arret:痴漢冤罪民事、ケータイ注意で逆ギレ女の虚偽申告
裁判所HPに現時点でアクセスできないため、裁判所判例Watchingのサイトにある判決文を参照した。
上告人Xの立場から事案をまとめると・・・
平成11年9月2日、午後11時半くらいのことである。
Xは焼き鳥など飲食した後、中央線快速下りに乗った。車内は座れない程度に混んでいたが、ラッシュのようなことはなかった。
つり革につかまって立っていると、すぐ横のポールにもたれて立っている大学2年生の女Yがケータイで話をしている。なかなか止める気配もなかったことから、少し身体を乗り出すようにして,「電車の中で電話してはいけない。」と1回注意したところ,被上告人から「分かったわよ。」と大きな声で言われた。
その後、帰宅する駅で下車してバスを待っていたところ、そのケータイ女が警官を連れて追いかけてきた。警官が「お前、痴漢しただろう」というので、「してませんよ」というと、その場で現行犯逮捕された。
以後、勾留され、勾留延長され、9月22日にようやく釈放された。
なお、ケータイ女は最初痴漢行為を次のように供述している。
1 本件電車内で携帯電話でAと通話をしていたところ,上告人がもたれかかるように身体を近づけてきて,手すりかつり革をつかみながら身体を前後に揺らし,被上告人の身体に股間を擦りつけるように押し当ててきた,
2 上告人が被上告人に身体を近づけてきたので痴漢かもしれないと思って警戒しながら30秒くらい我慢していたが,上告人がなおも股間を被上告人の身体に押し当ててきたことから,上告人が故意に痴漢をしているものと認識した,
3 上告人に「離れてよ。」と言いながら,左肘で上告人の胸に向かって2回肘打ちをしたところ,上告人から逆に携帯電話の使用を繰り返し非難されたので,「変なことをしておいて,何言ってるの。」,「分かった,切るよ。」と言って電話を切った,
4 上告人が被上告人に対して痴漢行為をした時間は,全体として約1分間である
また通話の相手であるAは、検事に、Yとの通話中に聞こえた内容をこう供述している。
1 被上告人が「変な人が近づいてきた。」と言い,その後間もなく,「電車の中で電話しちゃいけない。」という男性の声が聞こえた,
2 痴漢行為の存否に関連して聞いた声はこれだけである。
その後、ケータイ女Yは、取調べを受けることを約束した日に出頭せず、連絡もつかなくなった。
全くもってひどい話で、痴漢にされたXがケータイ女Yに損害賠償を請求したわけだが、原審は、ケータイ女の通話相手Aの証人尋問もすることもなく痴漢行為が行われていたことを認定して請求を棄却したので、Xが上告した。
最高裁は、原審の事実認定を是認できないとして、破棄差し戻しした。
具体的な理由は上記判決文を直接当たっていただきたいが、さて問題。
法律審である上告審が、原審の事実認定がおかしいとして破棄差し戻しすることが民事訴訟でも許されるのはなぜか?
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