arret:弁護士法違反の債権譲渡と私法上の効力
弁護士法(係争権利の譲受の禁止)
第28条 弁護士は、係争権利を譲り受けることができない。
弁護士職務基本規程17条 弁護士は,係争の目的物を譲り受けてはならない。
さて、弁護士が依頼人の有する債権を、取り立てのために譲り受けて取り立てることは有効だろうか?
原審は原則として無効としたが、最高裁は原則として有効とした。
要するに取締法規違反は私法上の効力を左右しないという原則の一適用例である。
債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど,公序良俗に反するような事情があれば格別,仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても,直ちにその私法上の効力が否定されるものではない
これに対して宮川光治判事が補足意見を付けている。
それによれば、私法上有効だとしても弁護士倫理違反であって懲戒処分を受けるというのである。
取立てを目的とする債権譲受行為は,債権を譲り受けなければ,当該権利の実行に当たり支障が存在するなど,行為を正当化する特段の事情がない限り,「品位を失うべき非行」に該当するものといわなければならない。
さて、本件では、依頼人(債権譲渡人)が日本国内に営業所を持たない外国法人であったため、取り立ての支障を避けるために債権譲渡をしたのだとされている。
この理由は、宮川違憲に言う「行為を正当化する特段の事情」にあたると思うのだが、いかがであろうか?
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