arret:破産同時廃止決定と法人格の帰趨
控訴人は,被控訴人に対して,貸金債権を有していたが,被控訴人は,破産宣告を受け,その破産手続は同時破産廃止により終了した。本件は,控訴人が,被控訴人の上記債務の連帯保証人との間で上記債務(主債務)が時効により消滅するのを防ぐため,被控訴人を被告として,上記貸金債権が存在することの 確認を求める事案である。 原審は,同時破産廃止の時点において被控訴人に残余財産がなかったと認められるので,同時破産廃止決定が確定した日に被控訴人の法人格は消滅したととの理由により,本件訴えを不適法として却下したため,原告が控訴をした。
旧商法・旧破産法時代の判決なので、破産宣告とか、商法とか、早くも懐かしさを覚える用語を用いている。
問題は、破産宣告が法定解散事由とされながら、破産手続の目的の範囲内ではなお法人格が存続するとの規定があり、その場合は取締役ではなく破産管財人が清算の任に当たることとなるが、同時廃止の場合は管財人が選任されないので、破産手続の目的の範囲内での存続もなく、当然に法人格が消滅するのではないかというところである。原審はそのように判断した。
しかし、控訴審である本判決は次のようにいう。
旧破産法145条により株式会社が破産宣告と同時に破産廃止の決定を受けた場合には,破産管財人による清算手続が行われずに破産手続が終了するから,当該株式会社は,破産により解散したにもかかわらず,清算未了の状態のまま残ることとなる(そして,この場合,同時廃止決定においては,残余財産が破産手続の費用を償うに足りないと判断されたにすぎず,その手続において残余財産が全くないことが確定されたわけではない。)。
ところで,旧商法は,株式会社が解散した場合において,財産が全くなければ当然に法人格が消滅するとしているわけではなく,清算を結了して初めて法人格が消滅するとしている(旧商法430号,116条)。
そうすると,旧商法404条,417条は,同時破産廃止の場合には,残余財産の多寡,存否にかかわらず,引き続き同法の規定による清算が行われることを予定していると解するのが相当であり,旧商法による清算が結了して初めて,その法人格が消滅するというべきである(ただし,この場合の清算は,旧商法431条2項が適用されないなど,すでに破産手続を経由していることからくる例外があり得る。)。
すなわち,株式会社が破産宣告を受け,同時に破産廃止決定を受けた場合には,破産廃止によっては法人格は当然には消滅せず,清算事務の終了後,決算報告書の作成と株主総会におけるその承認により清算は結了し,当該株式会社の法人格が消滅すると解するのが相当である(旧商法427条,430号,116条)。
さて、これは現行法でも同じか? ロースクール生の皆さんは条文に当たって考えてみると良い。
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