news:国家賠償法1条2項の適用例
asahi.com:敗訴の賠償金22万円、担当職員から回収 防衛省
国家賠償法1条は次のような規定である。
「1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2項 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」
この2項の求償権に基づいて、「旧防衛庁に情報公開を請求した人の個人情報がリスト化されて庁内で配布された問題で、リストに記載された作家らが起こした2件の国家賠償訴訟で敗訴した防衛省が、担当の情報公開担当者1人から賠償金相当額の計22万円を回収していた」というわけである。
このリスト問題というのは、2002年に「海上幕僚監部の情報公開担当者が、請求者約140人の氏名や職業など個人情報をリストにまとめ、庁内で配布していた」というもので、内局や陸・空の幕僚監部などもリストを作成・閲覧していたという。
しかし、組織的な行為ではなく、担当者個人の故意の不法行為だと言うことにして、その損害賠償責任も個人に求償した。
これには、組織的な関与だとして怒っている被害者らが納得していない。ノンフィクション作家・久慈力氏と新潟市の斎藤裕弁護士との二人が原告になって国賠請求したもので、今回の件について久慈氏は「組織の責任逃れだ」とし、斎藤弁護士も「求償権を行使することで、完全に担当した隊員だけの責任として片づけられてしまうことになる」といっているとのこと。
個人の責任に帰せられるべきか、組織としての責任を負うべきかは、抽象的には大きな問題だし、あの船場吉兆の取締役が偽装をパート従業員や取引先の責任にして自らの責任を免れようとしたのを思い起こさせることでもある。
しかし、パート従業員はそんな圧力や脅しに唯々諾々と従うような根性なしではなかった。それに対して争うこともなく従うこの自衛隊の担当隊員の腰抜けぶりはどうだ、という感じもするが、それこそが軍隊の論理なのかもしれない。
遵法精神とか、正義にかなった行動を重んじることと、組織の表面的な名誉を守ることとどちらが大事なのか、そのあたりをはき違えた連中がはびこっている組織では、不祥事が有ればまず隠そうとし、内部告発には犯人捜しを行い、隠しきれなくなればトカゲの尻尾切りに走り、悪質な場合は担当者を自殺に追い込んだり自殺に見せかけて殺したりし(数々の汚職事件で運転手とか秘書とかが犠牲になる)、因果を含めた鉄砲玉にすべての責任を転嫁するといった行動にでるものである。
自衛隊=防衛省がそのような組織だとは信じたくないのだが・・・。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント