arret:民訴新判例:給付訴訟の原告適格
基本的なことだが、高裁裁判官でも理解されていない部分のようである。
マンションの管理組合が規約に基づいて工作物の撤去または損害賠償を請求したところ、原告適格がないとして却下された。最高裁は以下のように述べて破棄差し戻した。
給付の訴えにおいては,自らがその給付を請求する権利を有すると主張する者に原告適格があるというべきである。本件各請求は,上告人が,被上告人らに対し,上告人自らが本件各請求に係る工作物の撤去又は金員の支払を求める権利を有すると主張して,その給付を求めるものであり,上告人が,本件各請求に係る訴えについて,原告適格を有することは明らかである。
本件では、管理組合という権利能力なき社団が原告となっているので、原告適格以前に当事者能力も問題がありうるところだが、マンション管理組合であれば普通は当事者能力が認められる程度の実質を備えているのであろう。
原告適格の問題については、マンション管理組合なのか区分所有者自身なのか、はたまた管理者なのかの問題があり、さらに管理組合が訴訟担当者として原告適格を有するかどうかなどの問題はある。ただし、マンション管理組合自身が自らの権利として訴訟物を立てている以上、その権利が管理組合に帰属するかどうかを判断し、帰属すれば認容、帰属しなければ棄却という本案判決を下せばよい。
これに対して訴訟担当者として登場した場合には、訴訟担当資格があるかどうかが問題となり、これは職権調査でもある。
テクニカルな話だが、被告適格と同様に、権利が帰属しない者の訴えまたはそのものに対する訴えは、当事者適格がないのではなくて実体判断として請求棄却になるのが原則である。
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