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