arret:仮執行宣言に基づく執行を控訴審は顧慮しない
一応、民訴判例ということで紹介する。
控訴審は,第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている事実を考慮することなく,明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や抗弁として主張されている敷金返還請求権の存否を判断すべきである
つまり、一審で家屋の明渡に仮執行宣言が付けられ、その強制執行がされると、家屋はとにかく明け渡されたことになる。すると控訴審ではもう家屋を占有していないのだから、明渡請求は棄却されることになるのではないかと、そのような疑問が生じる。
しかし、それでは仮執行宣言が付けられた判決が取り消されることになるので、仮執行宣言も失効して明け渡した家屋を戻せということになりかねない。
これでは堂々巡りである。
結局仮執行宣言に基づく強制執行により請求権が満足しても、控訴審はその事実を顧慮しないで判断し、もう明渡執行か完了している家屋を「明け渡せ」という一審判決を是認しなければならないということになる。
もちろん二度明渡をするわけではないから、執行過程でこのことは考慮されれば足りるというのが最高裁の立場である。
その上で、上記の要旨にあるように、賃料相当の損害金請求と、これに対する敷金返還請求権に基づく抗弁との判断でも明渡がされた事実は無視して判断しろというのであるから、明渡が完了するまで月◯◯円を支払えという判決を下すということのようだ。つまり将来給付部分も認容する。その上で、執行段階で、明渡が完了した時点に遡って請求異議を認めるということであろうか?
最高裁判決からは原審がどう判決したのかわからないので、ハッキリしたことは言い難いが、仮にそうだとすると、基準時前の給付を認めた部分も請求異議にかかるのかとか、そもそも請求異議の訴えを提起する負担を被告に負わせるのはよいのか、という疑問が浮かぶ。
この点は、いずれ紙媒体の判例集が出たら、改めて検討しよう。
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